ボール盤の芯ブレを簡単に改善する方法にはチャック交換という方法が手っ取り早い。
ただしチャックを交換するためには取り付けるところ、「テーパーシャンクの規格」を知らなければならないので、機種ごとの規格の違い、どのチャックがつけられるのかなどを解説しながら、
実際に自分のボール盤をユキワ製のチャックに交換して、軸ブレを計測してみる
Contents
チャック交換の基本
ドリルのチャックは図のような円錐状の「テーパー」と呼ばれる形状のものを差し込むことで、その摩擦で固定される。
ネジ式などもあるようだけど、一般的なDIYerが手に入れることができるボール盤は全てこれだと思えば良い。
そしてそのテーパーの規格には様々なものがあり、知っておけば良いと思うのは下の2種。
モールステーパー(MT)
ジャコブステーパー(JT)
国産ドリルチャックは「ジャコブステーパー(JT)」で繋ぐがほとんどで、「モールステーパー(MT)」については後の項目で説明する。
このテーパーにはさらにサイズナンバーがあって、モールステーパーのNo.2であれば「MT2」と表記されている。
ジャコブステーパーであれば「JT6」や「JT33」など。
上にあげた寸法は市販ボール盤によく登場するナンバーで、まあほとんどこれだと思う。
ただし、チャックの接続方法自体が大きく分けて2種類ある。
チャックアーバー仲介方式
本体直結方式
チャックアーバー仲介方式
もっとも汎用性が高い方式、該当機種はグレートツール(WIZA)/GTTB-16G、パオック/DP-550SDI、イリイ/K1160、STAX TOOLS/ 303、SK11ラジアルボール盤などいろいろ
このタイプはチャックアーバーという連結部材を介して本体とチャックを接続する。
チャックアーバは様々な寸法に交換できるため、あらゆるサイズのチャックを取り付けできることができるのがこのタイプの利点。
モールステーパー(MT)はこの本体側の接続に使われることが多い。
取り外しも頻繁に行うことが想定されており、ハンマー一発で脱着する機構が設けられている。詳しくは下の方の実践編で。
チャックアーバーを介さず直接テーパードリルなんかを取り付けたり、ドリルタッパーというタッピング(ネジ切り)をするものを取り付けたりすることができるのでもっとも汎用性が高いと思われる。
一台持つならこの方式がベストなんじゃないかな。
本体直結方式
該当機種はSK11(ラジアル除く)、高儀、京セラ、新興製作所、他全般の小型ボール盤。
このタイプは本体スピンドルの先のテーパーに直接チャックを取り付けるタイプ。
安価な卓上ボール盤はほとんどこれ。といっても該当機種には5万円を超えてるものも多い。
このタイプのテーパーはほぼジャコブステーパーで、調べた限り「JT6」か「JT33」がほとんど。
まず自分のボール盤のテーパーを知ることが大事。それは基本的に変更不可。
JT6なら多くの国産チャックが使えるけど、JT33はかなり限られるので注意が必要。
さらに、そもそも取り外すこと自体が想定されていないので、主軸を痛めずに取り外すには工夫して頑張って外すか、このような専用のジグが必要。こいつの出どころのアメリカAmazonで買えばもっと安い。
国産もあるけどめちゃくちゃ高い↓
各機種のテーパーと方式一覧
ボール盤はサイズやパワーも大事だけど、テーパーも大事。
というわけで市販ボール盤について調査してまとめたので感謝してくれて構わない。
安価なものは軒並み選択肢の少ないJT33となっていて、JT6の最も安価なものは京セラTB-1131Kだけど、ラックピニオン昇降もなく、本体機能とコストが噛み合っていない。
やっぱりMT2の主軸テーパを備えたGTTB-16GやイリイのK-1160はかなりコスパが良いと思われる。
機種別適合チャックとおすすめ
じゃあ実際どのチャックが適合するのかまとめていこう。
JT33 - SK11/SDP-300V・高儀/BB-250A,BB-300Aなど
これらの接続テーパーは特殊なJT33だ。
SK11のSDP300Vは人気なので使ってる人も多いと思うけど、芯ブレ0.08mm以下の国産チャックに変更するなら選択肢はGLOBEのこれしかない。
高儀のBB-300AもラックピニオンクラスなのにJT33なのでちょっと残念。
JT6 - 京セラ/TB-1131K,TB-2131・SK11/SDP-600Vなど
このあたりはスタンダードなJT6なのでユキワ(0.08mm以下)も選択肢に入る。
さらにGLOBEの0.04mm以下の超精密級もそこまで高くない。
チャックアーバ方式 - WIZA(GT)/ GTTB-16G、イリイ/ K1160、パオック/ DP-550SDIなど
チャックアーバーを変えればどんなチャックもつけられる。
このうちGTとイリイは3万円台で手に入るのでかなりお買い得だと思う。
1.2mmから13mmをつかめる一般的なチャックをつけたい場合。
チャックアーバーはモノタロウのこれ。
チャックはこれ。
3.0mmから16mmをつかめるゴツめのチャックをつけたい場合。
チャックアーバーはモノタロウのこれ。
GTに関しては紹介記事もあるので見てほしい。イリイとの比較もある。
ラックピニオン昇降のボール盤オススメ5選を徹底比較【無敵のGTTB-16G】
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GTのチャックをユキワに変える
というわけで実際に交換していこう。
なぜ変えるかというとやっぱりちょっとブレを感じるから。
精度の高いSUSシャフトを取り付けて、チャック下50mmで測ってみると、最大芯ブレ0.27mm
精度の良いドリルを使うとやっぱりブレてるんだと実感する。
ただし、スピンドル部外周のブレは0.03mm程度と優秀だったので、芯ブレ0.08mm以下のユキワ製チャックを取り付けることで、理論上0.11mm以下のブレに収まるはず。
取り付けるのは上にあげたセットそのまま。
アーバを取り外す
チャックアーバは本体付属のクサビのような道具を差し込んでハンマーで叩いてで外す。(説明書通り)
あまりに簡単。
本体直結方式の場合は少し面倒臭い。例えばこんな方法で取り外すことができるので参考までに。
まず平たいレンチを差し込んで、さらにテーパーのかかったマイナスドライバーを差し込んで叩く。
これで簡単に外れる。
とは言っていない。最初に叩き込みすぎてる場合なんかは特に外れにくいと思う。
次にユキワチャックにアーバーを差し込むんだけど、テーパー部はウエスなどで拭き取って綺麗にするべしとユキワ公式がYoutubeでやってた。
さらに本当は木槌なんかで叩き込むとなってるけど、手で押し込むだけで十分じゃないかなーと自分は思う。
一旦こうなる。
次に本体への取り付け。MTの先端はこのようにマイナス型になっているので、そこが入るところを合わせて、木槌で叩く。
のが教科書のやり方だけど自分は手でカチ込む。
木槌で叩くときはチャックの爪を全部引っ込めてからやること。
というわけで3分以内に換装完了。
ユキワチャックの芯ブレ精度を測る
測定にはダイヤルゲージを使ってみる。
本体上蓋を開けてベルトを手で回して測定してみる。
たまにYoutubeで電源入れて回してるけど、ダイヤルゲージが逝くと思うから注意。
というわけで最大ブレはこんな感じ
測定結果は0.07mm以下。
これは劇的改善。動画撮りながらのぶっつけ本番だったんで、この精度には結構びっくりした。
実際に使ってみても芯ブレは一切感じなくなった、めでたし!