「OLD WOOD WAX」つまり古材ワックス。
これに限らずオイルステインなどの染色系の塗料は木目を際立たせ、傷を際立たせ、もれなく古材っぽくしてくれる。
数あるワックスの中でも、パフォーマンスが高い新進気鋭のオールドウッドワックスさんを使って、まずは基本的な塗り方と、着色の原理について、実験を交えながら細かめに解説してみる。
同じく扱いやすいオイルフィニッシュについても書いてあるので、塗料に悩んでる人は参考にして欲しい。
Contents
オールドウッドワックスの木材別色見本
前回の記事でDIYで使いそうな複数の木材で色見本を作ってみた。明らかに競合かつベンチマークとして見定めたであろうブライワックスさんとの、主観と客観に基づいた比較解説も行なっている。
色に色々悩んでいる人は参考にして欲しい。
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オールドウッドワックスの塗り方 - 色移りをなくす唯一のポイント
それは塗った後に確実に拭き取るということ。
先日、いろんな人に塗り方を教える機会があったんだけど、「しっかり拭き取りましょう」と言っても、その度合いがなかなかうまく伝わらなかった。
拭き取るというのは、拭き取るウエスを交換しながら、ベタツキを完全にこそぎ取って、最終的に何もつかなくなるくらいに磨ききる。
少し大袈裟に書いたが、初めての人はどうも拭き取りが甘くなりがちなので、それくらいの気持ちでいいと思う。
これは全ての着色ワックスに通じる基本のき。
なぜ拭き取りが大事なのか
拭き取りが甘いとロウ成分が表面に固形で残ることになる。これではいくら乾燥させてもベタつくし、色移りも永遠に終わらない。溶剤の揮発時間も長くなる。
スチールウールで塗るとか、タワシで擦るとかいろんな方法があるけど、どんな塗り方をしても最後には完全に拭き取るという点は変わらない。それさえ押さえておけば、最終的な仕上がりは保証される。
拭き取りのウエスに便利なのは下のショップタオルというもの。
布のように強靭で柔らかいキッチンペーパーのような感じで、めっちゃ使いやすい。すでに使ってる人も多いんじゃないかな。
ワックスの塗り方 -基本編-
ほんとワックス塗るの初めてだよって人に対して、基本的な塗り方と、着色の原理、安全管理について解説したい。
ただし、ワックスは拭き取るというポイントさえ押さえておけば、失敗なんて存在しないから、厳格な塗り方も存在しない。
だから気楽に考えれば良い。メーカーのおすすめの塗り方は独自にあるけど、参考程度で良い。
違う塗り方をすれば違う仕上がりになるだけのこと。そして仕上がりの好みは人それぞれ。つまり好きにすればいいってことだ。

基本の「き」としてこのセットさえあればなんでもできる。
- ウエス(ショップタオル)
- 手袋 - 安全面からも軍手よりもポリエチレン製のものが便利
- 240番程度のサンドペーパー
まずは下地処理

まずは塗装面をサンドペーパーで研磨しよう。とりあえず240番としておこう。
なぜかというと、ホームセンター買ってきた木材は、大体表面にプレーナーという機械によるカンナ掛けが施してある。
詳しいことは後で書くが、刃物で加工した面は塗料の吸い込みにムラが出る。なので塗料が食いつきやすいように表面を荒らして吸い込み具合を均一にすると考えれば良い。
素地がめちゃくちゃ荒い場合は#80→#150→#240といった具合に順々に番手をあげていく。
最初はウエスで塗ろう
好きなもので塗ればいいが、基本はウエスなどの布系のものだ。おすすめは上にも書いたショップタオル。なんどでも言おう。これだけあれば塗れる。

初めての人はウエスに付けすぎる傾向がある。拭き取りも大変になるし、基本は薄く塗り広げていく感じなので少なめを心がけよう。

ワックスはオイルほど浸透していかないので、擦り込む動作を強めに行う。木目方向に擦ったり、円を描くように塗り込む動作を繰り返す。
仕上げに拭き取る(磨く)
10分ほど待ってから拭き取るとされているが、すぐ拭き取っても問題はない。
次の項目で比較写真を掲載しているが、放置時間が長くなるほど色は濃くなる。
ただし硬化する分拭き取りは大変になる。特にオールドウッドワックスは他のワックスより乾燥が早いと感じる。
拭き取り不足は色移りの原因になるので徹底的に、まさに磨く感覚で色がつかなくなるまでやろう。

しっかり拭けば新しいウエスで拭いてもほとんど色が付かなくなる。
濃度の調整方法
大きく分けて2種類の調整方法がある。
A.拭き取りまでの時間で調整
実例を挙げてみよう。

右は10分放置してから拭き取ったもの。左は時間をおかずに拭き取ったもの。色の差がはっきり出ている。
B.塗り重ねで調整
色が薄ければもう一度塗ればいい。

それぞれ塗り重ねて比較してみた。放置時間がないものも回を重ねるごとに濃くなっていくが、10分放置した方は木目のコントラストがはっきり出ているように感じられる。
まとめ
ポイントは1回目の塗りの放置時間で、ここで時間をとるとより木目が強調されて強いコントラストが現れる。ただし木目の荒い樹種だとキツイ印象にもなるので、好みに応じて調整しよう。
着色の原理
ワックスの着色は「染色」と呼ばれるジャンルだ。
これはオイルステインなどと同様のタイプであって、いわゆるペンキなどのベタ塗りとは異なる。
今回このオールドウッドワックスを手に取った人なら、なんとなくわかってると思が、例えば白い木に茶色いペンキを塗れば木目も全部消えてしまって「茶色い何か」になって、木かどうかもわからなくなる。
しかしワックスやオイルステインなら木目は残ったままで「茶色い木」になる。
着色で雰囲気が変わるのは、濃淡のコントラストが強くなり、木目がはっきりと浮かび上がるからだ。この要因についても解説してみよう。
A.木材の道管による要因
木目はそもそも、水や養分を運ぶ道管の太さの違いによって現れている。太い部分は塗料を吸い込みやすいため濃く染まりやすい。細い部分は吸い込みが少ないため樹種によってはほとんど染まらない。

塗る前と塗ったあとの木材の比較だが、同じ位置にピンを打ってある。もともと色の濃かった部分は道管が細く硬い部分で、染まりにくいため、塗った後に濃さが逆転しているのがわかる。
ちなみに道管の太さはもちろん染み込みの深さにも影響を与える。
この原理を応用して、一度染色した後にサンドペーパーなどで研磨すると、薄いところはより薄くなるが、濃いところは変わらない。
これによってさらなるコントラストをつけたりもできる。(とは書いたものの、薄く塗膜を形成するワックスにはあまり向かない。オイルステインでやった方がいいかも)
B.加工面の状態による要因
まず、カンナ掛けした面は基本的に塗料の吸い込みが悪い、そしてムラが出る。
これは刃物で圧力を掛けながら道管を切ることで、道管の口が塞がることに起因する。そして道管の方向は一定でないので塞がり方もまちまちになる。というわけでムラが出るのは避けられない。
そこで塗装面の研磨(荒らし)が必須になる。均一の荒さのペーパーで研磨すれば、塗料は木目、つまり道管の太さに従った染まり方をする。また、荒いペーパーで仕上げるほど、塗料の吸い込みは強くなる傾向がある。着色するときは240番程度をおすすめする。
この応用として、例えば意図的に傷をつけたりするとその場所の吸い込み比率が上がって、傷が目立つようになる。同じくタワシなどで刷り込むというのは、細かい傷を増やして染まり具合に変化を与える方法と言える。
安全管理
塗装中は火気厳禁、換気を行う、使用したウエスなどは水に浸して処分が原則。オイルステインと同じ。
ワックスもオイルステインも油性なだけあって、使用中は火器厳禁。咥えタバコはもってのほか。揮発性の溶剤も有害なので換気を行いながら行おう。
手につけるのも良くないので手袋をしてやると良い。ウエスなどの処分はこんなふうにやると楽。

使用済みウエスを掴んだまま、手袋を裏返しに外したら、水びたしにする。もう片方の手袋で二重に包んだらゴミ箱にポイ。

手も汚れないしめっちゃ楽なので、特許が申請される前に試してみて欲しい。
オイルフィニッシュについての記事も書いたのでよかったらどうぞ↓
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