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タイトボンド各種とコニシボンド【木工用ボンドの沼】

2023年7月21日

木工用ボンドを1種類でやりくりする人もいると思うけど自分は無理。

気づけば結構な種類を組み合わせ、あの手この手でいろんなものをくっつける。

今回はマニア御用達のタイトボンドシリーズとコニシ木工用ボンドの特徴と比較、感覚的な違い自分の使い分け、オープンタイムとはなんぞやとか、持論を展開したい。

両者の使用感はなかなかに違う。だから食わず嫌いせずにぜひ両方使ってみて自分の感覚で判断してほしいと思う。

いろんな種類のボンドの説明はこちら↓

【広く浅く知るボンド】DIYで役に立ついろんなボンド・接着剤

まず知って役に立つのは、どんな種類のどんな用途のボンドが存在するかを幅広く捉えることだと思う。「そういえばこんなものがあったな」と少しでも聞 ...

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タイトボンドの兄弟

フランクリンのタイトボンドシリーズはめっちゃ色々ある。

アルティメットな万能性を誇る3 Ultimateだけあればいいように思うけど、細かい違いで他のバリエーションにも役割が生まれるので本家のナンバリングブラザーズに絞ってスペックリストを作ってみた。

1 Original2 Premium3 Ultimate
耐水性Type 2Type 1
食器等への使用-FDA承認FDA承認
推奨使用温度>10℃>12.7℃>8.3℃
オープンタイプ4~6分3~5分8~10分
クローズドタイム10~15分10~15分20~25分
接着強度3600psi3750psi4000psi
成分
クランプタイム30分30分30分
凍結時再解凍3-5回3-5回5回

まずシリーズに共通する特性として、クランプタイムは30分(力が加わらない部分の接着)とされている点。

もちろん完全硬化するわけじゃないけど、半端な力では動かせない域に達する。この初期接着能力は白ボンドの速乾より遥かに強く早く、高い作業効率に直結している

完全硬化した状態の接着強度は木材そのものの結合強度を超えるというのが基本で質感もカチッと固まる。

その硬さも木材同等になるように調整されていて研磨もしやすい。耐熱性も高いので、白ボンドみたいに研摩熱でブヨブヨになったりしない。

反面、粘度が比較的低く白ボンドよりも垂れやすいと感じると思うけど、その分繊維への浸透性は高いと思う。

耐溶剤性も高く、木材に使用するような塗料なら問題なく使えるようになっており(浸透系は吸わない)、まさに木工のために必要なものを凝縮したボンドといえる。

主成分と水が半々くらいの水系ボンドなのではみ出した部分は水拭きでOK。


ここまでは全て共通項目で、使用感はどれも似たようなもの。

この3種類で主成分は全部異なるけど、化学的な部分には理解が及ばないので割愛しつつ、それぞれの違いを感覚的に説明しておく。

1 Original

脂肪族樹脂(Aliphatic Resin)というアメリカで木工に最もよく使われてるタイプで、成分特徴からして酢酸ビニル樹脂の白ボンドと比較すれ接着強度、耐水耐熱耐溶剤性、速乾性、クリープ耐性などは優れるけど「Original = 元祖」というだけあって、後続の2や3には環境耐性で劣る。

そのぶん価格も安いので、3 Ultimateと使い分けるのもアリかもしれない。

2 Premium

1 Originalと比較して更なる耐水性を獲得したり、FDA(アメリカ食品医薬品局)ってとこの食品への間接使用の承認を受けてたりしてて、要するに食器に使える、屋外で使えるというのが売り。

でも1よりも使用温度範囲が狭くなっていたり、オープンタイムが短くなりすぎていたりでちょっと微妙。耐水性含め3 Ultimateが全ての面で上回っているのであまりプレミアムとは言えない悲しい子。

でも自分は乾燥が早いような気がしてちょいちょい使ってる。ただそれQuick & Thickでいいやってなってるのからやっぱりいらないかも。

まあお勧めしない。

3 Ultimate

なんかよくわからんけど独自開発の先進的なポリマーを主成分とするのがこれ。

究極というだけあって接着強度でも細かく他のシリーズを超えており、使用温度も最低8.3℃まで対応。オープンタイム10分、クローズドタイムも20分を超えているので複数箇所の同時接着も安心できる。

一番のポイントは耐水性においてANSI/HPVA のType 1 試験をクリアしている所だと思う。

この試験は1 x 3 インチの接着面のカバ材サンプルに

→4時間煮沸
→62.7℃で乾燥
→4時間煮込む
→即時流水冷却


みたいな拷問を仕掛けた後、濡れたまません断強度試験を行うという残虐なもの。

ちなみに2 PremiumがクリアしているType 2試験は煮沸ではなく水没試験でなので、耐久力は1回り以上違うかも。

ただし継続的な水没はダメとされているので、水中ボンドみたいな使い方はNG。


この3は強度比較動画なんかで無双してることも多いんだけど、感覚的にはどんな木工用ボンドもちゃんと使えば木材の年輪方向よりも強い接着を発揮する。

Titebond 3 Ultimate はスペック上の強度も確かに高いけど、より幅広い状況下でスペックに近い力を発揮してくれるというのがアルティメットである所以じゃないかな。

木材を超えて陶器なんかの接着もできるようで、耐水性を活かしてお椀の修理してる動画なんかもあった。


まあ高いから金さえあれば全部これでいいとなる。

接着剤のオープンタイムについて

オープンアッセンブリータイム(Open Assembly Time)はよく使われる言葉だけど、実際に日本の接着剤の説明書きにはこのような横文字はあまり使われていない。

使われている場合も接着剤によって示してる意味が異なる。

  • ボンドが空気に触れてから - 貼り合わせるまで放置すべき時間
  • ボンドが空気に触れてから - 貼り合わせることが可能な時間

全く意味が違ってくるので困るんだけど、(1)の意味を示してる接着剤、特にゴム系接着剤の場合はこれを守らなければロクな結果にならない。

(2)はわかりやすい。コニシの木工用ボンドには1~10分以内に貼り合わせてくださいと書かれており、これがオープンタイムにあたる。

タイトボンドに関してもパッケージや公式系の情報には同じように書かれている。

にもかかわらず「そうじゃなくて(1)の放置する時間だ」としている販売店さんや個人ブログなんかも多い(海外でも)。

そう言われる理由を考えてみると、おそらくゴム系のようなコンタクト接着剤的な考え方、つまり、ちゃんと材料の両側にボンドを塗って、ボンド to ボンドの接着になれば放置時間をとった方が初期接着力は高くなり、最終乾燥までの時間も早くなるという考え方だと思われる。

タイトボンドは特に初期接着能力が秀逸なので相性が良さそう。


でもそれで最終的な強度まで強くなるかどうかは知らん。

もしこの情報を断片的に捉えた人が、ボンドを片側にしか塗らずにオープンタイムを超えてボンド to 材料で接着した場合、逆に不具合が出る可能性の方が高いと思う。

特に白ボンドの酢酸ビニル樹脂はコンタクト接着そのものに向かない(たしかPVAは乾くと自己接着できなくなる)。


材料の両側に塗るのは基本ではあるんだけど、タイトボンドのオープンタイムに関しては特別な事情がない限り、塗ったら早めに接着するだけで無難に使えると思う。

そもそも複雑な組み立ては時間がかかるので、意図せず乾燥時間を設けたコンタクト接着になることが多い。

ちなみにクローズドタイム(セットタイム)は組み立てた後、完全固定するまでに調整が効く時間。

コニシの木工用ボンド

コニシの白ボンドは昔ながらの酢酸ビニル樹脂で水60%のエマルジョンだ、安価で広い面積にも使いやすく、子供からプロまで幅広く使えるみんなのボンドという位置付け。

セメダインも発売してるけど空気(失礼)。

このタイプは欧米でも「白ボンド(White glue)」「学校ボンド(School Glue)」みたいな呼称で広く親しまれている大衆向けボンドであって、プロ用のイメージが強く高価なタイトボンドとは成分からして異なるため、別物と考えるべきだけど、比べられそうな範囲で比較表は作ってみて使い分けの話をしていきたい。

白ボンド1 Original2 Premium3 Ultimate
耐水性×Type 2Type 1
食器等への使用--FDA承認FDA承認
推奨使用温度>10℃>10℃>12.7℃>8.3℃
オープンタイプ10分4~6分3~5分8~10分
クローズドタイム-10~15分10~15分20~25分
接着強度>1450psi3600psi3750psi4000psi
成分酢酸ビニル樹脂脂肪属樹脂架橋PVA独自のポリマー
クランプタイム120~180分30分30分30分
凍結時再解凍不可3-5回3-5回5回

まず水や湿気に弱く、硬化しても柔軟性を保つビニル樹脂なので継続的な負荷や熱によってクリープという変形も起きやすく、紫外線にも弱いなど、環境負荷全般に弱い。

この辺りはタイトボンド1 Originalをはじめとする脂肪族樹脂(Aliphatic Resin)に比較して劣るとされているけど成分的にしょうがないところ。

ゴリラウッドも主成分は酢酸ビニル樹脂なんだけど色味などタイトボンドに近く、耐水Type2もクリアしてるから違う何かが入ってるんだろうね。



接着強度に関しては1450psi以上と書いてみたけどこれはJISの水準、だからそれを「ちゃんとクリアしています」ってだけで、ここがマックスってわけではない。

これは1cm角のチップを貼り付ければ、横からズラすような「せん断力」を加える時、100kg以上の力を加えないとずれないという計算になるため、多くの木工用途において強度的に困ることは少ないと思う。

ただしクランプが甘かったり、接着面の密着性が悪い場合は著しく接着力が低下する傾向がある。


粘度に関しては知っての通り、液ダレしにくく側面からの塗布も行いやすいためとっても扱いやすい。

タイトボンドと比較して硬化時間が遅いため、組み立てに時間のかかる接着作業であっても、グリップが強すぎて調整しにくいなんてことも少ない。ただし張り合わせ可能時間は1~10分とされている。


全体的に、作業手順や環境をしっかり整えて使えば安価で非常に有用なボンドと言えるかも。

使用感を比べてみると

初めて使う時にすぐ実感する違いとして、まず粘度。

白ボンドに慣れているほどタイトボンドは液ダレしやすいく感じると思う。

特に側面などは塗布の直後にブラシなどで伸ばしてやらないと垂れてしまうため、作業中はブラシとウエスをちゃんと用意しておくのが円滑な作業のコツ。

次に乾燥の速さの違いというか、初期接着能力。

タイトボンドはまあ早い、粘度の違いによる浸透しやすさもあると思うけど、オープンタイムをとって接着すれば、貼り合わせた直後でもそれなりの接着強度を感じると思う。

貼り合わせ20分後には他の加工も気をつければできるくらいにはなり、1時間もしないうちに無理やり剥がせばベニヤの表面が持っていかれるくらいの強度に至る。

そういう意味で連続作業に向いてる。

白ボンドはやっぱり数時間はかかるので一休みが必要、両者とも内部の完全硬化には24時間くらいは見た方がいいけど、初期接着力の時間曲線はこんなイメージだ。

さらに白ボンドは強度を発揮するためには確実なクランピングがポイントで、これはボンド全般変わらないんだけど、タイトボンドは手で抑えるとか、置きポン硬化でもそれなりの強度が出るのがポイント。

タイトボンドを使ってる人は「強度」が高いという印象を持ってる人が多いと思うけど、この辺の万能性も印象を作ってると思う。


あとそこまで重要ではないと思うけど、ボンド自体研摩しやすいのもタイトボンドの特性。

板接ぎをする時などはボンドがはみ出したままにしておいて、ボロいかんなやスクレーパー的なもので削ぎ落とした後ランダムサンダーをかけたりするんだけど、目詰まりすることなく木と同化したような感じの硬度(モース硬度的な意味で)で研磨しやすいし、刃物でも削りやすい。

コニシボンドは知っての通りビニル樹脂って感じで削りにくい。


総論として自分的にはタイトボンドの方が圧倒的に使いやすい。

でもそれって3〜4倍違うコストをそのまま反映していると考えれば自然なこと。

コニシとタイトボンドの使い分け

硬化が遅くてコストが安い白ボンドは大面積の貼り合わせや、ローラーを使った作業なんかに向いている。

貼り面積が大きいほど強度もでやすく、紫外線、熱、湿度など弱点である外部環境の影響を受けにくくなる。

何よりローラーで塗るような大面積にタイトボンドを使うのはコスト的にちょっと考えられないし、固まるのが早いのでローラーがすぐにダメになりそう。


ホゾ組みも白ボンドでやってる人多いと思うけど、ちょっと加工に自信がない時とか揺さぶり力が結構かかる場所なんかは、お祈りとしてタイトボンドを使えばいいと思う。


まあ個人的には70%以上の作業でタイト3 Ultimateを使ってると思う。

20%がタイト2 Premium、10%が白ボンドって感じ。


メインは2,000円近くする450mlサイズだけど、正直1年で1~2本くらいしか使わないので、年間費用は飲み代一回にも満たないくらい。

むしろ下手にストックしてしまったものを使いきれないで困っている。

自分は使用期限の2年を過ぎても普通に使ってしまうんだけど、なるべく1本づつ買おう。

そして最近は450mlよりも225mlの方がいいなと思ってる。

そこそこの容量もあり、デカすぎず使いやすいサイズは225ml。

価格はピンキリなので注意。225mlが2本で送料込みで2000円程度なら結構お得。

450mlなら1800円前後って感じ

動画解説

動画バージョンもあるから見てね。

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