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世界と日本の電動工具メーカーと発明の歴史

2021年6月26日

世界は広い。

僕は大阪出身で大阪が世界一だと洗脳されて育ったけど、初めて東京に行った時はやっぱ参りましたと思ったね。

間違いなくマキタやハイコーキは素晴らしいメーカーだけど、どのくらい素晴らしいのかは、比べて見ないとわからない。

地元にとらわれて世界に目を向けないのはもったいないよな。

だから比べて見たよ。

それぞれの強みだけでなく、いろんな電動工具の発明の歴史についても触れていきたい。

インパクトは誰が考えたのか?トリマーは?ビスケットジョイントは?気にならない?僕はそう言うのめっちゃ好き。

(米)スタンレー・ブラック&デッカー

Stanley Black & Decker (SWK) - Intelligent Income by Simply Safe Dividends

世界一と言って差し支えないアメリカのメーカー。総売上高127.4億米ドル(2017年)

アメリカ企業らしくM&Aを繰り返し、どえらい数のブランドを持つ。工具界のファイザー。

1843年にフレデリック・スタンレーがアメリカでボルトやヒンジなどを製造する店として創業。

2010年にブラックアンドデッカーと合併と言う名の買収を行い今の姿に。

そのブラックアンドデッカーも、1910年創業、1916年には現在の様々な工具に通じる、ピストルグリップ型の電気ドリルを世界で初めて開発したというやはりすごいメーカー。

1社1ブランドのマキタなんかと違って、ブランドごとにプロツール、DIYツール、ハンドツールみたいなかんじで役割を分担している感じ。

開発がどのように分かれてるのかは知らない。

スタンレー

大ボスであるスタンレーブランド製品はハンドツールが主で、電動工具は2015年からの製造と日が浅い。

2021年現在、日本国内で販売網があるものとしては、インパクト、振動ドリル、ジグソー、レシプロソーと、全て18Vバッテリーの充電式。

ノウハウは十分だろうしどれもかなりヘビー向けのラインナップ。

アマゾンレビューを見ていると、プロでもブランド名や見た目に惚れて買っている人も多いみたい。心理的なものも反映されていると思うけどレビューもかなりいい。

価格も結構安いのでチェックして見てもいいかもね。

ブラックアンドデッカー

日本ではホームセンターの七変化工具メーカーとしてのイメージが強いが、ブラックアンドデッカーはDIYに特化した開発を行なっている。

例えばマキタやハイコーキのDIYモデルは、単にプロ向けをコストカットしてダウングレードしたものに見える。

しかしブラックアンドデッカーは、全く違う視点でDIYのための工具を開発している。

はい「丸ノコ」はい「インパクト」。劣化版のDIYラインだよ。ではなく、「DIY電動工具」という新しい形を開発している。

その象徴とも言えるのが冒頭で述べたような七変化ツールだ。

一つ一つの機能のレベルは高くなくとも、ライトDIYに必要な様々な要素を満たしてくれる。まさに「DIY電動工具」

これによりDIYerは多くの工具を買う必要なく、いろんなことができるようになる。

単独工具で見ればその性能はもちろん低下する。

しかしそれを求めるならプロモデルのDeWALT製品を買えばいいだけの話。

おそらく世界一、DIYについて真面目に考えてるブランドだと思う。

DeWALT(+ポーターケーブル)

世界の職人がこぞって使う黄色いやつ。

プロ向けの電動工具を担う、力強いアメリカを全面に押し出したブランドDeWALT(デウォールト)。

スライド丸ノコの仕組みを最初に発明したのもここらしい。

プロツールのDEWALTがDIY向けのB&Dに買収されたのが意外と言う意見を聞いたことがあるけど、買収されたのは1960年頃なので、ブランドイメージはマーケ戦略上のものでしかないと思われる。

いかにもアメリカらしい。


現在も世界になかった工具を日々送り出している偉大なブランドだが、日本での販路は極めて限られている。

2017年(多分)には、20V/60V対応の工具間で互換性を持つフレックスボルトというバッテリシステムを開発した(動作電圧は18V/54V)。

後発となるハイコーキのマルチボルトはその特許で固められた砲煙弾雨の中を、気合いでくぐり抜けたらしい。

ちなみにポーターケーブルはベルトサンダーを世界で初めに開発したメーカー。

デウォールトとポーターケーブルの事業部の関係性はあまりよくわからないが、似たようなモデルが重複している。

現在もトリマーやルーターなどの切削工具の機構や、アタッチメントのアイデアは他に類を見ないもので他の追随を許さない。

リョービから色違いと言って差し支えない高機能なコピー商品が出ているが理由は不明。

下にトリマー載せてるけど、正規代理店からは販売されておらずバカ高い。

これは日本でいうところの包みアリ継ぎを作ることができるジグ。

(独)ロバート・ボッシュ

BOSCH[アンカーマークについて] : タナカんち

世界初のバリカンを開発。
世界初のハンマドリルを開発。
世界初のランダムサンダーを開発。
世界初のジグソーを類型開発。
世界初のリチウムイオンバッテリ工具を開発。
世界初のマルチツール(今の標準形)を開発。

こいついつも世界初やってんなと名高いボッシュ。

特許出願数も世界トップ10の常連で、この世界線の市場に出回る多くの電動工具の原型を作り出している

創業は1861年、電動工具の製造に着手したのは1928年。

ドイツというだけあって自動車部品のサプライヤーという側面も強く、グループ売上では780億ユーロ(2017年)とスタンレーを軽く上回る。

工具領域ではスタンレー、ここでは述べないテクトロニック・インダストリーズ(香港)に次ぐ3位につけている模様。

ボッシュ

海外ブランドの中では日本での販路は一番広く、認知度も高いと思われるが、マキタハイコーキせいで影が薄い。

深緑がDIYラインで青がプロモデルなので覚えやすいね(マキタと一緒)

触ってみるとわかるけど、使い方の勝手が日本のものと違うところが結構ある。

例えば丸ノコなんかも両手で持てるようになってたりして、使ってみるとダンチで安定感が増して感動したことがある。

実際には左手で定規を押さえたりするのであまり使わないけど、ちょっとした出っ張りなんかも全て意味があって、人間工学に基づいた工夫が随所で発見できる。


ところでそんな先進的なボッシュさんはいつまで18Vでやっていくつもり?

我が国では36Vが主流になりつつあるんですけど?


ということでボッシュの次世代バッテリについて調べていると「Pro CORE」というシリーズが出ていた。

詳しいことはわからないけど、このバッテリは1700W程度の出力を発揮できるらしい。

日本の100V電源では1500Wが限界。

なので、数値の上で明確にAC機を超えている。

日本のバッテリ工具はW数の明記がなかなか出てこないのでよくわからないけど、ボッシュにとっては出力向上のために電圧を高める必要すらないのかもしれない。
(とはいえハイコーキのM3612もAC機のルーター超えというなら1430Wを超えているはず)

(独)フェスツール

Festool Machines | Floorstop Centre

YouTubeとかで海外のウッドワーカーの仕事を見ていると、やたらとこのライムグリーンのロゴが目に飛び込んでくるんじゃないか。

FESTOOLは1925年創業のドイツの会社で、売り上げは3.4億ユーロ、従業員も700 人と決して大きな会社ではない。

そかしその歴史でポータブルチェーンソーや、オービタルサンダー、スライドソー(ガイドレール付き丸ノコ)など革新的な工具を多く世に送り出してきた。

決して多くはないラインナップとはいえ、ほとんどが革新的技術に基づく代替不能品で、知名度も抜群に高い。

今注目すべきははなんと言っても「ドミノジョイント」

FESTOOL

個人的にフェスツールの代名詞と言えばドミノジョイントだと思っている。

海外ウッドワーカーの動画でよく見かけるのはルーター、丸ノコ(スライドソー)、ドミノジョイントだ。

ドミノジョイントが何なのかというと、横長のダボ穴を掘って、そこにドミノという圧縮材を差し込むことで材料を接合するというシステムだ。

ただの改良のダボ?と思うかもしれないが、このドミノはホゾ組に匹敵する強度が得られ、椅子などの耐久性が求められる家具にも使用されている。

使い方はビスケットジョイントのジョイントカッターとほぼ同じ、位置を合わせて押し込むと、エンドミルのような刃が左右に動いて穴を穿つ。

使ったことはないんだけど、その精度もかなりのものらしい。

あのひたすらにめんどくさいホゾ組が、ピシャッと切って、バスっと穴あけしてスッと差し込めるんならこれほどの時短はない。

日本での販売は同じくドイツの金物メーカーハーフェレの日本法人が総代理店となっている。

めちゃくちゃ欲しいけど、日本で買うとめちゃくちゃ高い。

コロナが明けたらドイツに遊びに行くついでに買ってこようと企んでる。

(スイス)ラメロ

1944年戦火を免れたスイス、連合国の誤爆も収まった頃ヘルマンシュタイナーによって創業されたラメロ社。

特筆されるべきは1955年に発明されたラメロシステム、要するにビスケットジョイントだ。

トリマーやCNC関連の木材の接合技術に特化した会社で、ビスケットジョイントの可能性に対する執着が凄まじく、それはロゴを見ればわかると思う。

日本メーカーには導入されていない、興味深い技術がたくさんある。僕の調べた限りでお伝えしたい。

Lamello

ジョイントカッターって板接ぎとかそういう用途だよね?他のメーカーのジョイントカッターだったらそうかもしれない。

ラメロブランドのジョイントカッターは違う。

ビスケットジョイントを接合だけでなく、分解組み立てのジョイントシステムとして昇華させた。この機構は上の写真を見てもらえるとなんとなく想像できると思う。

それがP-SYSTEMという技術で、このジョイントカッターは刃の断面がT字になっていて回転しながら材料に切り込んだ後、さらに上下に動くという、かなり複雑でドイツくさい動きをする。

これによりT字型のビスケット断面ができる、そこに同じくT字型の断面の金属のビスケットを差し込むことで、ひっかり抜けなくなるという仕組みだ。

この複雑な機構の工具を上市するまでにどのような苦労があったのか、考えただけで吐き気がする。

一つ言えるのはこのマニアックすぎる機構はあまりにも使い手を選ぶ、これを使いこなすのはアイデアと好奇心に満ち溢れた本物の木工オタクだけだだろうな。

でも、ものづくり先進国ってこういうところなんだろうなって思ったね。

もちろん日本で買うととんでもなく高い。

なんとこいつが手に入った(貸してもらった)ので、このすごいシステムについて解説してみた↓

ラメロゼータP2 【ビスケットジョイント→ノックダウン締結金具】クラメックス テンソ Lamello ZETA P2

昔ちらっと紹介したLamelloのZeta がひょんなことから自分の元にやってきた。(もらったわけでは無い。)ただのジョイントカッターではな ...

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(米日)工機ホールディングス株式会社

ご存知現場の最右翼。

最右翼だが外資企業。世界シェアは7位の京セラに僅差で8位。

2017年、米投資会社コールバーグ・クラビス・ロバーツ傘下のHKホールディングス株式会社に買収され、日立グループを離脱、資本上はアメリカ外資系企業「工機ホールディングス」として再出発。

「HITACHI」から「ハイコーキ」というブランドへと変貌を遂げたが、日立の名称変更程度の認識なのは間違いない。

ハイコーキ(旧日立工機)

グループ離脱直前の2018年、18/36Vのバッテリ工具間の互換性を持った「マルチボルト」バッテリを上市。

僕の知る限り、これはDeWALTに次ぐ世界で二番目の偉業のはず。

この辺から現場でピカピカのハイコーキを見る頻度が上がった気がする。

それまでバッテリ工具のラインナップはマキタの1/3程度だったがここ3年で急速に拡充させてきた。最近僕が注目してるのは36Vのトリマー。

マキタも40VMAXを投入してから、これまた急速に追い上げてきているが、やっぱりマルチボルトは強い。向こう数年で現場のシェアは大きく変わりそう。

(日)株式会社マキタ

日本の工具メーカーマキタ、その名は世界に轟き、海を越えてなお売上げ5位と大健闘。

10年近く前、僕が結構現場に張り付いていた頃はマキタが世界一のメーカーだって思ってる職人さんは結構いた気がする。


1915年の創業以来モーターを作り続けてきた技術力はもちろん、ずば抜けた営業戦略が目を引くグローバルメーカー。まさに電動工具界の電通。

ハイコーキにマルチボルト攻勢に劣勢は明らかだが、「40VMAX」とかいうグレーなネーミングで業界をザワつかせつつも、積み上げたバッテリー工具のラインナップに関してはまさに無双。

18Vバッテリーひとつで扱える工具は200を超える。その販売網には穴がない。

マキタの18Vを避けて通ることはできない。

お前はもう持っている。はず。

マキタ

この1ブランドのみで戦うマキタは買収戦略にも積極的だ。

要するに買収ブランドは全てお家取り潰しで本家の血肉とする鬼畜っぷり。

個人的にDIYでバッテリーを一つ持つなら間違いなくマキタの18Vを押す。

ハイコーキのマルチボルト攻勢が強まっていってるとは言っても、この18Vで選べる選択肢はあまりにもずば抜けている。


僕が頻繁に使用するランダムサンダーもジョイントカッターもマキタしか選択肢はない。そもそも国内でジョイントカッター作ってるのはマキタだけなんじゃないかな?

ひとつ付け加えるとするなら、マキタが世界で初めて生み出したという工具を僕は知らない。

全てが海外メーカーの後追いでの改良製品。

ドイツ人が発明し、アメリカ人が製品化し、日本人が高性能化する。」

このジョークはまだ覆されていないように思う。

そもそも高性能化できてるかな?

これは常識だけどマキタの一番役に立つ製品は家庭用の掃除機だから。しかもバッテリ内蔵のコードで充電するやつ。

(日)京セラ インダストリアルツールズ株式会社

coming soon

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