ここで紹介するのは多分新しいジグ。
高さ方向の調整が非常に高い精度で行えて、市販品の少ない横軸加工が捗る。さっそく姿と機能から解説していく。
できること
まずこのような見た目をしている。
アピトン合板で作った2つの盤面の高さを0.1mm単位で変更できる。それがこのジグのメイン機能。
片方の盤面は左右にスライドするようになっているのでそちらに工具を固定し、もう片方に材料を固定することで、横軸の正確な加工が可能。
例えば、まだ作ってる途中だけどドリルを装着するとこうなる。
こんなふうに装着して、主に加工しにくい木口への加工に役立ってくれる予定。
そしてこのように加工する高さを調整できる。
この調整を0.1mmレベルで調整することができるというのがこのジグの最大の特徴。
実際には二つの盤の高さを変える以前に、水平を保って移動させるだけでも難しいはず。
その辺をどう解決したかもまとめて説明していこうと思う。
仕組み
このジグを真横から見るとこうなっている。
現在目盛りはゼロを指していて、この時盤面の高さの差はゼロ。
この目盛りを10に動かす、つまり100mmスライドさせると。
高さが10mm変わった。
この比率は1:10。つまり1mmスライドさせれば0.1mm高さが変わる。
0.5mm単位で調整できるなら0.05mmというレベルで調整が可能。
まあ木材なので現実的には0.1mmくらいが限界だと思っておけばいいと思うけど、要するに必要以上の精度で加工することができるわけ。
この動作をアニメーションにしてみた。
この仕組みは三角比の角度で成り立っている、難しいことは特になく比率と角度の出し方は以下の通り。
角度は出さない
木工で何か作る時に◯度みたいな角度はあまり使わないんじゃないかな、今回も欲しい比率を作図した時に自然にできる角度をそのまま使えば良い。
今回は下の図のような動きをさせたい。
斜めに10動いて上に1動く。
登山に置き換えれば、斜面を1000m歩くごとに標高が100m高くなるような斜度だ。
その斜度は下の通り。
この図形を書くことができるだろうか?
できるなら問題ない、まあコンパスを使うのが一番正確だけど、結構でかいコンパスがいるので今回はもっと簡単な作図を紹介するつもり。
ちなみにこれを見て「1/10勾配やな」と思う人もいるかもしれないけどそれは間違いなのでちょっと説明しておく。
いわゆる「1/10勾配」は下のような図。
今回はこちら↓
サインとかタンジェントが出てきてキレそうになった人もいるかもしれないけど、比率を取る辺があってればいいので落ち着いて欲しい。
じゃあめっちゃ簡単に作図していく。
比率に従った角度を簡単に書く
まず平行のでたベニヤなどに平行な線を1本引く。このベニヤは角度カットを行うときの統一定規として使う。
引いた線の500mmのところに墨をつける。
その点の位置にぴったり合うようにサシガネを合わせる。
このとき、左側の目盛りだけ50mmになるようにする。
でそのまま線を引く。それだけ。
これで前の項目で書いたのと同じ三角比の直角三角形が描けたはずだ。
そしたら直角の辺にベニヤを貼り付ければ、それだけで一定の角度を保つジグとなってくれる。
今回はテーブルソーで加工するために短辺にもベニヤを貼り付けてるけど、底辺(500mmじゃないところ)だけベニヤを貼った方が角度定規としての汎用性は高い。
このジグをどう使うのかというと。
材料をこのようにセットして。
このように切る。
これですべてのパーツの角度が一致するという理屈。
これをテーブルソーでやるにはフェンスの水平が常に出ていることが絶対の絶対。
フェンス調整がラックアンドピニオン方式のテーブルソーは構造上この辺が厳守されるんだけど、残念ながら国内では作られていない。
自分の相棒はSKILSAWのこいつ。最高。
構成パーツと図面
図面という図面は書いていないんだけど、3Dで検証しながら作ったので、参考までに寸法を入れたものを載せておく。
青い斜めのパーツをスライダーとして、スライダーの上をピンクの定盤がスライドすることで高さが変わるので指定の位置で蝶ボルトで固定する。
緑の定盤はスライダーの影響を受けないので常に水平に動くので、そのまま稼働部位としてフリーにしておく。といった感じだ。
材料は全て24mmのアピトン合板とMDFで製作し、そこそこに反り対策も行っている。
スライド部分はしっかり研磨してワックスやオイルをしつこく塗ることで超なめらかに動いてくれた。
これをベースに大型のものを作ってもいいし、緑の定盤のスライドはマイターバーなどを使った方が良いかもしれない。
もちろん比率をを変えてもいい。
ぶっちゃけ製作時に角度が少しずれて比率が変わっていたとしても、比率にあった目盛りテープを自作してしまえば解決できる。
今回は思った以上に1/10ぴったりで作れたけど、目盛りはイラレで自作した。
Adobeのイラストレーターというソフトはデザイン製作系ソフトの中では最も素人ユーザーが多いと思われるインフラ的ソフトなので、DIYerなら使いこなして損はない。
CADの代用にもなるし、パワポ使ってる人なら習得も一般的なCADよりもはるかに簡単だ。
この記事では制作の解説まではしないけど、製作上のポイントはたくさんあるので動画で見て欲しい。
動画解説
ベースジグとしての拡張性
最初に書いた通りこのジグは精密に高さを変更するというとてもシンプルな機構なので、あらゆる工具を組み込んで、動作軸をさらに増やすことで無限の拡張性があると思っている。
超アナログな手法で言えば、前回紹介した手鋸でまっすぐ切る方法の木口カットの位置の精密調整にも使える。
そして最も期待しているのが横軸トリマ。ドミノ加工だ。
このジグはZ軸に調整して、X軸に動作させるジグだけど、写真のようにY軸に動作を加えればドミノジョイントの穴がめっちゃ正確に掘れると思ってる。
ドミノと同じ方式である回転動作(振り子)でいくか、単純なY軸動作で行くかはまだ検討中。
脚もの家具の製作にはドミノジョインタ不要になると期待。
完成したらまた記事にする。