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ランダムサンダーとオービタルサンダーの違い、原理、選択、使い方

2021年12月20日

原理の違いを理解できれば合理的に選んでいけると思う。

まずこの記事を書くきっかけとなったランダムサンダの使い方のコツについて説明したい。

ランダムサンダーは使える、構造上使える、少なくとも僕は体感としてそう感じて使っているので、そのコツと、なぜ使えるのかを構造から紐解いてなるべくわかりやすく解説していく。

僕はマキタのBO180DZをつかってるけど多分他のものも大差ない。

まあ僕の選択指針は基本的に木材を削ることが前提なので、材料によって双方の選択は変わってくる。

ランダムサンダーとオービタルサンダーの違いを先に知りたい人は目次の「ランダムとオービタルの機構の違い」を読んでもらえるといい。

ランダムサンダーの使い方のコツ

今回の記事を書くきっかけになったのがこれ。

まずランダムサンダーは強く押し付けると回転が止まる。

それほどランダムサンダーの回転は緩やかでソフトだ。目視で追えるくらいの速度。

ちゃんと測ってないけど最速で一秒に2回転ちょっと、低速で一秒に1回転ちょっとって感じ。

しばしば回転が止まるほど押し付けている人もいるっぽいんだけど、回転を止めてしまうのならば最初から回転させる意味がないよね。

それはオービタルサンダーを使っているのと同じだし、オービタルサンダーは強く押し付けると円形の研磨傷が目立つ。

つまりランダムサンダーを材料に強く押し付ける行為はオービタルサンダーを材料に強く押し付けるのと同じ行為。

当然傷だらけになってしまう。

ある動画でランダムサンダーは回転が速すぎるので強く押し付けて回転を落とすようにして使いなさいと指導していた。

それでは研磨面がやばい事になってしまうのではないかと思った、というかなってた。

結論として、外周が強く削れるので均質な研磨は向いていないみたいな感じだった。

僕は誰かが考えて行き着いた結論を否定するのは好きじゃないし、その考えに納得してランダムサンダーを敬遠する人がいるならばそれがその人の正解なんだろう。

ただランダムサンダーがポンコツだなんて事実は存在しない。

非常に便利なサンダーだと感じている僕にとってのの正解が間違いなく存在するので、それを悩める人と共有したい。

僕の使い方の結論は、

「自重に任せてスケートリンクを滑らせる」感じ。

まずランダムサンダーが暴れるという意見を見かけた

ここに重要なポイントがあると思う。

強く言っておく、うちの子は暴れない。

暴れる原因は以下の通り。

  • 押さえ付けると摩擦力が高まる
  • 研磨面が材料と噛み合う→暴れる
  • 暴れないようにさらに押さえる(回転がほぼ止まる)
  • エネルギーが逃げ場なく全て材料に伝わる
  • ボコボコに削れて傷だらけになる

押さえつけると研磨面がえらいことになるのはオービタルサンダも同じ、ランダムサンダも押さえつけるとオービタルと同じになる。

人間の力より重力という物理エネルギーの方が水平に力を加えるのはうまいまず。

逃げるべき力は勝手に逃げ、メーカーが調整した回転速度が維持され均質に研磨される。

自重に任せてスイスイと転がすイメージ。

さらにこの時木目の方向や動かす速度もあまり意識していない、それは研磨ムラが出にくく、木目の方向に動かす意味もあまりないと思っているからで、その理由は事項で述べる、

実際のところベニヤのスタンプを消したい時なんかに、わずかに抑えて荒削りすることもあるけど、その選択肢があるのもまた利点。

前提としてランダムサンダはオービタルより研磨力が強いからだ。

たくさん削りたい時も自重に任せて滑らせておけばオービタルよりもよく削れる。押さえつけちゃダメ、回転が止まるし杉なんかはえぐれる。

研磨力の強さという面では、ホームセンター材のナイフマークなんかを雑に取るための道具としても使えるし、回転数を落とせばもちろん仕上げの研磨にも使える。

一連の削り方のコツは言葉で伝えるのは難しいので後日動画にして下に貼る。

以降は動画でも述べる予定だけど、なぜランダムサンダーが構造上キレイに削れるのかという話をしていきたい。

ランダムとオービタルの明確な能力と機構の違い

ランダムサンダーもオービタルサンダーも木材を削る時、木目の方向を気にすることなく使えるサンダーだ。

つまり木目が複数方向に交わるような組み方をしたとき、交わった複数の木目にまたがって研磨するときに真価を発揮する。

例えばこのような組み方をしたとき、必ず目違い(段差)が生まれる。

鉋なんかで修正したとしても、塗装をするなら下地調整のサンディングが必要になる、そして木目に跨った研磨は普通のサンドペーパーでは難しい

そこで使えるのがこのタイプのサンダー。

  • オービタルサンダー(右)
    パッドが四角かったり三角だったり
  • ランダムサンダー(左)
    パッドは円形

両者はパッド(研磨面)の形状を見れば簡単に見分けられる。

僕もそうだったけどオービタルサンダの方が安価で多くの人が初めて手にする電動サンダーになると思う。

そして両者の能力の違いを理解していなかった。

はっきり違う2つの能力は以下。

  • 研磨力(パワー) 【ランダム>>>オービタル】
  • 研磨傷の少なさ 【ランダム>オービタル】

これをみるとランダム一択に思えるけど、どっちかを選ぶというより両者は用途の違うものと考えた方がいい。

ただ僕の木材研磨の用途では、荒削りから仕上げまでランダムで完結できている。


まあその辺は機構の違いから解説していきたい。

オービタルサンダの動作と仕組み

まずオービタルは偏心回転運動、つまり底面が小さな楕円を描くような軌道運動を行う(orbital=軌道)。

回転円の直径は2〜3mmくらいで機種によって違う。

うん、言葉だとややこしい。


実際どう動くか?

例えば研磨面の一点に赤いインクが付いているとする。

理論上はこのような軌跡を描くことになる。(本当は楕円)

1動作ごとに同じ位置に円を描き続ける。(実際は当然ずれるけど理論上の話ね)

この動作で木材を削っていくわけだけど、感覚的には携帯のバイブのような振動で削っていってるように感じると思う。

オービタルサンダーはこの動作だけの単純機構。だから金額も安い。

ランダムサンダの動作と仕組み

上のオービタルサンダの動作に回転を加えたものがランダムサンダ。

なのでダブルアクションとかランダムオービットとか呼ばれたりもする。

その動作の概念図は下のように表現できる。

この図は概念なので実際の運動の軌道は下のように表現できる。

研磨面全体で見るとこう。

だいぶ複雑なのがわかってもらえると思う。

この動作が、研磨パワーと研磨面の傷のつきにくさを決める。

両者の比較

実際のところサンドペーパーによる研磨は粒子で傷をつけているだけなので、両者のこの軌道は実際に材料に現れる事がある。

勿論材料にこんな傷が現れては困るので、この傷が現れる確率は少なければ少ないほど良い。

まずはこの2つの軌道図を並べてみよう。

イメージしやすいように時間経過も仮でつけてみた。

このようになる。

オービタルの方は3サイクルで同じ軌道を3回削ることになる。

対してランダムの方は何サイクルさせても同じ軌道を削ることはないく、研磨軌道を分散させるようになっている。

研磨傷を残さないためには、1点が同じ軌道を通ることなくなるべく広い面積を削る必要がある。

結果的に移動距離が延びるため研磨力も上がる。

構造上ランダムサンダはオービタルサンダーの改良版とも言えるかもしれない。


実際のところ、まず世界最初のオービタルサンダーがFestoによって発明され、その軌道をさらに分散させれば研磨傷を減らす事ができるという、ごく当然の理論に基づいてBOSCHから生み出されたのがランダムサンダー。

キレイな研磨を行うためのまとめのキーワードは、「軌道を分散させ、均質化させる」こと。

人の手による研磨の均質化

前項の理屈で行くとオービタルサンダーはまるで使い物にならない旧世代のポンコツと結論付けられそうだけど、当然そんなことはない。

「軌道を分散させ、均質化させる」を人の手でやればいいだけの話。

研磨面を人の手で常に動かす事で偏心運動による軌道は重複せずに均質になる。

まさしく下図のような軌道が生まれる。

つまりオービタルサンダは人の手が加わる事で初めて研磨面の均質性が得られる。

ランダムサンダーの場合はここまでの段階が機械側で完結されているということになる。

実際のところ、ランダムサンダーをひとところに留めておいても研磨傷は入ることなく水の波紋のような柄がついた、これは事項で写真と合わせて詳しく書いてみる。

このランダムサンダーは人の手でスイスイ動かす事でさらに複雑でランダムな軌道を描くことになる。

そしてそれを図で表現するのは難しいのでやらない。

言いたいのは人の手で運動方向を加える事がさらなる均質化につながるという事。

実際の研磨ムラの比較

オービタルサンダーの研磨面は四角いものが多い、三角もあるけど基本は変わらない。

重要なのは、人の手で研磨面に均等な力を伝えるのは不可能だということ。

そもそも僕の右手に神が宿ったとしても、ウレタンスポンジのパッド面自体に弾力があり、凹みやすくもあるため均質にはなり得ない。

というわけで力が加わる点を赤色の強弱で表現してみた。

このようになる。

というか使ってるペーパー自体がまだら模様で減ってると思う。

実際にはフチの盛り上がったところが特に減ると思う。

じゃあランダムサンダーはどうなるかというと。

まあ同じ、でもこれが回転するので。

こうなる。だって回るんだからそうなるよね、当たり前だって言われるよね。

で、このパターンは各サンダーを研磨面に動かさずに当て続けることで、実際に模様となって現れた。

下は実験の写真、両方とも一番傷のつきやすい#60のペーパーで研磨した。(現実にはこんな番手滅多に使わないと思う。)

試した材料はアルダーの床材の余り。

まずはオービタルサンダ、比較的平な材料だと思うけど接地面はまばら、円形を崩したような引っ掻き傷が多数入った。

このムラを人の手で分散させる必要がある。

やっぱりオービタルサンダーを使うときにはひと所にとどめず動かし続けるのはマスト。

続いてランダムサンダ、見事に上図の通りの水の波紋状の研磨痕がついた。

仮定を実証できた形なので少し感動した。研磨傷は分散されているため限りなく薄い。

人の手で動かす時は、波紋状の研磨ムラだけをを分散させることだけ考えればよいとなる。

アップで見てみよう。拡大比率はほぼ同じ。

まずオービタル。

そしてランダム

傷の深さが大きく違う。

動かして使うものを動かさずに使うとこうなるのは当然なんだけど、やっぱり僕はこれらの特性を鑑みてランダムサンダーの方が研磨傷を抑えやすいと考えている。

そもそもこの特性から予測できる変化がもう一つある。

それがサンダー本体のパッド面の均質性だ。

パッド面の損耗の違い

僕はやらないんだけど一つ例をあげると「角の研磨」

これをオービタルサンダーでやるとどうなるか?

経験した事がある人も多いと思うけど、モロにウレタンのパッドが凹む。(樹脂ベースにベルクロ貼りのタイプならまだマシ)

これはウレタンスポンジだからというだけはなく、押し付ければ1箇所にダイレクトに力が加わるからというのが理由だと思う。

ランダムの場合は面が回転してるので、1箇所が凹む事がない。(全てベルクロタイプだという強みもある)

そんな理由もあって、様々な要因でパッドの平面性自体が失われていくのは宿命。

なのでオービタルサンダのパッドは消耗品として定期的に交換するようになっており、ランダムサンダーは特別な損傷がない限り交換しない。

私見

オービタルサンダのほうがランダムサンダーよりも平面仕上げに向いているとか、仕上げサンダと呼ばれていることは重々承知。

ただ僕にはなぜそう結びついているのかが理解できなくて、結果的にオービタルサンダの使い所は・・・という結論に行き着いてしまう。

木目に沿って動かすとき、軌道をマクロに考えればランダムの回転運動が邪魔だという考え方なのか?

しかしミクロに見れば研磨軌道はどちらも常に微小な円軌道なので、木目と一致する研磨が行われることはないはず。

そして、回転しているからと言っても偏心回転運動がある以上、木目と直行するように長い傷が入ることはありえない

とは言ってもオービタルサンダを仕上げに使う人は間違いなくいるし、それについてもう少し考察してみる。


オービタルサンダのいいところは、回転運動がない分研磨力は比較的弱い、なので削りすぎて平面を崩してしまうことは少ないと思う。

不慣れな人がランダムサンダーを扱うと確かに平面性を崩してしまう恐れがあるけど、その点オービタルサンダーは安心だ。
(ただしランダムも回転数を落とし、#240などの番手で研磨すればそのようなことはまずない)

さらに側面なんかから当てる時、ランダムサンダーは重心を安定させないと回転が邪魔になって暴れやすいが、オービタルサンダーは振動だけなのでさほど気にならない。


研磨傷についても、動きを止めないように気をつけて#240以上でやればほとんど目立たない。

僕が研磨傷に困ったのは、杉という柔らかい材料に、着色のオイルステインを塗ったときだ。

傷を浮き立たせる性質の塗料にはやはり向かないと思う

逆に、クリアのオイルを塗ったときには特定の状況下でめっちゃ探さないと円形の傷を見つける事はできなかった。

塗膜を貼る樹脂系塗料を吹き付ける時なんかも研磨痕はほぼ消えてなくなるので、オービタルは最適だと思う。

そう考えると塗装前の荒らしなどの仕上げ研磨に最適なオービタルサンダはやはり仕上げサンダと呼ぶにふさわしいかも。

僕は自分の答えとして、浸透系塗料を使う事が多い木材にはやっぱりランダムを使う事が多い思うけど、道具にはそれぞれに適した使い道があるんだと思う。

能力に基づく使い分け

というわけでこのように考えるといいと思う。

ランダムサンダは

  • ダブルアクション構造なので研磨傷は出にくい
  • 傷を浮き立たせる着色浸透性塗料にも向く
  • 研磨力が強く平面を崩す恐れ
  • やや深めの傷を消したり接合分の目違いの修正なども可能
  • 合板のスタンプ、塗装剥離にも使える(ウレタンはしんどい)
  • 手持ちでの側面の研磨は回転のせいでやりにくい
    (摩擦の少ないバフがけなんかは可)

オービタルサンダは

  • オービタルアクションなので研磨傷が出やすい
  • 小傷が隠れる造膜系塗料に向く
  • 研磨力は弱く平面を崩さない
  • 塗装前の荒らしなど下地調整にむく
  • 手持ちで側面に当てることもストレスなく可能
    (パッドの凹みに注意)

ペーパーの番手(ランダム)

ペーパーのサイズは125mmの穴あきがグローバルスタンダード。

僕は#120〜#320をストックしている。

塗装前の広葉樹の仕上げ前研磨は#240と考えれば良い。ランダムなら#320でやることもある。(塗装については下の記事参考)

【#02塗り方編】オイルフィニッシュとは?【塗装と原理】

ワックスの塗りかたと同様に、オイルフィニッシュに絶対的な方法というのは存在しない。自分の求める仕上げレベルや、材料なんかによっても変わってく ...

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針葉樹合板のスタンプを削ったりするときは#120を使ったりする。しつこいときは#60とか使うこともある。

硬い広葉樹なんかの鉋がけで逆目に負けたところをざっくりと誤魔化したい時も#120を使ったりするかも知れない。

接合面のごく微妙な(0.1以下)目違いを誤魔化したい時もそのくらいの番手で弱い力で往復するかも。

#320は木目の直行する接合面を磨く時とか、天板とか絶対傷を出したくない時とかたまに使うけど、#240で十分すぎるすべすべになってるのであまり使わない。


ランダムサンダーは研磨力が強いんだけど、仕上げ前でも#240以上で滑らせるように使えば平面性を崩すことはまず無い。

そもそも仕上げの手触りに神経質になるときはなんであれ最後に手持ちペーパーで攻めるけどね。

ランダムのペーパーはメーカー問わずほとんど適合する、僕はSK11のやつを使ってる。

余談だけど木目に従った研磨ができないものの一つに、旋盤を使った研磨がある。

この場合なんと塗装前に#3000程度まで番手を上げるらしい。なるほど理にかなっている。

穴あきのランダムサンダー用は一般的に#400程度までしかないけど、入念にかけたいときはそこまで行ってもいいかも知れないと書きながら思った。

機種による違い

まずランダム。

僕はマキタのBO180DZを使っててすごく満足してるんだけど、機種による違いはそんなにあると思っていない。

ただこの辺を見た方がいいと思う点をあげておく。

  • 速度調整ができるか
  • バッテリ式か否か

あんまない。

速度調整は仕上げ研磨に使いたい時など削りすぎの防止になる。

というか激安品でもこの調整機構がついてるので搭載品を買って損はない。

バッテリ式がいいと思うのはすぐ使えるってのもあるけど、コードが突っ張って引っ張られると、研磨面が浮いて端っこで削ってしまう事がありそうだから。

実際端っこでぐいぐいやると杉なんかめっちゃ削れてしまうので、思わぬ失敗は少ない方がいい。

マキタバッテリを持ってる人ならBO180DZめっちゃおすすめできる。ハイコーキは残念ながら今の所バッテリ式のランダムサンダーは出してない。

変速は3段で無段変速ではない。

信頼性にこだわらない人は下のWORKPROって謎メーカーのやつでも良さそう。

マキタにない無段変速まで備えてコスパがやばい、アマゾンレビューも悪くない。でももちろん僕は使った事ないので人柱になった人がいたら是非使用感を教えて欲しい。

ボッシュはランダムサンダを発明した会社だけあってバリエーションがすごい。

下のはコード付きでアイドリング機能とかいらんすごい機能が色々ついてるけど信頼性は高いと思う。

横についてるのはバッテリではなくご自慢の高性能な粉塵フィルタ。

続いてオービタル。

僕はマキタとリョービを使ってたけどパッドがウレタンクッションのものしか使ったことなくて、凹んでしまうのが本当に嫌だった、ほんとすぐ凹むし、人に貸したらギタギタになって帰ってきたりする。

ランダムを使い始めてパッドの耐久力の強さを知った、ベルクロ方式のものは裏がゴムだったりで凹むことがほとんどなく、ペーパーを折り曲げることがないので平面性も高い。

あとスライドするものは進行方向前面に荷重がかかりがちなので、使い勝手を除外して考えても三角のほうがいいと思う。

なので使ったことないけど下のものをお勧めしてみる。人柱募集。

というわけでまあ参考になれば幸い。

動画解説

結構しっかり解説できたと思う自信作、実際の動きなんかはこちらを参考に。

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