ハイコーキM3608DAは2022年現在、間違いなく国内最強のトリマであって、他機種との違いが明確すぎて記事を書くのも簡単だ。
そのスペックの違いを無慈悲に解説していきたい。
M3608DAは明らかにマキタRT50DZをトレースしてその問題点を洗い出し、改良して生み出されたもの。
競合あらば完膚なきまで叩きのめす、これは無慈悲なる魔王。
Contents
M3608DAの特徴

最近ハイコーキが後追い開発でマキタの後頭部をぶちのめすシーンが散見される。
かわいそうだけど、もっと見たい。
先に言っておきたいんだけど僕が愛するマキタRT50DZは最高のトリマであって、ハイコーキが上回ったからと言って最高じゃなくなるわけではない。
でもまあ先に述べた通り、M3608DAはこいつをを完全にトレースした上で更なる改良を加えてきているため、下回る部分が見当たらない。
アタッチメント類でマキタが上回るかと思いきや、本体形状まで完璧に合わせているため、プランジベースをはじめ、ほぼ流用できるという鬼畜っぷり。
神はいないのか。資本主義の闇は深い。
まずはこの魔王をトリマとして見た時の優れた点をまとめてみる。
- 充電式による自由自在の運用
- パワー世界No.1水準(36V)
- 回転速度の調整可能(10,000-30,000/min 無段変速)
- ワンハンドオペレーションすごい
電源、回転数、全て作業中に操作可能 - ブレーキング0.5秒
- ベースの向きが4方向に変更自在
- スパナ1本でビット交換
- 手元LEDライト搭載
- 逆さ置き可能
- マキタのアタッチメント多数流用可能
比肩するものなき強さ。
さあかわいそうなマキタと比較するとどうなのか。
RT50DZ(18V)/RT001G(40Vmax)との比較
2021年12月マキタからも40VmaxモデルのRT001G(およびプランジベースRT002G)が発売された。

ただしボディはRT50DZと同様で無線連動集塵のワイヤレスユニットが差し込めるという点以外に(おそらく)違いはない。
40Vmaxバッテリも3.6Vセルx10本なので、動作電圧はハイコーキの36Vと違いはない。
(ただし防水防じん規格IP56に対応していたり、36V工具のラインナップではすでにハイコーキを超えていたり、2本差しの72V運用工具なんかも出して、尋常ならざる開発力を見せているので今後どうなるんや。)
まずRT50DZ(18V)と比較してみよう。
- パワー - 18Vに対して36V
- 回転速度 - 同じ(30,000-10,000min)
- ワンハンドオペレーション - マキタは反対の手で操作が必要
- ブレーキング - マキタは1-3秒
- ベースの向き - ハイコーキ4方向、マキタ2方向
では上記の形状特性を引き継いだRT001G(40Vmax)との比較。
- パワー - 互角(36V)
- 回転速度 - 微妙に違う
マキタ31,000-10,000/ハイコーキ30,000-10,000 - 無線連動集塵 - バッテリ依存のハイコーキ有利か
ああわかりにくい、こういう時は表だ。
M3608BA | RT50DZ | RT001G | |
---|---|---|---|
パワー | 36V | 18V | 36V |
回転速度 | 10000-30000 | 10000-30000 | 10000-31000 |
操作性 | S | A | A |
ブレーキ | 0.5秒以下 | 1-3秒 | 1秒以下? (手動ストップウォッチ計測) |
ベース取付方向 | 4方向 | 2方向 | 2方向 |
集塵無線連動 | バッテリ依存 | 不可 | ユニット差込 |
バッテリ互換 | 18-36V | 18V | 40Vmax(36V) |
実勢価格 | 20,000前後(NN) | 20,000円前後(DZ) | - |
バッテリうんぬんはトリマ本体の能力とは切り離したとして、ワンハンドオペレーションは本当に便利だ。
ブレーキングも、小さなストレスと大きな事故をわずかながら軽減してくれるだろう。
どちらも止まりミゾの加工をしてる時に結構役に立つ。
プランジベースで使用してる時にはあまり関係ないかもしれない。
マキタ40Vmaxモデルのブレーキング能力は直接触って確かめたわけではない。動画で確認した限り、多少改善されたように思えるがそれでもハイコーキの方が早い。
僕の個人的な結論としては、
マキタが40V MAXのRT001Gを出したとしても、ハイコーキM3608DAが細かい部分で上回っていると言わざるを得ない。
同梱品パーツ少なめ
無敵と思われたM3608DAをマキタが上回る点、それは同梱品・・とも言いきれない。
M3608DAはバッテリ、ケースがセットになったXPモデルと、それらが別売りのNNモデルがある。
多くの人はNNモデルを買うと思うんだけど、こちらのモデルはまさかのストレートガイドが別売り。
ただし、確認した限りはマキタのもリョービのも問題なく流用可能なので、すでにトリマを持ってる人からしたら問題ないとも言えるので、この辺もコストカットの戦略かもしれない。
あまり出番のないトリマガイドも別売りだけど、当たり前のようにマキタのものが装着できてしまう。
ただし他社と互換性のないテンプレートガイドなんかはしっかり同梱されている、ガイドの外径は12mmとマキタリョービの10mmと異なるので、そちらを使ってた人は型の併用で少し問題が出るかもしれない。
上の比較では書かなかったけどテンプレートガイドの取り付けはネジ2本で行う、マキタより楽でリョービよりは手間。(マキタほんとかわいそう)
この辺の同梱品は一応リストにまとめておく
品名 | NNモデル | XPモデル |
---|---|---|
コレット6,8mm | ○ | ○ |
テンプレートガイド12mm | ○ | ○ |
集塵アダプタ | ○ | ○ |
ストレートビット | × | ○ |
トリマガイド | × | ○ |
ストレートガイド | × | ○ |
バッテリ、充電器、ケース | × | ○ |
重要な6.35mmコレットはやはり同梱されない上にAmazonでの取り扱いもない。
というわけで正しいものは「これ」だ。
その他ベースアタッチメント
ハイコーキからはこの辺のパーツが全くと言っていいほど出ていないんだけど(マキタのおかげで)心配は無い。
あって一番役に立つのはプランジベースだと思うけど、これがマキタ以上にマキタにドンピシャなんだからもう笑うしかない。
別記事でハイコーキのはまり具合とベースそのもののレビューもしてるからよかったら参考に。
-
マキタトリマのプランジベースはハイコーキにも使えて便利【ルーター化】
このベースはマキタRT50DZもハイコーキM3608もどっちも完璧に対応している。マキタの開発チームが自社製品の品質向上を目指して開発したは ...
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他にも角度傾斜カットを行う傾斜ベースも適合する。
ただしキワ切りを可能にするオフセットベースについては適合が確認できていない。(物自体触ったことないので)
とりあえず自身で確認したものだけ下に貼っておく。
この辺は金物屋さんのYouTubeとかでも紹介してるくらいだからホント残酷。
ワンハンドオペレーション
個人的にここが一番の違いと思っている。
まあとりあえず慣例的に四方向からご尊顔を拝見しておこう。




でワンハンドオペレーションはこんな感じ。
1.親指のスイッチでスタンバイ状態に移行。

2.人差し指のトリガスイッチで起動。

そして実作業時の位置関係は下の写真のようになる。

実際の加工ではもう少し下の位置を持った方が加工しやすいと思うんだけど、左手でベース部分を保持したまま右手を少しスライドさせるのはストレスなく可能。
文字通りワンハンドでオンオフが可能、その際のブレーキングもとにかく早い。
速度調整も親指で可能だけどこちらはあまり使わないかも。
パワー比較実験 vs 18V RT50DZ

RT50DZの18Vでパワー不足を感じたことはない、18Vの時点でAC機以上とされていたからだと思う。
36Vはというと加工時間がAC機比較で40%減とされている(ハイコーキ公式より)
というわけで比較して見た、比較条件は以下の通り。
材料:ホワイトオーク集成材(横切り)
刃:エンドミル6mm
深さ: 5mm
距離 : 300mm
結果は
M3608DA - 3.5秒
RT50DZ - 4.7秒
普段そんなに全速力で切ることないからちょっと戸惑いながらの加工。
加工時間は26%減という結果になった。
加工速度にすれば34%のUP。
マキタのRT001Gのカタログスペックが「当社18V比で35%UP」なのでほぼ妥当な結果と言える。
各種機構の解説
その他特筆すべきことはあまりないけど、マキタと違ってパッチン機構を採用している。


これに関しては一長一短、こっちの方が力が必要だけど早いと言えば早い、90度くらいですでにかなり締め込まれるので、レバー方式ならではの締め加減の微妙なクラッチ操作がしにくいのはもったいないところ。
マキタの方が締め加減で微妙な調整ができるとも言える。
まあ大した差はない。
ビット交換はもちろんスパナ一本でできる。
ハイエンドならば当然。


ベース取り付け用の本体の溝は下の写真の通り四方向に入っている。


普通のトリマベースは四方向全てに入り、プランジベースなどのアタッチメントはギアなしの溝のみに入る。

溝の数は選択肢の数、ただしセットしたい方向を間違えることがないとも言えない。
ルータータイプM3612DAについて
正直なところトリマタイプがマキタのプランジベースに適合する以上は、12mm軸のビットを使わない限り無用の長物だと思う。
ただしそれを回したい時にはこれ一択になると思うけど、販売台数が気になるな。
あと、ルーターテーブルに装着しての使用はあまり想定されていないと思う。
というのも切り込み深さの微調整機構が(おそらく)搭載されていないので、取り付けても深さ調整に難儀すると思う。
そもそもバッテリタイプをルーターテーブルにする意味もあまりないんだけどね。
M3608DA(魔王)の活用方法と基本
少なくともマキタに対しては何一つ劣るものがない、完膚なきまでに叩きのめした傑作と言える。
でも手持ちバッテリで選んでいいと思うよ、マキタの18V持ってるならRT50DZをお勧めする。先代魔王はこいつやってんから。
もう一回書くけど適応する6.35mmコレットコーンは「これ」だ。
個人的には充電式トリマというだけで無敵、トリマーの記事は結構あるので見て欲しい。
特に倣い加工は木工あそびの幅を大きく広げてくれると思うので、基本から応用まで是非マスターして欲しい。
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