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図解ビスケットジョイントのやり方 & マキタPJ180DZジョイントカッター 工具レビュー

2021年4月8日

ビスケットジョイントの出番が板接ぎだけと思ったら大きな間違いだ、もちろん板接ぎには絶大な力を発揮するが、ビスや釘を使わないDIYに挑戦したいDIYerにもちょうどいいと思う。

ああ素晴らしき時短ツール。

動画解説もある↓


この記事では大きく分けて下記4点に絞って解説したい。

  • ビスケットジョイントのしくみと特性
  • ビスケットジョイントでできること
  • マキタPJ180DZのスペック
  • ジョイントカッターを駆使した必殺技

ジョイントカッタによるビスケットジョイントのしくみと特性

ビスケットジョイントはご存知の通り、「ビスケット」と呼ばれるブナの圧縮材を加工したチップを、ふたつの材料に彫った溝に、差し込んで接合する方法だ。

ぼちぼちの強度 + なかなかの精度 + 抜群の加工性

この抜群の加工性ってのがたまんない。

ビスケットジョイントの基本的な仕組み

ブナの圧縮材で作られた厚み3.8mm程度のビスケットを、ジョイントカッタで掘った溝に差し込むことで、2つの材料をジョイントする。
それがビスケットジョイント。

ビスケットがブナの圧縮材というところがポイントで、なんでもいいというわけではない。

基本的にビスケットは購入する必要がある。

ジョイントカッターで掘る溝は4mm程度だが、圧縮材のビスケットがボンドの水分を吸収することで膨張し、ガチッと固定されるというわけだ。

強度もそれなりにあり、使用部位によっては、十分ホゾ組の代替になりうる。(椅子などはアウト)

実物はこんな感じ、おいしそうだねっ

ビスケットの種類とサイズ

マキタが扱っているものは下記の3サイズ、

厚みは全て3.8mm程度で、ジョイントカッターの溝の厚みが4mm。

しかしボンドの水分を吸収することで膨張して固定されることは上で述べた通り。

天板を作る時などに板接ぎ(いたはぎ)するときは大体#20を使う。作るモノにもよると思うけど、僕はほぼ#20を使っている。

仕様寸法はこんな感じ

ビスケットを入れたい部分の幅が狭い場合は、小さいものを使うことになるんだけど、その分強度は弱くなる。

厚みがあれば上下2段に入れることも有効だ。

ちなみに溝を彫る幅はビスケットより少し大きくなるので、ビスケット幅+10mm程度はみた方がいい。

例えば#10のビスケットを使うなら64mm程度は材料の幅がないとツライ。

キワドイことをするなら試し彫りをすること!

マキタ以外の製品もちらほら見かけるが今のところ僕は手を出す予定はない。

使うジョイントカッタのメーカーが公式に指定する純正品を使うのが間違いないと思う。

ビスケットジョイントの精度

接合する面の高さがぴったり合う(PJ180DZによる加工)

これが板接ぎを非常にカンタンにしてくれる。

天板の板接ぎって、下に幕板(横方向の骨)などの支えを入れたるするから、思ったよりも強度がいらない場合が多くて、イモ接ぎという突きつけだけでも十分な場合が多い。

ただし、面の上下がどうしてもずれてしまう。

そこでビスケットジョイントですよ。

接合の平面精度はかなり優秀

ビスケットジョイントを入れるだけでつないだ面の高さがほぼぴったり合う。

これがビビるほどカンタンにできるのが、ビスケットジョイントの革命ポイントだ。

ここが真髄

基本ツライチに仕上げたい接合部で段差ができてたらカンナをかけるしかない。

でもDIYには難しい。

ならでかい自動カンナにかければいい。

でもDIYでそんなもの持ってない(おこ)


これはジョイントカッタの特性によるもので、一番機械の精度が出る部分だ。

完璧とは言わないけど繋ぐ時に十分に注意していればカンナ不要の接合は目指せる。

ビスケットジョイントの遊び

上下方向には抜群の精度を保ちつつ、左右方向には適度な遊びがあるのがまた素晴らしいところ。

ジョイントカッタで溝を彫る時の、横方向の誤差はある程度許容してくれる。

多少ずらして調整ということも可能だ、この動作で上下方向が狂うことはない。

一面を基準に溝を彫るので、上のようなこともできる。

ホゾ組に対する優位性

ホゾ組は一番強い、それは(多分)間違いない。

ホゾ組は面倒臭い、それも間違いない。

ホゾで一番厄介なのが胴突きという部分の加工で、突き出したホゾを残したまま、ビシッと平面を出さなくてはいけない。

DIYerでも精度のあるテーブルソーがあればやれるが、手でやるのは難しいだろう。

ここがちょっとガタつけば隙間がめっちゃ目立つ。

その点、ビスケットジョイントならスパッと切ればいいだけだから超絶カンタン。

切断面が汚くても、ディスクサンダーがあれば完璧だ。

ビスケットジョイントの強度

ビスケットジョイントの強度は、場合によっては「強い」と言えるし、「弱い」とも言える。

椅子の脚や背もたれなど、強い荷重がかかりつつ、揺さぶられるようなモノには向かない。

まあその辺はホゾ組であっても慎重になるべき部分だ。

対して、額縁であったり、収納家具だったり、棚板や天板など、複数のビスケットで接合できる部分では十分すぎる強度と言える。

正直椅子や踏み台にされるモノ以外はサイズが合えばビスケットでいいと思う。

適したボンド

板接ぎなど複数の接点で固定されるもの、額縁など動きがないものは全て白ボンドと呼ばれる一般木工用ボンドでいいと思う。

優れた点は

  • 安い

以上だ。


対して、ちょっと強度が欲しいなと思われる部分にはタイトボンド3が現在最強と思われる。

優れている点は全てだ、一応列挙する。

  • 接着強度が最強(4000psi)硬化も早い。
  • 水に強い。
  • FDA(アメリカ食品医薬品)により食品の間接的接触使用が認められている。食器やまな板に使える。
  • オープンタイム(接着まで動かしていい時間)が長い。
  • 紫外線に強い。屋外や窓際で使える。
  • ペーパーで削れる、鉋でも削っちゃう。
  • データがしっかりある。
  • プロ御用達

僕は気合の入った大切なモノにはこれを使う。というかほとんどこれ。

ボンドはどう付ける?

ボンドをつけるのは溝と接着面だけでいい。ビスケット自体には不要。

僕はそう思っている。

検証情報はネットに溢れていて、大概が「違いは見られないが両方塗った方がいいかも」というレベルのものだ

プロの制作風景をYouTubeなどで見ても、溝だけ塗ってる場合が多い。

手がボンドまみれになって変なところにつく方が厄介かもね。

どうしても慎重になりたい時に両方塗ればいいんじゃないか?

保険のために言っておくけど "個人の見解"です。

加工性

とにかく早い、カンタン正確。

高い、早い、うまいって感じ。

ちなみにトリマーでもビスケットの溝は掘れるし、専用のビットがある。

トリマーの性質上、十分精度も出せると思う。

だけど僕はやらない、面倒くさいから。

ジョイントカッタとビスケットジョイントでできること

天板などの板接ぎ

最もポピュラーな使い方だでビスケットジョイントの強みを最大限発揮できる。

接合部の段違いが起きにくく、強度も十分確保できる。

ピッチを200〜300としているが、狭いほど段差ができにくい、特に決まりはないので目安程度に思ってもらえばよい。

ちなみに、厚み25mm程度なら1枚づつでいいけど、30mmを超えてくると上下二段で入れたりもする。

使う部分は後で切り出すのが原則なので少し大きめに作ろう。

接合するときはしっかりクランプをかけること、作業終わりの夕方にやって翌朝クランプを外すと時間と場所を取らない。

ハタガネとかユニクランプがあると便利。

上下から違い違いに締め込みながら、直定規を当ててみて、平面になっている状態で固定しよう。

この状態で上下に角材でサンドイッチしてもいい、板接ぎ専用クランプがあるみたいだけど、一人のDIYer的には今のところそこまで必要としてない。

額縁などの留め継ぎ

一般に下の図のような斜め継ぎを「留め」という。

そもそも斜め45度のカット自体がシビアなので比較的難しいが、接合自体はビスケットジョイントを使えばカンタンだ。

斜めに切る分、ビスケットを入れる面を稼ぎやすいので、向いている。
固定のためには90度クランプか、ベルトクランプが欲しいので下で紹介する。

誰が考えたんだろうか、邪道感が半端ないが下のようなやり方もできる。

アイデア次第やな。

「挽き込み留め継ぎ」「かんざし留め継ぎ」などと呼ばれ、ビスケットの部分をかんざしと呼ぶ。

ビスケットを使えばかんざしはブナ材になってしまうが、それだけ別の材で用意しても良い。

ビスケットの角は面取りされているので、削ってピン角にしておくと綺麗に納まる
クランプしないと開くので注意
まあアリ

下の写真は真面目な挽き込み留め継ぎの例。
これはテーブルソーで挽いてタモを詰めたんだけど、テーブルソーだと材料を立てるジグ作りが面倒でだったので、
ジョイントカッタで溝を彫ってもまったく問題ないと思った。

考えた人絶対頭いい↓

こちらは定番、でもなんとなくレベルの直角しか出ないので僕はあんま使わない↓

さまざまな木組

普通ホゾ組でやるべき場所にも、ビスケットジョイントは進出していく。

僕はこのホゾ組代行作業をやる時に
ジョイントカッタ買ってよかった!
と強く思う。なんせ労力が段違い。

下のローテーブルは試作品なんだけど、脚の部分もビスケットで接合した。

なぜならめんどくさかった・・・のと、前述した通り、胴突き部分で失敗しにくいからだ。

ローテーブルは踏み台にされる可能性もあるので、ビスケットジョイントはあまり適していないと思うが、中棚や天板などで支え合ってるし問題ないと判断した。

今も僕の部屋で役立っている。

タイトボンド3をしっかり塗り付け、全力でクランプしてしっかり乾燥させる。

これで大概は持つと思う。

しかし椅子だけはやめた方がいい、ホゾ組でも下手くそだと崩壊する(実体験)

こんな感じで入ってる

棚板の固定

下のような感じで棚板を固定することもできる。

ただ、差し込んでないので隙間ができる可能性がある。

なので僕はトリマーで溝切って大入れとか差し込み式にするほうが多いかな。

あんま手間変わらないし。

トリマーの記事はこちら

マキタPJ180DZジョイントカッターのスペック

国産の主要メーカーだったらマキタの独占状態となっている。

機構そのものを発明したのはスイスのラメロ。今は特許が切れて各メーカーから発売されている。

Triton(トライトン)というオーストリアの老舗メーカーのものも安くて評価が高い。

使ったことないけどね。

部位と概要

各パーツや部位はこのようになっている。(取説表記ママ)

ダストバッグ

ダストバックへの自動吸塵能力は高めで、ほとんど飛び散らずに収まってくれる。

集塵機はなくても問題ないレベル。

ただし吸い込み圧がないとすぐに詰まる。

スライドスイッチ

スライドさせてスイッチオンだが、押し込むことでON固定ができる。

板接ぎ時などの連続作業に便利。

ベース(裏面)

ブレードが収まっていて、左下の排出口からダストバックに切屑を送り出すんだけど、ここで詰まることがしばしば。

正面から切屑が吹き出すのが詰まりのサイン。

切り込み深さ調整

ジョイントカッタの仕組みは、本体を材料に押し付けて、スライドさせることでブレードが露出するようになっている。

で、左の切り込み調整ネジが、右のストッパーに当たったところで止まる。

つまりここの位置で切り込み深さが決まるようになっている。


ダイヤル式ストッパーは回転させることで6段階に深さを調整でき、それぞれ0-10-20-S-D-MAXと文字が刻まれていて、順に切り込み深さが深くなっていく。

最初に調整ネジでちゃんとダイヤル通りの深さに彫れるように設定しておけば、普段使いはダイヤルを回すだけで可能だ。

ビスケット毎の設定深さは下記の通り。

  • #0 - 8mm
  • #10 - 10mm
  • #20 - 12.3mm


どれか1つ合わせれば全部合うので、#10の10mmだけ合わせればいいと思う。

但し自分の場合は納品時にすでに使える状態になっていたので、大体は設定して出荷してくれてるのかもね。

左右位置調整

赤いガイドが中心付近にいくつかあるが、これを加工したい位置に合わせる。

なので事前に材料に墨(しるし)をつけておく必要がある。

こんな感じでつなぎたい材料を並べて、加工面に垂直な墨をつける。

加工する時にこのように合わせるだけ。

左右方向は大体1mm以上の遊びがきくため、シビアになる場面は少ない。

慎重になるのは、少しでもずれたらはみ出すというような、攻めたDIYをする時くらいだと思う。

菱形3つでこんなのも作れる

上下位置調整

アングルガイドという左のL型のパーツが上下して、高さ方向の掘り込み位置の調整をする。

例えば24mmの板をつなぐなら12mmくらいに合わせる。大体でオッケー。

目盛りは正確ではない。

マキタに限らず、機械についている目盛りは、大体ずれているので調整する必要がある。というか目安程度に留めておくものだと思っている。

僕の場合は目盛りの数字よりも1mm下を彫ってくれる。

覚えてしまえばどうってことないんだけど、薄鉄板をシールで貼ってるだけなので、剥がして正しい位置に貼り直してもいいだろう。

下の赤い線がカッターのセンターになる。

正確に加工したいなら最初に試し彫りして確認しておくといい。

しかしながら、それぞれ同じ高さに溝が彫れることが大切なので、たいした問題ではない。

平面に加工するとき(棚板などの取付け)

棚板などを、広い面に対して取り付けたいときは、アングルガイドを取り外して、ジョイントカッタを立てて加工する。

外れる

事前に加工面にこのように、十字型に墨付けをする必要がある。

本体左右と下の赤いマーカーを合わせればぴったり彫れる。

もっと精密に加工したいときは、写真のように、赤線から下が10mmなのを利用して、あてがう為の定規を作って加工するとずれにくい。

薄板に加工するとき

基本的にアングルガイドをつけたままでどんな厚みにも対応できるけど、特定の状況では下記のようなこともできる。

上の写真はアングルガイドを外した状態で、フェンスを90度寝かせて、セットプレートというパーツを取り付けた状態だ。

この状態で上から6mmの位置に正確に彫れる。
これを取り外せば上から10mmの位置に彫れる。

正直あまり使わないけど人によっては便利かもね、12mmのベニヤに彫るとか・・・(あるか?)

スペック

上で述べたのが基本的な機能で、比較品があまりない以上スペックを表記する意味もなさげだが、一応表記。
18V用のPJ180DZと、14.4V用もある。

コードレスの優位性

どんな場合でもコードレスが便利なのは間違いないが、ジョイントカッタについては、絶大というほど必須でもない。

どんな工具も、価格と利便性を比較してコードレスかAC機(コード)を決めると思うが、マキタのジョイントカッタに関してはコードレスの方が安い。

もちろんバッテリーがある場合だが、マキタの18Vか14.4Vバッテリーを持ってるならこれでいいんじゃない?


まあピンポイント工具の割に高い。

だけど買ったあとは「もっとはよ買っとけばよかった」ってなった。

そうゆうもんだよな。

我らには作りたいものがたくさんある、しかし時間は有限だ。

仕事であっても、上手く怠ける人間が成果を出す。

それは怠けているのではなく、効率的に動いているだけのこと、

時短によって生み出した時間で、新しい試みを行い、新しい経験を積み、さらなる成果がでる。

それって楽しい。

趣味のDIYも一緒だね。

趣味の方が仕事より大切だし(持論)

結論 : ジョイントカッタは時間を生み出す万能ツール

スイスのやばいジョイントカッター

ビスケットジョイントのアイデアを発明したのはスイスのラメロ社。

そのラメロ社が近年このジョイントシステムをとんでもない領域に押し上げたイノベーションツールを紹介している。

マキタと似ているのは外観だけだ。できることは数次元上。

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イレギュラーだけどこんなことをしてみた。

曲面彫りのマーカーに

こいつを作るのにジョイントカッタが役に立った。

「???」と思うかもしれないが、下の流れをみてもらえるとなんとなくわかるかもしれない。

ジョイントカッタは決められた深さをしっかり守ってくれる。

その特性を使って、曲面の座面の深さをポイントごとに数字で設定して、ひたすら彫っていった。

あとは、彫り込みの底を目安にグラインダーで削っていった。最後は気合のペーパー掛け。

馬鹿みたいなやり方だったけど、感覚でやるよりもかなり正確な曲面ができたと思う。

こんなことやる人いないかもしれないけど何かの参考になるかもしれへんやん。

ジョイントカッタええよ。

とんでもない進化系

ここで説明したジョイントカッタの基本構造はスイスのラメロ社が発明したもの。

ラメロは今なおその分野のトップランナーで、ジョイントカッタの「ジョイント方式」を無限に拡張している。

ただボンドで接合するだけではなく、脱着を可能にするKD金具にしたり、クランプを不要にしたりとんでもないアイデアを展開し続けるものづくりメーカーだ。

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