ここではトリマーの超重要技術である「倣い加工(ならいかこう)」について説明してみようと思う。
その1では、基本技能に近い例を紹介した。ちょっと古い記事であれだけど興味があれば見て欲しい。
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今回は、もう少し応用技術使った制作例を紹介したい。
とはいえ、トリマーの使用には手工具ほどの熟練は必要ないし、やり方がわかれば誰でもできると思うので、素晴らしきトリマーを使うきっかけになってくれると嬉しい。
Contents
概要 - 倣い加工(ならいかこう)とは?
言葉で簡単に説明すると、倣い加工とは、型を用意して、トリマーでカットすることで、同じ形を複製できる技法だ。
ようするにリアルコピペだ。
この倣い加工で加工可能な形状にはほぼ際限がなく、ビットの大きさを最小単位にどんな形でも作ることができる。
そして、ジグソーなどでは絶対に再現できない超正確な曲線が切れる。
とはいえこんな言い方をすると夢が広がらない。
Youtubeとかで、プロっぽい人が椅子を作るときに型を引っ張り出してるのを見たことない??
あれだよ。
同じものを複数作るときも超絶便利な技術だけど、そもそも型を作らないと作れないものもある。
実例 - 倣い加工の応用で作ったもの
言葉だけではアレなので、まず倣い加工がどれだけ木工DIYの可能性を広げてくれるのか知ってほしい。
写真で見てもらうとわかりやすい。
テーブルの脚
これは型を作らないとなかなか作れないものの1例だ。
このテーブルの脚は曲線でシームレスに繋がっており、いかにも手加工だと難しい形状をしているが、まさに倣い加工で切り抜いてボーズ面ビットで面取りをしただけだ。
面取りをする前はこんな感じ。
全然イメージが違ってくる。トリマーってすごい。
使った型はこんな感じ。
あーなるほどってなった?
ところでこの型自体、作るの難しいと思うだろうけど、これは近所のホームセンターのレーザーカットで切ってもらった。
は?と思うかもしれないけど、手加工でも正確な型を作る方法があるので、後の項目で図解付きでしっかり説明する。
時計の盤面
これは前回の記事でも出した時計で、ジグなしで作れると書いたんだけど、クリーマで売るために作ったので型がある。
やっぱレーザーって神だわ。(CNCルータでも可)
ちゃんと手加工でもできるので、怒らないでほしい。
ちなみにクリーマで色々売ってみたら結構売れた。たまに月20万くらい売れた。なので記事にもしている↓
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手掛けの加工
これは別記事で細かく説明してるんだけど、これも倣い加工によるものだ。
型はこんな感じ。
詳細はこちらの記事へ。
倣い加工のやり方と原理
前置きが長くなったけど、倣い加工で結構色々できるのが分かってもらえたと思う。
用意する型について
ほんと材料はなんでもいいんだけど、複雑な形を作る時は、僕は5.5mm程度のベニヤを使うことが多い。
これ以下の厚みだと都合が悪いが、分厚い分にはさほど問題にならないので9mmとかでもいいが、加工がちょっと面倒くさくなる。
基本的に薄くて加工が容易なもので型を製作し、それをもって加工難易度が高い材料を加工する。みたいなイメージ。
とりあえず例として下の型を用意した。
これは同じサイズの角丸を複製できる型だ。
実例としてあげるにはあまりにもしょぼいんだけど、とりあえず原理の解説ということで。
型の使い方
まずは加工したい材料に型を合わせて線を引こう。
線を引いたらまずは荒カット、ジグソーでもなんでもいい。
ある程度厚みがあるものならバンドソー一択だと思うのでこちらの記事も参考に。
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次にカットしたい材料に両面テープを貼って型を貼り付ける。
この時の注意点として、両面テープは超絶便利な剥がせるタイプをお勧めする。
普通の両面テープだとかなりの強度でひっついてしまって剥がすのに苦労することがある。
これで準備完了、あとは加工するだけ。
倣い加工用のビットなど
倣い加工にはベアリング付きビット(テンプレートビット)を使うか、テンプレートガイドを使う方法がある。
もっと下の項目で細かく説明するけどいったんテンプレートビットでやってみる。
下のようなものがテンプレートビット。
3種類の形があるけど共通点はベアリングと刃の径が同じということ、使い分けには明確な違いがあって、その違いは後で書く。
実際の加工方法
実際にトリマーに装着して加工する時は写真のように、
刃が加工材に当たるように、ベアリングの一部が型に当たるようにする。
この設定で途中まで加工するとこんな感じになる。
最後まで加工するとこんな感じ。どっちが型か分からないぐらい綺麗に加工できている。
剥がすとこんな感じ。
これが倣い加工の基本だ。
でも実際にはこんなペラいベニヤを切るような単純な加工だけじゃなく、いろんなシーンがある。
そのためのビットなどの使い分けを詳しく説明する。
テンプレートガイドとベアリングビット
さっきはテンプレートビット(ベアリングビット)を使ったが、テンプレートガイド(ダブテールガイド)を使う方法もある。
テンプレートガイドとはベースに組み込んで使う倣い加工用のガイドで、ベース下に直径10mmの円ができる、この円が型に接触することで型に沿った動きができる。
そしてその中を(だいたい)6mmのビットを通して材料を加工するので、型から2mm離れたところを加工することができる。
もう一つの手法であるテンプレートビットはさっき述べたように3種類の形がある。
ベアリングの位置が、先っぽ、両方、根元と違うけど、どれもベアリングの直径が刃の直径と同じ。
つまりテンプレートビットだと型と2mm程度の誤差が出るのに、こちらは一切出ない有能っぷり。
テンプレートガイドは無能!
いや違う。
それぞれの長所と短所、使用シーンについて解説していきたい。
テンプレートガイドは
まずテンプレートガイドの有利な点は刃の種類を選べる点、一般的なストレートビットではなく、より抵抗の少ないスパイラルビット(エンドミル)を使うことができる。
次に、切削深さが自由自在になる点、例えば2ミリだけ装飾的な溝をを掘りたいシーンなどではベアリングビットではほとんどの場合で対応不可能。
下の時計の溝なんかがそう。
単純に硬い材料をじわじわ削りたい時なんかも使える。総じて穴を掘り込んでいく加工に適していると思う。
逆に欠点はというと、6mm径以下のビットしか使えない点、8mmはガイドに接触しそうで怖い。
なので大面積の穴を掘るなどの加工は向いていない。逆に2mmや3mmのエンドミルも使えるので細かいものは有利だ。
もう一点、加工時にベースが浮くなどのガタツキが生じてしまうと、下の写真のように材料をえぐって一発アウトとなるシーンが多い。
かつ、ベースが安定するトリマーテーブルとして使う場合は結構工夫しないと装着することができない。
そしてガイドの10mmとビットの径の誤差を計算しないといけないのでミスが起こりやすい。
でもミスらなければ問題ない。テンプレートガイドの使用は慎重な加工が必要になる。
というわけでベアリングビットの話もしていこう。
ベアリング先っぽビットは
まずベアリングが先っぽについているビットは、トリマーから見て型を反対側に貼る必要がある。
このような感じだ。
他の方法と比べて有利な点は、失敗が起きにくい点。
ベースがガタついてしまった時に、刃が不用意に材料を抉ってしまうことがすくなく、どちらかというと離れることが多い。
なので手持ちでの加工に向いているとも言える。
また材料に化粧板などの薄板を貼り付けた時、はみ出した部分を切り出す用途なんかにも使われる。
フラッシュ構造の造作で多用されるので、フラッシュトリムビットと呼ばれたりもする。
例えばこんな骨組みに化粧板で蓋をして、真ん中部分だけをくりぬきたい時に、
小さい穴を開けてこれを突っ込んでぐるりと回せば、骨組み通りに化粧板をカットしたりできる。
なので先っぽにも刃が付いたこのような形状のものもあるけど、僕はあまり使わないので持っていない。
先っぽベアリングビットの弱点は?というと構造上、上から掘り込むことはできない。
なので材料の横から当てることしかできないので、徐々に掘り進めることができず、厚み分を一発で切ることしかできない。
その厚みは刃の有効切削幅に依存するが、広ければその分抵抗も巨大になるので無茶をするのは危険だ。
特に真横から当てる以上、逆目でモロに弾かれるので注意が必要。
ベアリング付け根ビットは
さきほどとは逆でベアリングが付け根についているタイプ。
このタイプは見ての通り上から掘り進めることが可能なので、貫通しない穴を掘ることもできるし、負荷を気にしながら徐々に掘り進めることが可能だ。
先っぽビットと違って刃の長さ以上の厚みも切れる。
どういうことかというと、分厚い材料に型を貼り付けてカットする際。
こちらの場合一部でも削ってしまえば。
あとは型を取り外して。
先程のカットラインをテンプレートとして加工することができる。
なので刃の長さは短い方が微調整がしやすい。大は小を兼ねない。
ただし短すぎるとやはり加工限界厚も薄くなるのでやはり複数種類が欲しい。
参考までに25mm前後を切ることが多い僕は15mmのものを一番よく使う。
そのサイズだけ3000円近くする下のような高いビットを使っていて、あとは安いビットのセット買いでやりくりしている。
このタイプのビットの弱点はというと、手持ちで加工する時、テンプレートガイド同様にわずかなガタ付きが失敗に直結しやすい。
なのでトリマーテーブルに装着して使うのが基本だと考えた方が良い。
本格的な家具を作ろうと思った時には主力になると思う。
ベアリング両側ビットは
こいつは逆目対策の名手。単純に両側にベアリングがついるいいとこ取りというだけでなく、全く違うアプローチで生かすことができる。
例えば材料の木口側をこのようにカットするとする。
その場合トリマービットの回転方向により矢印の方向が順目となる。
目に従って削りたい場合、片側ベアリングのビットであれば、逆ベアリングのビットに交換するという手段で対応できるが、単純に手間がかかる。
(理論上可能だが絶対NGなのが型を一旦取り外す方法、一旦貼り付けた型を取り外して同じ位置に貼るのは不可能やぞ)
それに比べてこいつの場合は、
1.根本のベアリングを使って下半分を加工した後、
2.材料を裏返して先っぽのベアリングを使って上半分を削る。
ということが簡単にできる。
このタイプ国産ではあまり見かけない、というか見かけたことないかも。
これは海外のビットで、コレットチャックが6.35mm用なので専用のものを用意すべし。
マキタの充電式トリマ(RT50DとRT40D)の場合はこれが適応するやつ(6.35チャック)。
正確な型を作るために
型を作る上で気をつけたいのが曲線のなめらかさだと思う。
ベアリングは些細な凹凸も拾ってくれるので、ガタついた型ならガタついた複製ができる。まあ大きめのベアリングを使えば凹凸を拾いにくくなるけど。
とはいえ綺麗な曲線作りは超重要、そして薄い型ならそれも簡単。
基本的な曲線の加工
上にあげたような外側の曲線(弧面)を作るのは簡単だ。
バンドソーやジグソーなどで荒めにカットした後に、このようなペーパー巻き棒で削れば良い。
欲を言えばディスクサンダーがほしい。個人的には必須。
こいつは鉄板円盤にサンダーを貼り付けてるので超精密研磨ができる。ぼくは精度の高い機械の不足をこいつでカバーしている。ただしかなり高い。
でもなくてはならない存在だから、それを語り尽くした紹介記事も書いた。
問題は内側の円弧だ。
それもこんなものを用意すればいい。
円盤を作ってサンドペーパーを巻いただけ。ボンドで貼ってる。
今回加工したかったのは半径50mmの円弧だったので半径48程度で円盤を作った。
本当はスピンドルサンダーというものが欲しい。しかしあんま使わないからまだ買う予定はない。
じわじわ削ることで非常に滑らかな円弧が作れた。
左右対称な型、複雑な型を作るために
今回作りたいのはこんなパーツだった。
左右対称は難しいだけでなく面倒くさい。
そして円弧に囲まれた直線をまっすぐに切るのは、うまくいく気がしない。
この場合、内側のデザインが全て曲線であれば逆に楽だったかもしれないが、直線が入っている以上は少しでもガタつくとおかしくなる。
というわけで下の方法でやることにした。
このように分割することで難しい加工がなくなった。
イマイチピンと来ない人もいるかもしれないので順に書いていく。
まずはこのパーツを切り出した。
倣い加工でコピペした。
直線パーツも切り出したが、もちろんこのままだとつなぐことはできないので別の板(5.5mm)に貼り付ける。
ボンドで貼り付けた。乾燥したら再び倣い加工でカットすることで一枚の板となった。
こいつをマスター型としてさらにコピペした。
使用中にトリマが暴れたりすると型が台無しになるのでバックアップだ。
こんだけ手間かけて作ってるのに壊れたらおしまいとか冗談じゃない。
これを繰り返していけば、冒頭で貼ったテーブル脚の一枚型も作れることになる。(写真はレーザーカット)
まあこんなやり方もあるが、もちろんフリーハンドで引いた線にそって型を作ってもいい。ようするにアイデア次第。
今回の型は下のようなパーツを作るために作った。
ぴったり!!
これはオークなので、硬すぎて切り抜くのは大変。荒加工をしっかりやって、少しずつ削って作った。
まだ途中だけど、つないでボーズ面を取れば、冒頭のテーブル脚みたいな感じになる。
ただし、これだけヘビーに倣い加工を行うならトリマーテーブルを作ったほうがいい。
さらに発展して椅子のフレームのような曲線の作り方
こちらはさらに発展した椅子のフレームのような形状をCAD無しで製作していく方法について書いている、さらにその続編として実際にメープルで椅子のフレームを作るところまで動画も込みでもあるので見て欲しい。
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倣い加工の動画解説
この記事に対応した動画解説。うーん結構わかりやすいと思う(主観)。
これだけ色々できる宝石のようなトリマーについて、購入を検討してる人は下の記事も参考にして欲しい。
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今回はここまで。