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トリマーを使った椅子の曲線フレームの作り方【型の設計から倣い加工】

2022年1月13日

こういう椅子のフレーム自体はトリマを使えばDIYでも結構簡単に作れる。(形だけは)

薄いベニヤで型さえ作れば、ならい加工でどんな曲線造形もカットできるから。

でもCADがなく、図面に触れたことがない人にはそもそも曲線型を作ること自体が難しく感じるかもしれない。

設計から実作業まで、CADがある人にもない人にも通じるようなやり方を考えてみたので紹介する。

これを使って行う倣い加工のすごさについては下の記事にまとめてある。

【2021.12更新】倣い(ならい)加工というコピペ技術【トリマーで何ができる?その2】

ここではトリマーの超重要技術である「倣い加工(ならいかこう)」について説明してみようと思う。その1では、基本技能に近い例を紹介した。ちょっと ...

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続きとなる倣い加工の実践記事はこちら

トリマーを使った椅子の曲線フレームの作り方【倣い加工実践】

前回記事で説明した(実際作った)型を使って椅子のフレームを作るまでのプロセス、悪戦苦闘するポイントなんかを解説していきたいと思う。 先に完成 ...

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手書きでもCADでも同じ考えでできる

このような曲線のものを図面化するときにCADがなければいけないと言うことはない。

例えば1から10まで曲線ならば、フリーハンドで書いたもをそのまま図面とすればいい。


でもちゃんと数字で表せてアナログでも再現可能なものを設計したいなら、直線と正円の円弧を組み合わせて考えれば結構簡単にできると思う。

まあその方がなにかと都合が良い。

手書きの場合、用意するものは以下の通り。

  1. 1mm方眼紙(A4以上)
  2. 定規
  3. コンパス
  4. 鉛筆かシャーペン

CADがあればいらない。

デザインのスタートから話せば長くなるので割愛して図面を作るところから。

スケッチなんかで形のイメージはできてるものとする。

設計の手順

こんな感じで書いていく、まあ正しい手順なんてないと思うけど、誰でもできそうな手順を考えてみた。

方眼紙で手書きすると想定、CADなら方眼を出す必要はないけど考えは同じ。

まずは基準の線を決める。

これを方眼紙に書く。もしくは端っこの線を基準線の代わりとしてもいい。

で、縮尺は仮に1/3に設定しておく。

1/3の大きさで書きますよってことで、1mm方眼紙なら1マス3mmとなる。

(実際描いてみるとちょっと大きかった、1/4くらいの方が計算も楽かも。)

30cmくらいの三角スケールあったら便利。

そして目安となる大枠を決める。

これは椅子全体のサイズ感で、この中に収まるように書くための目安。

座面の高さは日本人ならまあこんなもんだと思う。

IKEAの椅子とかは460くらいあるけどスウェーデン人は背がめっちゃ高いし、自分が座ってちょうどいい椅子の高さを設定すればいい。

そしてフレームの感じを手書きしてみる。図はCADだけど許して欲しい。

基準線にはピッタリ書いてるけど、そうじゃないところははみ出したりしてるよね。

めやすだからそんな感じでいい。

大体できたら直線でいいところは直線に線を引っ張る。

するとそれぞれの交点が出る。

この交点の位置さえ数値で示すことができれば、あとは曲線部の半径を指定するだけで図面と呼べるものになり、原寸のベニヤにも複写することができる。

交点の位置は赤で書いてある基準線から測る。

ただしこのままだと、寸法は細々しすぎてかなり扱いにくい。


次はこの交点の位置に注目して、寸法を整えるように調整してあげよう。

こんな感じで綺麗な整数の寸法になった。

整えるときに再考する部分もあると思う。

例えば前脚の底辺と後脚の底辺は同じ24mmになるように調整している。


続いて曲線の部分(r)の設定を行う。

こんな感じに曲線は半径(r)で指定するのが一般的。

これも書き方がある、それぞれの直線に平行な線を、半径分離して引く、すると交点が円弧の中心になる。

これはいちおう動画バージョンでも説明する。

問題は背もたれの後ろの半径が大きな曲線で、これはアナログでやる時やっかいだ。

1/3の図面だとしても1mの棒なんかをコンパスがわりにしなければいけない。

建築学科でテンプレート定規なんてものを買わされたけど、仕事で役に立ったことはなく無駄極まりない。

まずはフリーハンドで書いてみて、内側にどのくらい入り込むのがちょうどいいか決めれば、下の計算式でRを計算できる。

こちらのありがたいサイト様で計算してみよう。

今回の場合は下の図でいうところのWが855でhが30くらいになる。

あとは継ぎ目のラインを決めれば製作に必要な情報は揃ったと言える。

継ぎ目の位置は木目が切り替わる大事なポイント。

個人的に曲線にまたがったところに継ぎ目を入れると、なんかいい感じになると思う。

CADで書いている人は、これを実寸で印刷してスプレーノリかなんかでベニヤに貼り付けてカットすればそれで終わり。

紙出力は多少歪みは出るだろうけど、合わせるとこ合わせとけば問題ない。

アナログでも1/2くらいで書いたものなら無理くそ拡大コピーでいけるかもしれないんだけど、もっとアナログな方法で頑張ってみよう。

実寸の紙に写しとる

さっそく型にする材料に直接書いてもいいんだけど、継ぎ目のところで少し頭を使わないといけないので、迂回してもっと簡単なやり方を考えてみる。

というわけで仲介として紙を用意する、この図が実寸で書ける大きさの紙だ。

ちょっと分厚いほうがいいと思うけどA3コピー用紙をつぎ合わせてもいいと思う。

この紙に最初に書くのはもちろん「基準線」

今回はこんな風に直定規を基準線として固定し、大きめの差し金を組み合わせてやってみたら結構楽だった。

ここに記入するのは「交点」と「Rの中心」「継ぎ目」。

図面に記した寸法をもとに、間違えないように書いていく。

完成したらこれらを型となる材料に移しとっていく。

本番の型に写しとる

実際の型はもちろん図面のように一体ではなく、パーツ単位で分割して落とし込みたい。

例えばこんな感じ。

ちなみに材料は5mm以上だったら特に問題は起きないと思う、テンプレートガイドを使う場合でも5mmあれば十分。

僕はよく5.5mmを使っている。分厚いと加工が大変。


実際の写し取りは紙を重ねて必要なポイントをキリで突いてマーキングする。

気をつけたいのは継ぎ目のところ。

ならい型はぴったりではなく、仕口になる継ぎ目のところなど少し長く作っておいた方がいいと思う。

なんせ角の部分は使ってるとだんだん丸まってくる。

継ぎ目が丸まると実際の加工もそうなってしまうのでアウトだ。

なので少し隣のパーツにまたがるように延長して作っておくことでこれを解消できる。

もちろん継ぎ目のラインがどこかわかるように印だけつけておけば良い。


これは脚の先にも同じことが言える。長くしといて後で切る。

たとえば前脚の型を写しとるなら最低限これくらいのポイントを写しとればいいと思う。

そのあとは交点を結び、長くするところは長く書く。

最後にRのところをコンパスで書き込めば完成。

問題の背もたれのRはこんな風にして書いてみた。

厳密なR3000とは程遠いけど、ラインは綺麗に引けるし、ほかのパーツとの干渉(取合いという)も無い部分なので、のちのちの不都合もない。

あとはカットすれば勝利も目前。

型の切り出し

この作業に使う道具は以下の通り。

  • 丸ノコ
  • バンドソーかジグソー
  • 曲線に貼ったサンドペーパー(#80〜120程度)
  • 棒巻きサンドペーパー(#120程度)

直線は言うまでもないので省略するけど、曲線はバンドソーがあると楽。1mm以内くらい余裕を見てカットする。

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そのあとはこのようなペーパーを用意して滑らかになるまで削る。

円盤はR50の内側を削るためにR49ちょっとの大きさでで作ってある。

棒巻きペーパーはぼちぼち直角の出た棒に巻いただけ。全面密着するようにスプレーノリで貼ってある。

まあこれらの作業が完了すれば型の完成。

いよいよ本体の製作に取り掛かれる。

作るのに手間のかかった型だけど、加工中に傷つけてしまうこともあるし、細長いものは湿気で曲がることもある。

と言うわけで、何度も使いたい大切な型ならマスター型でサブ型を複製して、マスター型はどこかにしまっておけばいい。

もしくは白金90%イリジウム10%の合金で作ると変形しにくいらしい。

簡単に型を作る方法

これだけ長く解説してきた型の製作だけど、100倍以上簡単に作る方法がいくつかあるので紹介しておきたい。

  • 実寸印刷した紙を貼り付けてカット
  • レーザーでカットする : 5mm程度までのベニヤ
  • CNCルータでカットする : もっと厚いベニヤ

デジタルファブリケーション技術はものづくりを大きく変えたし、ごく身近に存在する。

うちのもよりのホームセンターにもでかいレーザーがあるから、実際のところ型はそこで30分500円払えば作れる。

少し足を伸ばせばCNCルータも3000円で数時間使えるので、本気出せば型さえも不要。

これらを使うための基本データはご存知イラレこと「イラストレーター」というソフトでつくる。

そしてほとんどのCADはこのイラストレーターとデータ互換があるので、CADで書いたものをイラレに持っていたりできる。

なのでCADとイラレを使いこなすことはDIYスキルの向上につながると思う。

つまりPCは工具。

加工において手ノコで丸ノコのスピードと精度に敵わないのと同じで、試行錯誤やシュミレートをするにも、手書きとCADでは雲泥の差だと思う。


僕が15年前設計事務所に就職した時、すでに図面を手でかく業務は存在しなかった。

まあ年配の建築士の方なんかは今も手書きだったりして素直にすごいと思うんだけど、彼らがCADを使いこなせばもっとすごくなれるはず。

PCの前に座り、手書きのスケッチでアイデアを捻りながらも、同時にCADでスケール感を確認したり、寸法の整合性をとっていく。みたいな感じ。

DIYでも無料のCADはたくさんあるし、CAD未経験者でも仕事で一日中使えば一週間で使いこなせてたから是非覚えた方がいい。

動画解説

実際に作ってる感じなんかはこっちの方がわかりやすいとは思うのでよかったら参考に。

続き 実践編

続きとなる倣い加工の実践記事はこちら

トリマーを使った椅子の曲線フレームの作り方【倣い加工実践】

前回記事で説明した(実際作った)型を使って椅子のフレームを作るまでのプロセス、悪戦苦闘するポイントなんかを解説していきたいと思う。 先に完成 ...

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