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【前編・トリマーによる曲線加工】ラタン張り引き戸の作り方

2021年7月26日

3枚引きの引き戸を作った。建具は初めてだけどまあまあ満足できてる。

この記事では、いかにも難しそうな継手にまたがった曲線加工のトリマーによる攻略法や、家具引き戸の寸法的な納まりだったりについて説明したい。

この手の加工が使われた家具を初めて見た時は、あまりにも難易度が高いプロの領域かと思ったけど、ちょっとしたトリマー使いを知っていれば工夫一つでDIYでもできるので解説してみる。

さまざまな家具に見られる造形だが特に名称が思い当たらないため、知名度も低いのではなかろうか。

地味に見えてもっと難しいチャレンジをしている人は結構多いし、そんなDIYerにとっては十分簡単な加工と言える。

作ったものの図面は下の通り。

動画解説

この記事は動画が先行している。

動画では解説しきれないところをカバーしているつもりだけど、こちらは感覚的にわかってもらえると思う。

前加工

今回使用したのは国産の楢(ナラ)材。マルトクショップで買った

これを使ってフレームを作っていくけど、いきなりトリマーで加工していくわけではない。

倣い加工用の型を用意する

曲線加工といえばトリマーの倣い加工。

倣い加工といえば必ず型が必要になる。

非対称の型であれば、なんとなく作って差し支えないと思うけど、今回は左右対称の型が必要になったのでちょっと工夫して作った。

この型の作り方は前回詳しく書いた記事があるのでそちらを参考にして欲しい。

【2021.12更新】倣い(ならい)加工というコピペ技術【トリマーで何ができる?その2】

ここではトリマーの超重要技術である「倣い加工(ならいかこう)」について説明してみようと思う。その1では、基本技能に近い例を紹介した。ちょっと ...

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こちらの記事の「正確な型を作るために」の項目に詳しく書いてある。

図面も載せておく。

型を使って木取り

材料に型をあてて鉛筆でスミ線を引いていく。

今回マルトクショップさんでほぼぴったりサイズで買ったので、大きな材料から木取りするわけじゃないんだけど便宜上木取りと呼んでおく。

スギとかでもできるから幅広の板からバンバン取るときは型で墨付けしていくと楽。

バンドソーかジグソーで荒加工

引いた墨線に従ってバンドソーで加工していく。

これはトリマーの加工の負荷を軽減するための荒カットなので雑な加工で十分だけど、気をつけたいのは絶対に墨線の内側に入ってはいけないということ。

墨線より1mm弱余裕を持って切っていくイメージ。

残った部分をトリマーで削っていく。

ジグソーでもできるけどやっぱりバンドソーがあると最高にやりやすい。(いまだにジグソー持ってない)

SK11のバンドソーを使ってたんだけど、ガタがきたのでリョービのTBS-80に買い替えた。

バンドソーを曲線加工メインに使う人にはなんといってもフトコロ寸法が大事。

SK11の195mmに対してリョービのこいつは280mmもあるので作業性が段違い。しかもSKより安い。

他にもあらゆる特性が他のバンドソーを超越している、詳しい特性については下の記事を参考にして欲しい。

リョービ 卓上バンドソーTBS-80【レビュー&評価】他DIYモデルとの比較

リョービのバンドソーTBS-80を買って結構使ったのでレビューしたい。 木工用のバンドソーとは文字通りバンド状になったノコ刃が回り続けること ...

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荒加工が終わればこんな感じ。

実に荒いけどなんの問題もない。

倣い加工

ここから倣い加工で切断面を整えていく。

型を貼り付け

型を材料に両面テープで貼り付ける。夏休みの工作的なやり方に思えるが、切り抜く倣い加工を行う上ではこれはスタンダードな手法のはず。

今までニチバンの普通の「ナイスタック」使ってたんだけど、ピンクのパッケージの剥がれるタイプ使ったらめっちゃやりやすかった。写真では節約してるけどべったり貼っても問題なし。

できればトリマーテーブルで倣い加工

ベアリング付きのストレートビットを使って型に沿って削っていく。

ベアリングは型に、刃は加工材に当たるように。(もっと詳しい加工については冒頭で紹介した記事を見て欲しい。)

ちなみに写真で使ってるのは刃の径が小さいものだけど、よほど細かい曲線を切らない限りはなるべく大きいものを使ったほうが良い。

径が小さいと型の小さな凹凸も拾ってしまい、加工面が荒れやすくなる。

セット買いしてたから新品の小さいの余ってて使ったんだけど手直しに苦労した。

回転速度調整ができるトリマーであっても最速でやるのが綺麗に加工するコツ。

あと、トリマーの刃が逆目に入る部分は材料が割れやすい。というかオークなんかだと99%割れる。

写真は思い切り割れてボンドで修正中のもの。

これを防ぐには逆目で当てなければいい、ベアリングビットの上突き下付きを入れ替えて、材料を表裏逆にすればいい。

なんやかんや細い部材の倣い加工はなかなか危ない。硬い木の木口なんか特に。

なのでなるべく簡易でもいいのでトリマーテーブルで作業したほうが良い。作業性も段違い。

作り方の記事もあるので良かったら参考にされたし。

トリマーテーブルを作ろう【トリマーで何ができる?その3】

前回は倣い加工(ならいかこう)について説明してみたが、その倣い加工に特に力を発揮するのがトリマーテーブルだ。 パーツが細くなったり小さくなる ...

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手直し

ビットが小さかったせいで結構大変だった。綺麗に削るには棒巻きペーパーや、写真の上の方にあるような円盤ペーパーを作ってもいいかも。

今回はこの加工面を使ってさらにボーズ面取りをする予定なので、ベアリングが当たる箇所のガタツキは入念にチェックした。

凹みなどがあればパテするのもありだと思う

接合

接合がうまくいけば勝ったも同然。

後の作業はほぼ意匠造形のお化粧だ。

仮組み

これを

こう

ドンピシャ。

ちなみにRの部分がピッタリあっても上の直線部分がずれたりする。

もちろんその辺は予測して、接合後にカットするようにするように長めにとっておけばよい。

一旦クランプで軽く固定してみて、合わせる位置にマーキングすると良い。今回はビスケットジョイントでいくのでその墨線で位置合わせができる。

ビスケットジョイント

このような、さほど力が加わらないものにはビスケットジョイントが抜群に良い。

指物(さしもの)たる建具製作の正統派はホゾ組だけど、これはDIYですから。

詳しいやり方については下の記事にまとめてある。

図解ビスケットジョイントのやり方 & マキタPJ180DZジョイントカッター 工具レビュー

ビスケットジョイントの出番が板接ぎだけと思ったら大きな間違いだ、もちろん板接ぎには絶大な力を発揮するが、ビスや釘を使わないDIYに挑戦したい ...

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今回は#10のビスケットを使用した。

僕はビスケット接合の時は基本的にタイトボンド3を使用している。

というのもビスケット接合の強度はボンド頼みなので過信は禁物。

とはいえ人間の力で破断させるのは不可能な強度はある、経年の負荷による耐久性の話。

まあ持ってぶん投げたりしたら壊れるかも。

ホゾ組の時は余計に強度求めてるからそこでもやっぱりタイトボンドなんだけどね。

クランプ掛け

少し斜めにかけたりしてるけどこれは直角の調整。

クランプをかけたらまず直角を測ると思うけど、ズレてたらかける角度を変えればかなり調整できる。

こういう時のクランプはユニクランプに限る。

ベッセイが有名だけど高いのでトラスコ中山のやつを使ってる。

600サイズをたくさん揃えるとQOLが上がる。

各種加工

あとはお化粧をしていくだけの楽しい作業だけど、まずは小さな目違いなどを整えていかないといけない。

工数だけはやたら多く、ほとんどがトリマー加工。

ほんまトリマー最高やで。

微調整

ビスケットジョイントで接合してもわずかな目違いは必ず出る。

小さな段差や杉などの柔らかい木ならランダムサンダーで修正可能だけど、硬い木だと歯が立たないので手鉋を使うしかない。

DIYerが苦手とする鉋は(僕もそうだけど)、台直しさえちゃんとできていれば、とにかく薄削りすることでなんとかなる。

目視だけでは確認できない位の出しろなので、いらない材料を使ってとにかく薄く削れるように刃の出具合を調整しよう。

ちなみに鉋の後はペーパーで下地調整だけど、接合部で目が変わるのでランダムサンダー絶対いると思う。

ただし、目違いの調整であまりランダムサンダーに頼ると平面性が崩れるので注意。

国産の充電式ランダムサンダーはマキタしか出てないんだけど価格もお手頃。よかったら下の記事も参考に。

マキタ18V充電式ランダムオービットサンダーBO180DZ【おすすめ工具レビュー】

充電式サンダーてどうなん? 結論としてめちゃくちゃ使う。 もしかすると一番使うかもしれない。 確かにサンダーを買っても、何か作れるものが増え ...

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手掛け掘り

ストレートガイドを装着して、一旦6mmビットで加工した後に10mmのU字ビットで加工した。

加工始点と終点に墨を引いているが、多少ずれても目視でわからなければいいので結構適当だ。抜くところは抜くのがDIY。

ただしどうしても終点で焦げるのがネック。

使ったトリマーはマキタのRT50DZで回転速度を最低に落として加工したがそれでも少し焦げた。

おそらく線状の加工はどうしても焦げるので僅かにでも幅方向に広げて加工することで解消できる気がする(やってないけど)

RT50DZは速度可変も可能な優秀なトリマ、下の記事ではハイコーキのM3608DAとの比較も交えながら解説している。

【2021/8フル更新】マキタ18V充電式トリマRT50DZレビュー&ハイコーキM3608DAとの比較【おすすめ工具レビュー】

後日発売されたハイコーキのM3608DAとの比較も加えたので購入を検討している人は資料の一つとして役立てて欲しい。2021年8月現在は2万円以下で購入...

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喜びと感動のボーズ面取り

この引き戸を作る時、最もやってて楽しい作業がこの面取り。

曲線加工した材料にボーズ面を取ることで、突如として有機的な美しさが生まれる。

本当にすごい、不思議、僕はこの曲面の魔力に取り憑かれている。ゲヒゲヒ

作業自体は至って簡単かつ失敗もしにくい。

焦げにくいため回転数は最高回転でいくのが綺麗な加工のポイント。内側の入り隅は少し焦げやすいので、スピーディーにいくか回転数を落としてもいいかも。

ビットの深さは段差が出ないギリギリをつく。もちろん端材で試しながら調整している。

【重要】敷居鴨居との取り合いと寸法

引き戸なのでここが大事。

以下の図面の通り。

この加工についてはトリマーで削るだけなので特にコツとかはない。

図面はネットで色々調べた結果、この寸法にした。

こういう溝を掘って引くタイプの引き戸を作ったのは初めてなんだけど、問題なくスムーズに動いてくれている。

強いていうなら加工時エンドが間違いなくはね飛ぶので、最初に逆走で少しだけ削ってる。

この加工は手持ちトリマーかつ、焦げても別にいいの精神でやった。

ラタンはめ込み用の溝加工

このラタンの溝加工については下の図面のような2段加工にしてある。

この寸法については、使うラタンの丸芯によって変えていかなければならないので、細かいことは次の記事で説明する。

ラタンの厚みを2mm分見ていて、先にこの加工をしてから後で6mmの溝を掘った。

この2mm分の削りはトリマー本体にベアリングをつけるやつで加工したんだけど写真も動画もない。

とりあえずRT50に最初からついてたこれだ。

こいつは設定した以上奥に入り込まないようにするだけで正確な加工ができないんだけど、8mm以上削れたらいいのであまり問題ない。

次の6mmの溝加工はそこそこ綺麗にやりたいので、やっぱり型を作った。

倣い加工だけどベアリングビットでは加工できないのでテンプレートガイドを使った。

この底についてる丸い輪っかがガイド型に当たって倣い加工ができる。

輪っかの寸法に適応した型を作らないといけないので、ベアリングビットを使うより少し頭を捻らないといけない。

この場合輪っかの半径が9mmでビットの半径が3mmなので6mmの差を計算して作る必要がある。

慣れれば簡単なんだけど数字苦手な人はきついかもなあ。

でもDIYには計算がつきものだからね。しょうがないね。がんばろうぜ。

負荷がかかる作業なのでルーターを使ったけど、まあトリマーでもできる。

トリマーならプランジベースという上下の動きを可能にするアタッチメントがあると楽。

作業の感じは動画を見てもらえると良い。9:10あたりから。

加工完了。結構綺麗。

オイル塗装

ついにオイルを塗る。

もちろん下地処理は入念に。オイルフィニッシュ全般の解説について詳しくは下。

【#02塗り方編】オイルフィニッシュとは?【塗装と原理】

ワックスの塗りかたと同様に、オイルフィニッシュに絶対的な方法というのは存在しない。 自分の求める仕上げレベルや、材料なんかによっても変わって ...

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3次曲面の美しさがこの瞬間に炸裂し爆発する。

最高やわー、リボスのアルドボスが一番好き。

ラタンの貼り方

ラタンの貼り方は続編にて。

【後編・ラタンの張り方】ラタン張り引き戸の作り方

ここでいうラタン張りは1本づつ編んでいくのではなく、編み込んでシート状態にした「ラタンシート」を丸芯を使って打ち込んでいくやり方だ。 椅子の ...

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