リョービのバンドソーTBS-80を買って結構使ったのでレビューしたい。
木工用のバンドソーとは文字通りバンド状になったノコ刃が回り続けることで、木材をカットするもので、帯鋸盤なんて呼んだりする。
上から下ろす金属切断用は少し形状が違うので混同しないこと。
曲線切りの腕前はジグソーの上位互換であり材料のバタつきは一切起きず静音、かつ構造上の特性から硬い&分厚い木材を物ともせず切ってくれる。
そんなバンドソーの中でも間違いなく名作と呼べる逸品、事細かに語り尽くしたい。
Contents
TBS-80の特徴 曲線切りに最適
最も注目すべきはフトコロ寸法と変速機能。
SK11(藤原産業)のバンドソーからの買い替えだったが、なんと言ってもコスパが良い、購入の決め手はずば抜けたフトコロ寸法だが、他にも便利機能が多く搭載されている。
TBS80は木材の曲線切りに最適なバンドソーで、曲線パーツの切り抜きや、スプーンなんかを作ったりする荒加工に向いてる。
- DIYモデル最強のフトコロ寸法280mm
- スピードが無段変速で1/10まで落とせる
- 張り調整はダイヤルの他にレバー一つでオンオフが可能
- 3万円以下で買える抜群のコスパ
- 盤面の角度調整が可能
- マイターゲージ付き
- アルミなど非鉄金属も5mm以下ならカット可能
- 加工厚は並の80mm
見ての通りフトコロの深さだけではなく、DIYモデルにはレアなスピード変速調整機能(しかも調整幅が広い)まで備えており、その辺りは他のDIYモデルと特に一線を画したと言える部分だ。
帯鋸の張り調整ができるのは当然だけど、レバーひとつでテンションのオンオフをできると言うのも珍しい。
マイターや盤面角度の調整などの一般的な機能は当然備えており、恐るべきはこの高機能で他メーカーよりも安いと言うことだ。
まさに他の追随を許さないコスト&パフォーマンスによって起きる現象はやはり欠品で、僕は2-3ヶ月と言われて1ヶ月で届いた。
しかし2021年7月30日現在、Amazonで見る限り翌日配送になっているので購入はタイミング次第だろう。
TBS-80のスペックと外観

スペックは以下の通り。比較対象としてSK11のバンドソーをあげておこう。
リョービ TBS-80 | SK11 SWB-200N | |
加工能力厚 | (やわらかい木)80mm (かたい木)50mm (アルミ)6mm | 120mm (金属不可) |
フトコロ寸法 | 280mm | 195mm |
テーブル傾斜角 | 0~45度(右) | 0~45度(右) |
帯鋸刃周速度 | 90~900m/分 | (50Hz)970m/分・(60Hz)1,170m/分 |
電源 | 単相100V | 単相100V |
電流 | 5A | 1.8A |
消費電力 | 320W | 150W |
電源コード | 2m | 1.7m |
テーブル寸法 | 292x292 | 300x340 |
質量 | 13kg | 14kg |
サイズ | 幅622×奥行317×高さ622mm | 幅410×奥行き320×高さ650mm |
付属品
・帯鋸刃(6.35mm×0.4mm×1,445mm×6山)
・六角棒レンチ(3・4mm)
・マイターゲージ ・集じんアダプタ
フトコロ寸法とパワー、回転速度を落とせる点でリョービが優れ、加工厚はSK11が優れる。
金属や堅木などの抵抗の大きいものを切る時には速度を落とす必要があるため、SK11は非鉄金属の加工はできない。
その他スペックに現れない点で、鋸刃のテンションの調整機構や開閉のしやすさ、さらに価格帯でもリョービが優れる。
以下見た目はこんな感じだ。




すば抜けたフトコロ寸法

フトコロ寸法とは写真で測っているように刃から本体フレームまでの距離のこと。
この距離が加工の限界に直結するわけではないが、曲線加工の際の材料の取り回し性能に大きく関わってくる。
ここが狭いと、ぐるりと材料を回し切っている時にフレームに当たってしまうことが多くなり、「裏に向けたら切れるけど裏には墨線が入ってねえよ」と言った具合に使用時のストレスが爆上げで、作業性がダダ下がりする。
曲線加工がメインであれば、正直注目すべき点はここだけでいいとも言える。
主なメーカーのフトコロ寸法は下の通り
- リョービ(京セラ) TBS-80 - 280mm - 相場価格28,000円
- 高儀 EARTH MAN RBS-195A - 195mm - 相場価格17,000円
- SK11 - 195mm - 相場価格38,000円
- イリイ TR-265EMB -240mm - 相場価格50,000円
- プロクソン ミニバンドソー -150mm - 相場価格40,000円
- ホーザン K-100 - 150mm - 相場価格47,000円
高儀のバンドソーはSK11を模倣したような構造をしており、パワー、開閉機構などは改良されているので変速機能などはないが頭抜けて安いので選択肢には十分入るだろう。
耐久性などの点で悪い噂(レビュー)も聞かない。マイナーメーカーだからと言って舐めてはいけないと最近よく思う。
速度調整はばが広く、木から非鉄金属まで自在

TBS80この機能があるため、冷却装置のない木工用バンドソーにもかかわらず、木材以外にも様々なものが加工できる。
木材加工でも直線なら早め、曲線なら遅めに設定すれば様々なシーンに対応できる。
材料別の目安は以下の通り。単位はダイヤルの数値に準じる。
- 木材 - 12.5m/s以上
- プラスチック - 6m/s
- アルミ - 5.5m/s
- 真鍮 - 4m/s
- 銅板 2m/s
この機能が搭載されているDIYモデルは
- リョービ(京セラ) TBS-80 - 90~900m/分 - 相場価格28,000円
- イリイ TR-265EMB - 660~960m/分 - 相場価格50,000円
- プロクソン ミニバンドソー - 130~200m/分 - 相場価格40,000円
- ホーザン K-100 - 130~200m/分 - 相場価格47,000円
これを見ればいかにTBS80の調整幅が広いかがわかるだろう。
木工用バンドソーでも非鉄金属を切る目的のバンドソーは回転速度の基準値が低い。
低くても木は切れるのでそのように設定しているんだろうけど、遅いとそれはそのまま作業者にストレスとして跳ね返ってくる。
モーター回転速度の調整が技術的にどれほど難しいのかはわからないが、必要なところにコストのかかる技術を投下し、不要なところをカットする。リョービ(京セラ)はそのセンスが抜群に優れているといつも思う。
帯鋸のテンションオンオフ

本体のてっぺんにこのようなレバーとダイヤルが付いている。
黒いレバーで帯鋸の張り具合の基本調整を行うんだけど、刃の交換をする時に緩めて外し、つけたらまた閉める。
ここまではどのバンドソーにも搭載される必須機能。
TBS-80にはこれに加えて黄色いレバーを操作することで、「緩める-張る」の一括操作ができる。
これがどう言うことかと言うと、使う時にはレバーでテンションをかけて、使わない時には緩める状態にしておくことで、帯鋸が伸びてしまうのを防ぐことができる。
自転車のチェーンと同じでずっとテンションをかけておくと帯鋸も伸びてしまい、寿命にも関わる。
知る限りこの機能が搭載されているのはTBS-80だけだ。
えらいぞリョービ。
高さ調整しやすいが加工厚は並
ソーカバー高さ調整も簡単。
ソーカバーとは文字通り帯鋸をカバーして支えている部分で、これを材料の高さに近づける(低くする)ほど安定した加工ができる。
面倒くさいから調整しなくても切れるっちゃ切れる。
TBS-80は裏に調整ダイヤルとレバーがついていて、レバーでロック解除してダイヤルで高さ調整、サイドレバーを締めると言った具合で工具不要なので楽。

ただし加工高さは80mmに制限される。
この数値は低いでもなく高いでもない並といったところ。プロクソン、ホーザン、髙儀も80mm以下。SK11が120mmまでいけるがこれはかなり厚い方だ。

分厚い木材の挽き割りなんかしたい人は、製材所に行くか単純に10万以上払って格上のモデルを買うべき。
蓋の開閉が簡単

写真のように右に丁番がついてて思い切りよく開く。
大体のバンドソーは固定ネジが2点くらいでついてるけどTBS-80は速度変更ダイヤルの隣に1つだけ。

ここだけの話、僕はこれをつけていない。
左側で爪が引っ掛かかって保持されるようになってるので、こんなの閉めなくても全然いける。
交換も掃除もすごい楽。
もし作業中に開いたとしてもバンと閉めればいいだけの話。まあ開いたことはない。
でも真似するなよ、絶対真似するなよ。
盤角度やマイターその他

まず盤面角度調整は安物にありがちなガサガサ動かすタイプじゃなくて、ダイヤルで調整できて、固定は2点なので動くこはない。
直角維持のネジもあり、角度メモリもネジで調整できる。見たことないけどな。


マイターゲージもちゃんとついている。使ったことないけどな。

そのた買ったら絶対やらなければいけない、刃ブレを抑制するための押さえの設定がある。
正直この辺は手が入りにくくてやりにくい。
しかし非常に大事であり、最初にやればほぼOKなので説明書を読んでしっかりやろう。


集塵

集塵は本体左下から行われるが、どう考えても場所がおかしい。
のっぴきならぬ設計上の都合があったんだろうけど、右下につけるべきじゃないのかな?
集塵アダプタは同梱となっているが、僕が使っているリョービVC-1100集塵機の付属ホースには、R2タイプのアダプタを一つ介さなければつかなかったので要注意。
具体的な用途
バンドソーは荒加工用の機械であって仕上がりに使うものではない。
Amazonレビューなんかで精度を要求するような記述がたまにあるがちょっとよくわからない。
バンドソーの曲線加工をどのように生かしていくかちょっと説明したい。
【追記】ジグ制作
これを作る時に金属加工も含めてめちゃくちゃ活躍したから記事にした。
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円盤の加工
まずは正円の円盤の加工。

コンパスでもなんでもいいので丸を描いたらバンドソーでざっくり切る。バンドソーの役目はここで終わりだ。
あとは棒巻きペーパーや、ディスクサンダーなんかを使って整える。


はいこんな感じ。
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切り文字サインを作る



こんな切文字だって作れる。ただのベニヤなのにめっちゃかっこいい、いわゆる人間NC加工(HNC)。
分割して作ってるけど全然問題ないし、荒くても気にならない。切断面も軽くぺーパーがけした程度
やりかたとしては、切りたいロゴを実寸で印刷して、材料にスプレーノリで貼り付けて切ってやれば良い。
一時接着には3Mの55が基本。
書き割りの動物さんを作る

ちょっとめんどくさいけどバンドソーなら簡単。どうや可愛いやろ。
これもロゴ切り文字と同じ。
家具の曲線加工
このようなプロっぽい加工。

これはトリマーとのコンビネーションが基本。
まずは墨線を引いてそれに沿ってバンドソーで切る。


そしてトリマーで「倣い加工」
超綺麗になった。

あとはビスケットジョイントで接合して、ボーズ面を取ればこの通り。

倣い加工については下の記事で詳しく説明している。
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このような曲線加工をイチからトリマーでやるのはあまりにも無理があるので、バンドソーで荒加工するのは非常に重要。
特にこの木は楢なのでむちゃくちゃ硬い。バンドソーなしではとてもじゃないけど加工できない。
動画解説
Youtubeで動画解説もやってるよ。
ガイドフェンスで直線を切るためのドリフト調整
TBS-80にはガイドフェンスが付属していない、と言うのも付属していたところでDIYモデルのバンドソーではドリフト現象という宿命のせいでまっすぐ切れないからだ。
とはいいつつもドリフト現象を攻略するのは思いのほか簡単。ということで別記事でまとめてある。
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TBS-80のまとめ
昔からユーザーのかゆいところを、低価格で掻きむしるサービスを提供しているのがリョービ(京セラ)と言うメーカー。
TBS-80は特にその流れが強く感じられる逸品で、しつこい程の汎用性と調整能力、稼ぎに稼いだフトコロ寸法と、とにかく使用者をストレスから解放してくれる。
生産終了後には、かつての名作テーブルソーBT3100がそうであったように「そして伝説へ」コースが予定されていると思う。
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