木材にネジを打ち込む前の下穴は、割れを防ぐだけでなく、位置合わせ、大穴の誘導、ビスのネジ切れ防止、ネジを納める皿取り、さまざまな目的で開ける事になる。
だから、様々な用途に特化した様々な下穴ドリルがあるんだけど、意外とどれも汎用性が高いので、もっと早く買っておけばよかったものが多い。
独断と偏見に基づいて、汎用性の高いと思う順に紹介していく。
Contents
センター一発

スターエムのセンター一発は、その名の通りあらゆる金具の取り付け穴のセンターに一発で下穴を開けてくれる。
速度だけではなく精度も抜群。
用途
丁番やスライドレールなどの金具を取り付けるとき、下穴を開けずにビス留めすると間違いなくズレる。
なので下穴は必須。
これ無しで正確な穴を開ける手順は以下の通り。
キリ(千枚通し)で金具の取り付け穴の真ん中あたりを狙ってマーキング。次にそこを目がけて下穴キリ(小径ドリル)で下穴を開ける。
(いつも思うけどドリルのキリと千枚通しのキリの言い訳をどうしたもんか)
この手間を1工程にまとめつつ、精度も爆上げしてくれるのがセンター一発。
金具の取り付け位置をここだと決めたら、センター一発でチュインとやれば、あとは思考停止してビス留めするだけ。

皿ねじ固定なら、ほぼほぼずれない。控えめに言って誤差は0.2mm程度に収まる。

スライドレール、丁番各種、ホームセンターにあるような穴あきアングル。
この辺りの金物は大多数の人が使うと思われる。つまり大多数の人が買えば幸せになれる良品。
しくみ
写真の通り、チューブの中にドリルが収まっている。
チューブの先端が円錐(えんすい)状になっているので、金具の丸穴に当てればセンターに誘導される。

そして押し込めばチューブがスライドしてドリルがセンターに一発で穴を開ける。

まさにセンター一発。
正確にセンターを捉えるにはまず、チューブの先端が円錐状になっている必要がある。
次にドリルのがチューブ内の遊び(ガタツキ)がどの程度かによって誤差が決まる。
というわけで、格安セットもあるんだけど、この辺の誤差はピンキリらしい。
ここは信頼性の面でもスターエム一択でいいと思う。
もう一ついい所が、脱着のチャック形式がスーパークイックなところ。
写真のようにプラスドライバービットに対して取り付ける、このとき樹脂部分を持っていれば、一切スライドさせることなく脱着できる。

下穴、ビス留めの交互作業が必要になった時でもかなりスピーディー。
これは以前の記事↓で紹介したダブルビットジョイントと同じ構造。
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使い分け
スターエムのセンター一発は、ドリルの径によって4つのサイズバリエーションがある。
どのような用途で使い分ければいいかは下を参考に。ネジ寸法は呼び径。
- L - 3.2mm - キャスターネジ等、5mm程のかなり太いネジ
- M - 2.8mm - 丁番、スライドレール等で頻用する4.0mm程度のタッピングネジ
- S - 2.4mm - 3.8mmの一般コースレッドや3.5mmのタッピングネジ
- SS - 2.0mm - 3.3mmの軸細コースレッド等
僕が持っているのは2.8mmのMサイズと、2.0mmのSSサイズで、まさに上に書いた用途通りの使い分けをしている。
でもSサイズが一番汎用性が高いと思う。
(ネジに対する下穴の太さの考えは、下の方の項目でまとめてある。)
自分は手に持ってグッと押し付けて、センターに簡単な印をつけたり、みたいなイレギュラーなこともしてる。

皿取錐(さらとりきり)

皿取りとは 皿頭のネジが綺麗に収まるようにする加工のことで、こいつは下穴と同時に皿取りをしてくれる。

さらに深く掘ることで木栓をしたい時の下穴としても使える。
ちなみに皿取り専用の道具は他にもあるんだけど、諸事情あって下穴同時加工の皿取錐の方が上手くいきやすい。
利点

同時加工には下のような利点がある。
- 下穴と皿取りのセンターが完全に一致する。
- 高速回転で皿取り加工ができるのでバリが出にくい。
もしも下穴を先に開け、後で皿取りをしようとすると、どうしても材料に刃を当てた状態で回転をスタートさせる必要がある。(ボール盤なら色々できるけど)
これによって起こる失敗は、例えばこんな感じ。


バリが出た。
というわけで、スピードにおいても綺麗さにおいても、一体加工がベストだと思ってる。
ベストサイズ
用途によって変わると思うけど、個人的にベストサイズと思って購入したのは、下穴径3mm、皿取り径9mmの「3x9タイプ」。
9mmの皿取りは、普段使いするビスの最大頭径(コースレッドの頭は8mmちょっと)が綺麗に収まる。
ドリルは先細りで、最大が3mmなので、スリムビスにも大き過ぎることはない。
バリエーションは以下の通り。
- 3x8
- 3x9
- 3.5x10
- 4x10.5
- 4x12
ちなみに埋め木の材料を取るための「埋木錐」セットもある。
思想的な問題で僕は埋め木をすることがほとんど無い。うーんだってなんか見た目が嫌い。
と言っておきながら将来使うこともあるかもしれないので一応リンクを貼っておく。
ちなみに500円多く出せばハイスバージョンもある。
ハイスとは超簡単に言えば「とても硬い鋼」なのでよく切れる。
切断面も綺麗になるし、堅木での使用も多いのでこっちにしとけばよかった(ホムセンになかった)。別に普通鋼で文句があるわけじゃないけど。
ドリルストッパーと相性が良すぎる

というか無いと均一に掘るのは無理なんじゃ無いか。
一応、皿取り刃が当たった時点で負荷がかかって減速するので、無くてもそこそこ合わせられるけど、正確には無理。
あれば思考停止でガンガン掘れる。
3x9を使う時、普通のコースレッドなら皿取りがぴったり収まるように設定すれば良く、スリムなら少し控えめで設定する。
自分は昔買ったSK11のものも持っているけど、9mmだけスターエムのものを持っている。
どちらもちゃんと止まるけど、スターエムのは樹脂製、かつ空転するので材料を傷つけにくいのがポイント。
下穴の深さは調整できる
下穴刃と皿取り刃は実は分離できて、ごく僅かな深さの調整はできる。
実際測ってみると最短で皿取り刃の最新部から先端まで23mm程度。最長でも26mm程度かな。
なので割れ対策として、さらに深い下穴が必要であれば、次のようなキリで事後加工が必要になる。
木工用下穴錐(先細り)
先端が細くなっていく錐状になっているため、コースレッドや木の特性に即した形状とも言える。

3mmサイズと書いてあれば、最大サイズが3mmで先端はさらに細いということ。
ただ、もちろん深さによって太さが変わるし、浅く開けるときには穴が小さ過ぎたりするので、メインで使うなら複数サイズがあった方がいい。
下穴径を「いくら」と決めて加工しようと思っても難しいので、「ビスの呼び径より細い程度」で使い分けて問題ないと思う。
軸細コースレッド(スリム)なら3mm、普通のコースレッドなら3mmか4mmくらいのイメージ。
実際使うと、先細りなので思ったより進まないと感じると思う。
なのでサクサク開けるには、やっぱりハイス鋼の方がいい。
有名メーカーの普通鋼のものより、格安のSK11ハイス鋼セットの方が普通に切れるので、メーカーにこだわる必要もないと思う。
Amazonレビュー見てると折れるって書いてるけど、そりゃまあ細いので簡単に折れると思う。
下穴加工は2mm台の鉄工ドリルでも代用できるというのは、よく言われていることだけど、こっちの方が尖ってて滑りにくいのでセンターはしっかり出せると思う。
でも自分はなんだかんだ均一な太さで掘りたいと思うので、鉄工ドリルをよく使ってるかな。(激安のセットやダイソー)
2mmのドリルなんかは短すぎることもあるのでケースバイケース。
下穴のサイズの考え方
大き過ぎれば効きが悪く、小さすぎれば割れることもある。
正直そこまで深く考える必要はないと思うんだけど、具体的な指標が欲しいなって時は、ビスの軸の太さを参考に考えれば良い。
ここで言う軸とはこの一番細くなっている部分。


写真は呼び径4.2mmのコースレッドで、軸部分は2.7mm。
ここの太さを下穴の最低サイズと考えておけば、そこそこうまく行くと思う。
柔らかい木ならこのサイズでキツめに収まるけど、硬い木なら深さによってはビスがねじ切られるので、0.5とか大きい下穴を開ける。
鬼目ナットを仕込む下穴なんかもこの辺の太さは参考になる。
ちなみに「呼び径」とはネジの最も太い部分なので、呼び径に近づくほどガバガバになり、超えるとすっぽ抜ける。

呼び径と軸の太さはネジの種類によってマチマチなので、呼び径で何もかもわかるわけではない。
コースレッド別の目安(参考)
コースレッドは大体長さによって太さがいくつかあるので、軸径の目安を書いておく。
一般コースレッドだと呼び3.8mmで2.5mm、4.5mmで3.0mm程度。
軸細コースレッド(スリム)なら呼び3.3mmで2.0mm、3.8mmで2.5mm程度。
この数値を基準に、木の硬さによって太くしたりする。
ただし、下穴を開ける必要がないシーンだってたくさんある。
特に軸細のスリムなんかは、割れ防止のための先端加工(先割れ)が施されているものも多いし、そもそも下穴が無い方がビスの効きは良くなると考えられる。
だからってバシバシ打ってると、端っこはやっぱり割れる。
なんていうか、ケースバイケースとしか言いようがないよね。
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