これはオタク専用ディスクサンダー。0.1mmのスキマを見て心神喪失状態に陥ったり、1日50回くらい「完璧」って言葉を使ってしまう、ちょっとアレな人におすすめしたい。
汎用性が高く、設計次第で3次元加工なんかもできる凄い道具なんだけど、基本的には「0を1」にする道具ではなく「9を10」に近づける道具だと僕は思ってる。
必要ない人にはまったく必要無いだろう、でも僕のオタクじみた記事を読んでくれてるオタクには必要な場合も多いかもしれない。
精度の高い大型木工機械を持たざるもへの救済装置。個人的に木口の直角精度はほぼこいつに依存している。
Contents
プロクソンDS250の唯一無二ポイント

こいつの精密加工は、よくあるベルトディスクサンダーの横っちょのディスクでは不可能な加工だと言っておきたい。盤面の構造が違う。
DS250は客観的に見ても高精度な研磨ができるんです、あなたとは違うんです。
他の工具の紹介やレビューをするときには大体他の商品との比較解説という体をとってるんだけど、少なくともDS250に関しては比較対象が存在しない。まさに唯一無二。
決定的な違いは盤面の構造にある。
一般的なベルトディスクサンダーは、適当な盤面にマジックテープ(ベルクロ)でサンドペーパーを貼り付けるようになっている。
つまり加工面に1mm程度のクッションが施されているも同然なので、垂直に材料を押し当てたとしても、宇宙の法則に従って加工面は球面ないし曲面になる。
クッション付きのサンダーでピシッとした平面を作ろうなんて、ちゃんちゃらおかしいわけですわよね。
もし留め加工で額縁を作ろうとしたとして、こいつで微調整だ!なんて考えはよした方がいい。君の悲しむ顔は見たくない。
DS250はごく単純な方法でこの悲しみを克服している。すごいな、どうやったんだ。
「粘着シートで貼り付ける。」
アルミ削り出しの平滑な円盤を用意して、厚みの出にくい粘着シートにて専用ペーパーを貼る。
このひと工夫だけでDS250はただただ完璧を追求する、なんかヤバいマシンとして市場に生まれ落ちたわけだ。
プロクソンDS250の特徴 「木口の番人」
というわけで以下の2点がプロクソンディスクサンダーの真骨頂だと思う。
- 切断面を完璧な平面に整える
- かつ、完璧な角度に調整する
この精度が、木工遊びのあらゆるシーンに精度を与えてくれて、製作物のスキマがとにかく減る。
サンダーは基本的に表面の仕上げに使うものが多いけど、こいつは造形の精度にガチで関わってくる。
主にチップソーなんかで切断したものの2次加工が主戦場で、まさに木口の番人。
具体的にどんなベネフィットがあるかは後述するので、まずは関連するその他の機能と特性について。
- 角度を二軸で調整できる
- ゆえに正確な3次元加工が可能
- 速度調整できる
- デカい物も加工できる
- マンションで使える超静音
- 回転速度が遅い
二軸傾斜やら3次元加工ってのは、こっちに斜めにしてさらにあっちに斜めにするといった感じで、どえらい高度な加工と言って良い。
この形状を取り入れた加工に挑むDIYerはまれだと思う。特にCADがなければこの設計はめっちゃムズイ。
しかし「やろうと思えばできる」ということは大きなアドバンテージ。
昔、ジグを作ってテーブルソーで二軸傾斜切りに挑戦したことがあるけど、完璧ではなく大体だった。
そのときにこいつを持っていれば「完璧」に近づくことができただろうね。
プロクソンDS250の構造と使い方
さらっと基本構造について説明したい。

姿はこんな感じ、ペーパーを貼り付けた盤面があり、上下(X軸)に傾斜可能なアルミ押し出しのテーブル、ABS樹脂製と思われるマイターゲージがついている。

これらをガイドにして材料を盤面に押し当て、研磨するのが基本的な使い方。

側面から見るとテーブル傾斜機構が備わっているのがわかる、固定は左右のネジ2点で行う。
マイター含めてこの辺の保持力は十分だがアルミのテーブルは前後方向にやや弱い。個体差と思われるがこれについて少し問題があったので後で説明する。

裏側には集塵接続口があり、付属のアダプタはリョービ集塵機の標準ホース(VCシリーズ)が問題なく直結可能。
黄色いのは速度調整ダイヤルで、その左が電源スイッチだ。位置関係は作業しながらでも問題なく調整でき、ストレスを感じたことはない。
自分の使用環境では集塵は横抜きの方がよかった。


盤面の周囲の黒いカバーは取り外すことができる。

取り外すと盤面の左右が空いて干渉するものがなくなるので、使い方の幅が広がり、集塵効率は落ちる。
大した問題はないので常に外している。
と言った感じで基本設計に改善すべき点はさほど見当たらない。
細かいものを精密に研磨するために作られた道具なんだなあと感じる。
完璧な接合を目指す必需品
汎用性が高くさまざまなことに使えるんだけど、ここで説明するのは非常に限られた加工の話。でも自分はこのためだけに買ったとも言える。
木口の切断面をここまで簡単かつ精密に削れる道具は他に見当たらないし、木口を突き付ける接合はこいつがないとやっていけない。(依存患者)
額縁などの留継ぎ


留め継ぎの難しさ=隙間が空く率の高さには多くの人が苦しめられていると思う。
まあどのレベルから隙間が空いていると判断するかはオタクレベルに思うけど、なるべく簡易な方法で限界まで精度を出したいと思うよね。
一次加工は手鋸でもスライドでもいいと思うけど、精度の高い昇降盤(テーブルソー)とか持ってない限り、二次加工が必要になると思う。というか必要だと思う人に向けての話なんだけど。
留め専用の削り台なんかを作ってもいいと思うけど、作るの難しそうだし、頑張っても速攻狂いそうだし、DS250でやってしまう方が精密、簡易だと思うの。
もちろん角度の設定で本体の目盛りを使うことは一切ない。シンワの止型スコヤさんの出番。

たぶん接合面の美しさに惚れ惚れすると思うね。マジで中毒性がある。
しかし留め継ぎ、これでも一発で決まるとは限らない。0.1度以下のズレでも僅かに空くんじゃないかな。
そもそもガイドが当たってる面が直線なのかとかいう話にもなる。
どこまで追求するかは自分次第。
まあその辺に売ってる市販の額縁もバリバリ隙間空いてるし。(まずは隙間の定義から始めようか)
これ作ったときの記事はこちら↓
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額縁初めて作ったけど結構難しい。ナナメにくっつける留め継ぎが難しい。しかしながら、DIY的にはそこまでの精度を求める必要もないだろうし、道具 ...
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突きつけの木口



この突き付け接合はビスケットなんだけど、一体的に見せたいこの造形で隙間が空いてしまっては、お婿に行けなくなるので特に神経質に加工した。
いやこれのどこが難しいのか?と思われるかもしれないけど、木口側の尖った部分は丸ノコなどのチップソーでカットしようとすると跳ね飛ぶ可能性があるので余裕を持ってカットしてある。
ハイエンドだとしても所詮はスライド丸ノコ、可動部位の少ないテーブルソーならまだしも、負荷がかかる瞬間には間違いなく微細な左右ブレが起こる。つまり隙間ができる。そしてそれは楢などの硬い木であるほど誤魔化しが効かない。
なので普段から突き付けの木口はわずかに余裕を見てカットして、ディスクサンダーで本来のカットラインまで攻めるようにしてる。
こう書くと面倒臭そうだけど、意外とそんなこともなくむしろ気持ちいい。中毒者ってそういうもんだよな。
ちなみに「余裕を見てカットして後で攻める」というのはチップソーだと外に逃げる力が働くような感じがあって結構難しい、丸ノコとか特に。
木口でなければ、カンナやら棒巻きペーパーやら手技で十分調整できるけど、狭い上に硬い木口は特に難しく、一歩間違えれば丸くなってしまうので削りジグが必須。
ディスクサンダーで攻めた方が効率も直角精度も平面精度も間違いなく高い。
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そもそも汎用性が高すぎる
しょぼいディスクサンダーでも使ったことある人ならわかると思うけど、そもそもディスクサンダーという工具自体めちゃくちゃ汎用性が高い。
円盤みたいな曲線切りの仕上げなんかはもちろん、ちょっとした削り、金属のバリ取り、あらゆるシーンでスイッチを入れることになると思う。
平面精度の高さゆえに何を削ってもとにかく綺麗、露出する木口面なんかもこいつを一発かければ抜群に綺麗になるし、細かいパーツを作る時なんかも特に大活躍する。
回転数をかなり遅くすることができるので、削りすぎることも少ない。

円盤や曲線の加工をするときはバンドソーと合わせて使うことでまさしくパーフェクトな加工ができる。
これも記事にしてるので参考にして欲しい。
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これを作る時に金属加工も含めてめちゃくちゃ活躍したから記事にした。
円錐形のノブなんかほんと簡単に作れる。
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2軸傾斜による3次元加工
3次元加工とか言われても、斜めにして斜めにするとか言われても意味不明だと思うので下の絵を見て欲しい。

これは四方転びと呼ばれる形状で、木で作ろうと思うとめっちゃ難しい、ぱっと見で難しさが伝わるかわからないんだけど、設計自体が難しい。
何が難しいかというと接合面のカット角度がが二軸傾斜角度になる。↓

二軸傾斜は「はいχ度です」と説明できない。
図の通りではあるもののもうちょっと説明してみる。
下の図が一軸の傾斜だ。

色が濃い部分がカットする部分、ここまではとても簡単。一方向に回転させるだけなので誰もがやったことあると思う。
平面上で全て説明ができる2次元的な加工なので理解もしやすい。
ここからさらに別の軸で回転を加えると二軸傾斜となり、この世界が3次元であると知る。

ハイ意味不明。
なんとも感覚的な理解が難しい、我ながら意味不明だし、この説明図作るだけでもかなり苦労している。
この設計をCAD無しでやるのって、計算式知らないとマジでむずいと思うよ。知らんけど。
逆に言えばCAD上でいろいろ考えてたら気合いでなんとかなるのでCADって大事だと思う。言ってしまえばCADは工具のひとつ。
DS250でこの二軸傾斜を行うと下の図のようになる。

二軸傾斜は椅子やテーブルの脚なんかを作る時にも設計によっては自然と出てきたりする。
あ、こうやったら2軸傾斜になってしまうなー、カットむずいしやめとこかなー、みたいな感じ。
そんな時も加工角度さえ導き出すことができればなんのジグもなく加工することができる。
そうそう、二軸傾斜のカット自体はジグを用意すればテーブルソーでもできるんだけど(精度出すのめっちゃむずいけど)、ジグをいっさい使わずに正確な加工ができるというのがこのDS250の凄いところだと思う。
ちなみに角度出しにはデジタル角度計みたいなものが必要。いろんなシーンで自在角度のサシガネみたいに使えるので安物でも持っておいて損はない。
面倒くさいし作ってないけど、ウッドロードさんにて実際作ってるすげえ参考になる動画があるので興味があればどうぞ。9分20秒くらいから。
僕もこの動画を見て買った。
デカい面の加工も可能

盤面は直径250mmなのでその幅までの加工が可能。
実用的には左面を使って100mm以内のものを削るのがいいと思う。
一般的なベルトディスクサンダーが150mm程度なのでだいぶデカい。
しかしデカいものには向かない
あいにくテーブルの奥行きは120mmしかないのです。そうこれは小細工専用の工具なのです。
長さ400mmくらいまでの材料なら重さにもよるけど問題なく削れると思う。
でもそれを超えてくると辛い。重さで垂れる。僕は700mmくらいのテーブル脚とかも気合いで削るけど、その辺が限界じゃないかな。
速度調整と最高速度
280〜480回転/分の間で調整できる。ところでこの回転速度は一般のベルトディスクサンダーが3000回転程度なのに比較してすこぶる遅い。
盤面がデカい分だけ外周の速度は早くなるため、数値よりは早いけど実質1/5程度だと思う。
要するに繊細な加工をするための工具なので、これをもって遅くて使いにくいというのはお門違いだと思う。
なのでカトラリーなんかを作るときの荒加工なんかには向かない、バンドソーやスライド丸鋸なんかで荒加工した後の仕上げ加工のためのものと考えた方が仲良くやっていけると思う。
マンションで使えるほど静か

その回転の遅さもあって静音性は抜群。
最低にすればインパクトやドリルの通常回転より少し静かなんじゃないかと思う。
夜に回すのは流石にどうかと思うけど、ゴムでも敷いて使うとしたら日中使ってて文句を言われる筋合いはないと思う。
まさに内職向けデスクトップ工具。
ペーパーの交換と種類
ペーパーはもちろん専用品でAmazonで翌日配達してもらえるので手に入らなくて困ることはないと思う。
ラインナップは#80, #150, #240。それぞれ3枚入りで1,500円から2,000円程度。高いけど交換頻度はマジで少ない。僕は1年で3枚使い切らないかも。
#80は使ってない。(個人の見解)
交換はこんなふうに六角レンチでボルト2本を緩めてフロント部分を外す。

このときボルトは緩めるだけなので無くす心配がなく、この辺には設計の工夫を感じさせられる。
あとはペーパーをペロリンと剥がして張り替えるだけ。

まだ使う場合は下の写真のような専用シート(本体付属)に貼り付けて保管するようになっている。

テーブル歪んでたぞ
冒頭で述べたようにアルミ押し出しの天板は左右には強いが前後方向の力に弱い。
あろうことか精密が売りのDS250の高精度であるべきテーブルは買った時から前に垂れていた。


というわけで写真のように木口テープを貼り合わせて調整している。
個体差なんだろうなあ、レビューを見てもそんな書き込みはないし、購入当初に連絡を入れれば交換してくれたんじゃないかと思ってる。
それでも十分に精度の高い加工ができてるし、なくなったら禁断症状が出るので素晴らしい商品であることは確か。
なかったら後悔するもの
DS250を生かすために欲しい道具は結構ある。
まず必ず必要なのはこの止め型スコヤ。こいつがないと一切精度を出すことができない。
次にペーパーの目詰まりをとるゴム的なもの。これがないとかストレスがやばい。めっちゃ気持ちいいから常に隣に置いておこう。
上にもあげたデジタル角度計、いらない人はいらない。僕はこの安物使ってるけど、ガチで四方転び作ろうと思ったらもう少し高いの買うかもね。
曲面を切るときはバンドソーでカットしてディスクサンダーで仕上げるのが基本じゃない?主観だけど相性がめっちゃいい工具。
プロクソンのバンドソーはコスパ悪し、速度遅しで木工向けじゃないのでリョービを勧める。レビュー記事もあるよ。
ジグソー、糸鋸盤でもいけるけど作業効率がダンチ。
大型木工機械があればお役御免かも
切断面の精度の調整という点では、高精度の加工が可能な切断機械があれば必要ないだろうね。
木工所でよく使われてる昇降盤とか、キャビネットソーと呼ばれる大型テーブルソーみたいな、プロ御用達のヘビー級木工機械の事。
加工サイズの限界で言っても圧倒的にそっちの方が優れている。
まあ、ちっちゃい箱とか、細々した手工芸品的なものを作るにはDS250もバリバリ活躍してくれると思う。
そもそもプロクソンというメーカー自体がその辺を守備範囲としているしね。
プロクソン(PROXXON)はルクセンブルクの精密工具メーカー
ところでプロクソンって何奴?僕も全然知らなかったので調べてみた。
本社はルクセンブルクで総務機能、設計、製造ともにこちらのようだ。営業拠点はルクセンブルク国境にほど近いドイツのフェーレンというところにある。
主なラインナップは金属を相手にした精密工具で、フライス盤やら旋盤やらいろいろ扱ってる。
面白いのが、どの機械も小さい、小さい、小さい。デスクトップツールばかり。
本国ホームページにも記載があるんだけど、時計、メガネなんかの精密細工系のデスクワーク職人御用達のメーカーのようだ。
ちなみに日本国内向けの輸入代理店はキソパワーツールで、かなりのラインナップを日本に引っ張ってくださっている。
感謝!