正確な穴を開けるためにはボール盤が不可欠だけど、DIY用として市販されてるボール盤は木材加工という点で使い勝手がいいとは言えない。
複数の材料に正確かつスピーディに穴を開けるためには、材料を決められた位置でしっかり維持する機能が必要。というかそれだけあればいい。
その一式を「ボール盤テーブル」とかいうチープな呼称の装置に集約する。
今回ベースにしたのはタカギのボール盤。
やすい、やすい、やすい。
新しく買うならあと8000円出して昇降のグルグルついてるやつを買うのをお勧めする。
その辺りの機種の比較は別記事でまとめてあるので参考に。
ラックピニオン昇降のボール盤オススメ5選を徹底比較【無敵のGTTB-16G】
3万3000円で最強の大型ボール盤を手に入れた。その名もアークランズのグレートツール(別名WIZA)ブランドのGTTB-16G。 結構前から ...
続きを見る
Contents
作業工程は動画で解説
ブログの方では考え方とか図面とかその辺について解説する。
見ればわかる人は動画だけ見てくれたら早い。
ボール盤テーブルに望む役割
ちょっと眠くなる話をしたいので、モノだけ見たい人は適当にスクロールして飛ばしてくれたらいい。
据え置き工具のジグ設計は「加工側」と「材料側」の2つに分けて考えると良いと思う。
加工側と材料側の位置関係が変化することで材料の加工が完了する。
・テーブルソーならば加工側が固定されていて材料側がY軸に移動する。
・ボール盤は材料側が固定されていて加工側がZ軸に移動する。
ボール盤において、加工側の動きは最初から備わっている。(はず)
なのでテーブルは"材料側の固定機能=自由度を拘束する事"に終始すればいい。
小難しい言い回しをしているようだけど、感覚を超える複雑なジグを作ろうとするほど、要素を分解して体系化していくことが必要になると思う。
そうしないと発展性が無い気がする。
6軸の自由度の拘束
今どきの加工機なんか調べていると3軸とか5軸とかよく聞くんだけど理解が及んでいなかった。
なのですごく調べた。
そしてこの概念はめっちゃ重要だと思った。
今も完全に理解したわけではないけど、ものの加工に必要な動作は6軸で説明できることはわかった。
これが何かというと
X,Y,Zの3軸方向の「移動」
それらを軸とした3軸の「回転」
3+3=6軸
この概念を6DoF(six degrees of freedom)と言う。(呼び名はどうでもいい)
例えば人が刃物を持って木材をくりぬいていく動作は基本的に「加工側の動作が6軸に自由」だ。
材料側が完全に固定されていたとしても合計で6軸、なので両者の関係性は完全にフリー。
あたりまえだけど、これじゃ直線直角な機械的加工はできない。
自由度が高いと正確な加工ができない。
なので定規になるような木をあてがったりして、動きの自由度を制限してやる必要がある。
ボール盤においては「加工側の自由度」は最初からZ移動だけの1軸。
あとは「材料側の自由度」を任意の位置でゼロにできるようにしてやればいい。
言い換えれば6軸を拘束する機能を持たせるという事。
「真っ直ぐ下すキリに対して材料を固定しろ」というすごく単純な話も、どこまでも理屈っぽく、眠たい話になることがわかってもらえたと思う。
でも世界は理屈っぽいからしょうがないよね。
だから毎日眠たいんだと思う。
マテリアル プリズン -拘束する盤面- とは?
実はボール盤の盤面(平面)に置かれた材料はその時点で3軸の自由度を奪われている。
Z軸の移動 と X軸の回転 と Y軸の回転だ。
残りの3軸の動きは手で抑える摩擦力だけでもある程度奪うことができる。なのでそのままでも使えてきたわけ。
でもそれじゃずれたりするから残りの3つもしっかり拘束したい、というのが今回のボール盤テーブルに求められる機能。
なので具体的に以下の機能を持たせる。
- 大きな平面(3軸) → Z移動・X回転・Y回転のより安定した拘束
- フェンス(2軸) → Y移動・Z回転の拘束
- サブフェンス(1軸) → X移動の拘束
この3つの調整と固定をしっかり行うことができれば、マテリアル プリズン -拘束する盤面- が発動する。
完成形はこちら。
説明は理屈っぽくても出来上がるものは単純だ。
まああとはこの機能を満たすための材料を選定し、あったら便利な他の機能も付随させていく。
みたいな感じで作った。
用意した材料
アルミフレームというDIYに最適すぎる材料を知ってるだろうか。
数年前仕事でロボットメーカーとちょい関わった時に知ったんだけどこの材料はすごく使える。
見た目の通りそこそこ精度もいい、Tスロットと同じようにアタッチメントの取り付けも簡易、何よりめちゃくちゃ安い。
ミスミというところで買える。送料も単品から全て無料、素晴らしすぎる。ECサイトとしての設計も最高。機械設計についても勉強したくなると思う。
ミスミ製品だとM6の入るサイズを買っとけば一般的なTスロットパーツと互換性がある。M5サイズは合わなかった。
実際の値段はこんな感じ。もちろん長いともっと安くなる。
- 30x60x450mm アルミフレーム ¥520
- 12x20x250mm ブラケットフレーム ¥170 x2
- アルミフレーム用ボルトナット
- 盤固定用ボルトナット
- 24x400x250mm 針葉樹合板 x2
盤面パーツとして針葉樹合板を選んだけどこれは良くなかった。
MDFとか、高いけど平面性の高いバーチ合板とか使った方がいいと思う。
僕は居住エリアの問題でバーチ合板が手に入らなかったのでアピトン合板というのを買った。
今後精度を出したいジグや家具なんかに使っていく。
大きな平面(盤面)
大きいと言ってもそこまで大きくない。
作業場は限られているし、大きすぎると端っこが垂れると思ったし。
図面と言ってもこのくらいしかない。
単純なジグだしね。
盤面はこのような感じで2枚で作った。
下のパーツに元の盤面にぴったり合うような切り欠きを入れて、上の盤面と貼り合わせる。
あとははめこみ、裏からボルトで締めるだけ。
図面に点線で書いた丸穴が四つあるけど、裏側から穴をザグリ開けて鬼目ナットを仕込んでいる。
同じボール盤を使ってる人なら同じ寸法で多分いける。
この盤面は加工方向に対する垂直を出す役割もある。
だって買った状態の盤面は垂直とは言えなかったんだからしょうがないね。
(1°以下だったので文句は言わないけど深い穴は1ミリ以上ずれる)
垂直を出す方法は下の盤面に小口テープを貼るとかいう原始的な方法。
そのチェックや作業的なところは動画を参考にしてくれたらと思う。
いくつか工夫したポイントがあって、まず中心の穴に埋める丸プレート(ただの板)はボール盤の加工中心からずらしてある。
こうすることによって、この円盤を回転させれば下敷きとしてだいぶ長く使える。
またこの穴はφ80mmのホールソーでくり抜いた円盤をそのまま使えるサイズにしてあるので、簡単に作ってストックしておける。
盤面のレールは極めてスタンダード。
フェンスを始め、ホールドダウンクランプなど材固定のためのアタッチメントが自在につけれる。
ただしクランプなんかを強くかけると、持ち上げて引き剥がす力が発生するのでウルトラSUを併用してビスも多めに止めてある。
さらにこの幅を広く取りすぎると、小さい材料を加工する時ホールダウンクランプが届かなくなる可能性があるで注意。
フェンス
フェンスにアルミフレームを使ったのはJSK工房さんを参考にした。
加工不要で拡張能力がハンパない。これは様々なところに使える。
サブフェンスはその辺の端材をねじ込んだけど、これは円形のものもあってもいいと思う。接点が点であれば直角に設置する必要もないので。
ただの盤面にこのフェンスが設置されるだけで、同サイズの連続加工がめちゃくちゃ楽になる。
ほんとジグづくりって大事。
あまりにも単純だけど集塵アタッチメントも取り付けられるようにした。
集塵アタッチメント
こいつはフェンスに取り付けて集塵ホースをぶっ刺して使う極めて原始的な装置。
とりあえず作っとこうって感じで作ったけど案外使いやすい。
ホースの差し込み具合と先っぽにアダプタをつけたりして長さも調節できる。
まあ角度も変えれたらよかったんだけどね。
メープルの端材で作ったのでそう簡単には折れたりしないと思う。
場合によってはこんな感じでテーブルのレールに取り付けて使うこともできる。
そんな感じでめっちゃジグ作って行こうと思ってるんだけど、第一号はまあいい感じにできた。
天板の材料は気に入ってないから、今後はその辺も妥協なく作っていく予定。
続 ホールドダウンクランプも作った
こいつがいないとやってられないと噂のホールドダウンクランプも作った。
【作り方解説】Tスロットホールドダウンクランプ【図面と原理】自作ジグその2
今回のホールドダウンクランプは、Tスロットトラックを装備した盤面の専用クランプで、自作ボール盤テーブルをさらに強化するために作ってみた。 買 ...
続きを見る