3万3000円で最強の大型ボール盤を手に入れた。
その名もアークランズのグレートツール(別名WIZA)ブランドのGTTB-16G。
結構前から気になっていたんだけど情報が少なすぎて躊躇していたけど、買ったらやっぱり最強だったので、競合と徹底比較してこいつの素晴らしさを世界に広めたいと思う。
なんとも怪しい感じがするけどアークランズ株式会社はホームセンタービバホームとかムサシを運営する会社で、グレートツール(WIZA)はプライベートブランドといったところで、保証もしっかりしてくれると思う。(自分はここのデジタルノギスを愛用してる。)
執筆時点で各店舗で値上げの気配がある。値付けを間違ってたんじゃないかと思う。
Contents
しょぼいボール盤の悩み
前使っていたのはテーブルスライド式の高儀のBB250-Aだけど正直同価格帯においても見劣りするのでお勧めしない。
この価格帯ならSK11がコスパ最強だと思う。
BB-250Aを使ってて困ったポイントをいくつか書くと。
- パワー不足
- 剛性不足
- 使いにくい
これでもしっかり役に立ってくれたけど30mm程度のボアビットでストップしてしまうパワー不足と、高負荷をかけると感じるわずかなテーブルのしなり。
可動域の狭さやテーブル昇降の手間など全てにおいてワンランク上が欲しくなった。
そこで選択肢に入れたのがラックピニオン方式。
ラックピニオンクラスのボール盤→猛者揃い
ボール盤は一定のレベルを超えるとテーブル昇降がレバーで行えるラックピニオン昇降方式になる。
手でギシギシ昇降させるよりもレバーで素早く思った位置に調整できる恩恵は非常に大きい。
そしてこのクラスになるとパワーもサイズもある程度大型化するので、利便性だけではなく加工能力も飛躍的にアップする
見てわかるデカさの違い。
そして、デカくてもあまり横のスペースは取らない、それボール盤のいい所だけど、このクラスの問題がコスト。
相場15,000円くらいのものが一気に50,000円クラスになってしまう。
そんな金は出したくなかったので出さずに手に入れたのがGTTB-16Gだ。コストとスペックを比較してみたい。
スペックを見ろ【徹底比較】
自分にとって道具選びとPC選びは常にスペックが全て。(たまに見た目のかっこよさに揺さぶられる。)
GT(WIZA) GTTB-16G | SK11 SDP-600V | 京セラ TB-2131 | 高儀 BB-300A | イリイ TR-307ED | (先代)高儀 BB-250A | |
---|---|---|---|---|---|---|
消費電力(W)(50Hz,60Hz) | 550,580 | 600 | - | 300,330 | 375 | 260,290 |
定格出力(W) | - | - | 190 | 180 | - | 130 |
ドリルチャック(mm) | 1.0-16 | 1.5-13 | 1.5-13 | 1.5-13 | 1.5-13 | 1.5-13 |
最大ストローク(mm) | 80 | 60 | 60 | 50 | 65 | 50 |
フトコロ寸法(mm) | 160 | 125 | 125 | 130 | 135 | 100 |
テーブルチャック間(mm) | 360 | 280 | 250 | 310 | 180 | |
ベースチャック間(mm) | 540 | 390 | 370 | 410 | 265 | |
最大穴あけ(mm)(鉄工) | 16 | 13 | 13 | 13 | 13 | |
テーブルサイズ(mm) | 250x250 | 205x205 | 196x213 | 190x165 | 200x200 | 160x165 |
深さ調整機能 | ワンタッチ | ナット式 | ナット式 | ナット式 | ワンタッチ | ナット式 |
回転数min-1(50Hz時) | 180-2770,16段 | 580-2650,5段 | 450-3000,5段 | 460-2480,5段, | 620-2620,5段 | 500-2500,5段 |
横幅x奥行きx高さ(mm) | 330x585x980 | 265x440x750 | 260x460x720 | 275x480x730 | ?x?x680 | 215x430x580 |
重量(kg) | 42kg | 29kg | 34kg | 22kg | 27kg | 16kg |
税込実勢価格(円) | 33,000 | 51,500 | 48,000 | 21,500 | 30,000 | 15,000 |
DIY市場の雰囲気としてはSK11と京セラが一般的な比較対象になっていて、イリイがマイナーどころ、高儀が安物ハンターのおやつって所だと思う。
自分が密かに思いを寄せるGT(アークランズ)は隠しキャラといった印象。
その隠しキャラのスペックはもはや同水準というか、もうワンランク上と言わざるを得ない。
ならば価格は60,000超えててもおかしくないと思うんだけどその半額で手に入るのが隠しキャラである所以。
力こそパワーである証明
GT(WIZA) GTTB-16G | SK11 SDP-600V | 京セラ TB-2131 | 高儀 BB-300A | イリイ TR-307ED | |
---|---|---|---|---|---|
消費電力(50Hz,60Hz) | 550,580W | 600W | - | 300,330W | 375W |
定格出力 | - | - | 190W | 180W | - |
最大穴あけ(鉄工) | 16mm | 13mm | 13mm | 13mm | 13mm |
回転数(50Hz時),変速段数 | 180-2770min-1,16段 | 580-2650min-1,5段 | 450-3000min-1,5段 | 460-2480min-1,5段, | 620-2620,5段 |
モーターの出力は厄介なことに各社明記されていない。
「消費電力」は実際に見込まれる消費電力であって「定格出力」は内部ロスを含めた実際の出力なのでこの2つを同じ基として比較はできない。(間違ってたら教えて)
高儀だけ丁寧に「消費電力」と「定格出力」を明記してくれていて、ここからなんとなくボール盤のモーター効率がイメージできる。
一概には言えないけどざっくりとGTとSK11が同水準で、京セラ高儀イリイが同水準(少し差はあるけど)と考えてもいいかもしれない。
このようにモーターの出力は各社差があれど、最大穴あけ寸法(各社明記されていた鉄工で統一)ではGTが16mm、他が13mmと同じなのは回転数の下限によるものだと思う。
どの回転工具にも言えるけど、ドリルの径がデカいほど回転数は落とさなければならない。
これは回転する円は半径が大きいほど外周が速くなるからであって、180min-1まで落とせるGTが大きい穴を開けられるのは当然と言える。
試しに全く切れないと自分の中で話題になっていたホールソーで20mmのスギに100φの穴を開けてみるとノンストップで開いた。
24mmのMDFでも60mmくらいまでは難なく開いた。
先代のボール盤では40mmでも息切れしまくりだったのにこれは革命、力こそパワー。
ベルトは2本使って3軸で調整する16段変速。
そこまでいらんけど回転数を落とせるのは大事。
デカくて強い事による当たり前の利点
設置して使う機械全般に言えることだけど、デカくて重くて剛性が高いということは全ての加工に有利に働く。
デカさによって加工寸法の幅も広がり、剛性が高いことでブレやしなりによる誤差が減る。
コスト的に高儀のBB-300Aもなかなか素晴らしいと思うけど、感じたのがまさに剛性の不安。(上の写真は250Aとの比較)
写真で見るだけでもテーブルの厚みに大きな差があることがわかる。
重量も京セラ34kg、SK29kgに対して高儀は22kg。ちょっと軽すぎないか。
GTTB-16Gは42kg。これは工作機械的には正義を表す指標だ。
最大ストロークの汎用性
最大ストロークはチャックがいくら上下するかという点。
これはそのままどれだけ深い穴を掘れるか?に直結する。
他にもテーブル昇降が面倒臭い時になんとかなる寸法とも言える。
イリイが65mm、SKと京セラが60mm、高儀は50mm。
先代のBB-250Aも50mmだったのでこれでは進化がない。
だからGTの80mmは求めて当然と言ええる。
フトコロの正義
フトコロはチャックのセンターから支柱までの距離。
これはどれだけ大きな板に加工できるか、端からいくら奥まった所に加工できるかが決まる。
ラジアルボール盤が存在するようにこの寸法は人によっては一番大切かもしれない。
SKと京セラが125mm、高儀は130mm、イリイが135mmとほぼドングリs。
GTの165mmはボール盤テーブルにゴツいフェンスを設置したとしても彼らと同程度の加工ができる。
テーブルチャック間
テーブルチャック間というのはチャックからテーブルまでの上下の距離。ベースチャック間も同様。
この間が広いほど置ける材料のサイズが大きくなる。わかりやすく言えば材料を縦置きして木口などの端部に加工できる幅がひろがる。
細いものをガチで縦置きするならそれなりのジグが必要だけど、GTはテーブル間360mm,ベース間540mm。
これはドリルの長さを考慮しても椅子の脚程度の長さのものにも加工できることになる。
それぞれSKが280mm,390mm京セラが250mm370mm高儀は310mm410mm。イリイは不明だが他より高さが少し低い分短い可能性がある。
高儀がスペースを大きめに取れているのはベースやテーブルの厚みが影響しているように思う。
深さ調整の速度
どのボール盤にも加工を途中で止めるためのストッパ機能が付いている。
一定の深さの穴をたくさん開けたい時とかに使えるんだけど、ほとんどの機種は二つのナットを締め込んで位置を決めるものがほとんど。
この調整は正直かなり面倒くさいので、本気で必要なときしか使っていなかったんだけど、GTTB-16Gは深さダイヤルを回して蝶ボルトを締め込むだけで指定できるのでこの機能をめっちゃ使うようになる。
さらに指定の深さでチャックの高さをロックすることもできるので加工の幅は大いに広がる。
実はこの機構はイリイも同じ、後で触れるけどイリイとGTはパーツ単位で同じものを使っているところがしばしば見受けられる。
テーブルサイズと精度
GTが□250mmで他はおおむね□200mm前後。
テーブルのサイズも当然でかい方がいい。
大きな材料を乗せれるから、というよりはデカいボール盤テーブルを乗せても安定させやすいからだ。
ボール盤のテーブルはほとんどがバイスで材料を固定する鉄工主体で設計されているけど、木工で役に立つのはどちらかというとフェンスとクランプ機能なので、それらを仕込んだ木製テーブルを上から載せるというのが結構スタンダード。
下の記事は先代のボール盤テーブルを作った時の記事。
【固定治具】木工に最適なボール盤テーブルを作る【図面と考え】
正確な穴を開けるためにはボール盤が不可欠だけど、DIY用として市販されてるボール盤は木材加工という点で使い勝手がいいとは言えない。複数の材料 ...
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盤面の精度はというと中心部分が最大0.4mm程度凹んでいるといった所。先代の高儀は1mm近く狂っていた。
これをどうするかというと中心に0.1mmのマスキングテープを何枚か重ねておいて、上からテーブルをかぶせるだけで解消できる。
いつも書いてるけど平らな定盤の機械が数万で売ってるわけないので、クソみたいなクレームでメーカーを疲弊させるのは控えたい所。
気に食わなければ本体以上のお金を払ってフライス加工に出すという選択肢もある。
僕の場合はテーブルで問題になるのは平面性ではなく、プレス時の荷重でたわむことかな。
チャックと芯ブレ
使用されているチャックは1.0mmから16mmまでの把握能力がある。
持ってるもので一番太いのが12.7mm(1 inch)なので正直ここまで必要ない。
そして芯ブレは今の所一切なしと思えるレベル。8mmの竹用ドリルでギチギチ8mmの穴が開く。
ダイヤルゲージを注文中なので届いたら測ってみたい。
【追記】
ミツトヨの最安ダイヤルゲージが届いたので測ってみた。
8mmと12mmのシャフトを測定高を変えずに掴み直しながら三回測ったけど0.15〜0.25mmの間に収束する模様、目視と体感じゃ全くわからなかった、測定器すごい。
高儀BB-250Aもほぼ同じだった。
本体のスピンドル部で測ると0.03mm以下なので、チャックがわずかにブレてるのかもしれない。
マニアは芯ブレ0.08mm以下のユキワ製に交換するらしい。
パーツ的にはチャック - 仲介のチャックアーバ - 本体という感じでつながっていてそれぞれの接続部にはテーパの規格があり、本体側がMT2というのが重要。
例えば買い換えるならこのような組み合わせ。
ユキワの1.2mm-13mm対応チャックJT6+チャックアーバJT6-MT2。
今のところは交換する予定はない。
【追記】と見せかけてやっぱりしたので記事は以下
各種ボール盤のチャック交換方法&ユキワチャックで芯ブレ改善
ボール盤の芯ブレを簡単に改善する方法にはチャック交換という方法が手っ取り早い。 ただしチャックを交換するためには取り付けるところ、「テーパー ...
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フライス化、角のみ化、色々な可能性
トリマービットをボール盤に取り付けるというおかしな人が世の中には結構いるけど、自分もすでにこのボール盤を使って簡単な平面加工なんかをしたりしてる。
回転数が全く違うので6mmビットなんかは全く使い物にならないけど、3000min-1程度にすればデカい底切りビットをゆっくり送ることで結構綺麗な平面加工ができる。
もちろんこれらは本来の使い方ではなく、材料の固定をしっかりしないと危険。上の写真のような使い方はダメ。
そこで使えるのがフライステーブルやクロスバイスというもの。
これらは材料をX軸Y軸に水平移動させることで加工する装置なんだけど、装着するには広いフトコロとテーブルチャック間と耐荷重が必要なので、先代ではできなかった試み。
さらにボール盤を角のみ化するアタッチメントをつければ四角いほぞ穴を開けられるけど、角のみは縦の余裕がめっちゃ必要かつ圧力もすごいので剛性と高さが生きてくる。
GTに適応するのは下のもの。
とりあえずクロスバイスと角のみアタッチメントを買ってみたので後日また報告する。
選択基準
全ての人にGTTB-16Gが必要とは思わない。
実際のところ、高儀のBB-300Aはなかなかのお買い得商品で、初めてのボール盤を手に入れたいなら16000円程度の入門品ではなく21500円のこちらを買う方が、ラックピニオンの利便性もさることながら、そのサイズ的奥行きから圧倒的にできることが増える。
SK11と京セラは、コストと性能の両面で完全にGTに食われる形になっているので、よっぽどブランドに価値を感じられない限りなかなか選択肢に入らないんじゃないかな。モーターの面では京セラよりSK11だとは思うけど。
高儀よりも剛性を求めればイリイは十分選択肢に入る価格帯でもある。ただし高さ的な汎用性は少し減るのと、GTも価格で肉薄してるので差は小さい。
ラックピニオン式のボール盤を手に入れたいなら求めるレベルに応じて下のようになるというのが自分の考え。
GT>>>イリイ>高儀
デカいボール盤は夢が広がる。デカいのはいいぞ。