なぜ手鋸を使うのか?
単に丸ノコだと入らないところを切るとか、技術を習得したいとか色々あると思うけど、最大の価値は音が出ないことだと思う。
電動工具を一切使わずに完璧な直線カットできるなら、マンションなどでのDIYの制限を大幅に緩和できる。
今回は道具本来の使い方を捨てることから始める。いわゆる「正しいやり方」を疑ってかかろう。
Contents
手鋸の柄を持って真っ直ぐ切るなんて無理
まず初めにそんなの無理無理無理無理かたつむりだってことを認識したい。
どんな達人のノコギリよりも、素人が丸ノコで切った方が綺麗に切れるに決まってる(小声)。
ノコギリの柄を掴み、左右に一切ブレないように繰り返し動かすなんて技術は人間には習得できないと思う。
どんな加工も精度を求めるなら動きを直線に制限するガイドが必要。
ならばそれを作ればいいよね、ってなるはず。
基本形を作る
ノコギリの柄は確かに素早く切るには便利なものだけど、正確な加工ができるようにはできていないので基本的にはノミなどでのアフターフォローが必要。
今回とりあえず柄は取り外して替え刃だけ使う。
用意したもの

- ノコギリの替え刃
- 12x60x300のベニヤ2枚
- 厚紙0.6mm(ノコギリと同じ)
- 剥がせる両面テープ
ノコギリはなんでもいいけど、今回の使い方で汎用性が高くて使い勝手がいいのは曲線刃だと思う。
ベニヤ板はなるべく真っ直ぐであればなんでも。
厚紙はノコ刃近似でいいと思う。測るために0.01単位のデジノギスは必須。

両面テープはほんといつも使ってるやつ。
作る
まずベニヤの1枚に刃と厚紙を貼り付ける。


で、もう一枚貼り付けてこんな感じ。

呼ぶならば、「ノコベニヤ」
このノコベニヤはそれ自体に高精度なガイド機能が備わっており、テーブルの上をスライドさせれば、刃は盤面から12mmの高さを維持して動いてくれる。
くだらなく聞こえるかもしれないけど、この考えはあらゆる加工においてめっちゃ重要だと思う。
ちなみに刃の出しろはこんなもん。

さっそく使ってみよう。
LV.1 木口加工(タテびき)

このような材料の木口を直線に切り込むのはなかなか難しい。ほぞなんかを作るときに行う加工だ。
そんな加工も材料に対して、当てて動かすだけで非常に綺麗にカットすることができる。

こうしたり。

こうしたり。
ノコベニヤを動かしてもいいし、それを固定して材料を動かしても良い。
これを両側から繰り返せば。

非常に綺麗なカットラインが得られた。
しかも両側から行ったので、このカットラインは完全に材料のセンターから等分されている。
これを手で普通にやるなんて至難の業。多分誰でもプロより上手くできると思う。
あとは横っちょを切り落としてしまえば普通にホゾができる。
このままだと二方胴付きだけど四方胴もできるし、2枚ほぞもできる。
一応、本当にちゃんとホゾを作るなら、タテびきの細かめの刃を使った方が上手くいくよ。
あと、カットラインの高さの調整には材料かノコベニヤの間に適当な厚みのものを挟んでしまえば良い。
さあ次の段階のヨコびきも、ノコベニヤなら当然できてしまう。
LV.2 ヨコびき
さあ次の段階のヨコびきにはちょっとした固定台を作る。
適当な2x4材に直角スコヤをあてがって、適当な角材を貼り付ける。


さらに滑り止めのサンドペーパーを両面で貼り付ける。

こんなものができた。

次にこいつを下のようなテーブルの凹んだところに取り付ける。


テーブルの横っちょより少しだけ(1mmちょっと)出っぱるようになっている。
でクランプで固定。

ちょうどいい台がなくても一通りみて貰えば代用方法はいくらでもあるので大丈夫だと思う。
この状態で、出っぱった角材をノコベニヤで切り落とす。


この角材の断面はまさに切れる位置のガイドになる。
本番の材料をこのガイドの高さに合わせてクランプで固定。


あとは同じように切るだけだ。

ドンピシャ同じところで切れた。あたりまえ。

直角もOK、これはガイドの角材の取り付け精度次第。

というわけで横切りもバッチリいける。
さっきのホゾを切ってみると。




バッチリです、バッチリすぎます。
このジグで一応長い距離の縦びきもできる。
LV.3 タテびき(ロング)
少し長い材料(30cmくらい)をこのようにセットする。

この距離を手鋸で切れるだろうか、ぜったい無理だとおもうけど正確なガイド機能を持ったノコベニヤならできる。




柔らかい杉の白太ということもあって、端っこが少し割れたけど抜群の直線精度でカットすることができた。

このカットは流石にタテびきの刃じゃないと目詰まりもしまくって切りにくかった。
ノコベニヤをいくつか用意しておくのがポイントかも。
この原理を応用してもっと自在な運用もできる。
例えば下のようなベニヤを切りたいとき、適当な2X4材を置く。

そしてあてがって切る。

当たり前だけどめっちゃ直線にカットができた。

このカットにはやはり最初の曲線刃が便利だと思う。直線刃は少し当てにくい。
やはり長い距離の直線カットが最も出番が多く、手鋸で一番難しいところなのでここが上手く切れれば可能性はかなり高まる。
さらにバンドソーの得意とするひき割りも可能だ。
LV.4 ひき割り
例えば20mmの板をスライスして10mmにするようなカットを挽き割りという。
おそらく手鋸では最も難しいカット、普通バンドソーという機械を使うけど、これができれば文字通り厚い板から薄板をたくさん取ることができる。(ただし腕は逝く)
というわけでまずこんなものを作った。

ベニヤとそれらを固定する角材だ。
それを裏返して、両面テープでノコ刃をセットする。

このときは間違いなく縦びき用の刃を選ぶべき、写真では手元にあったものを使っているので参考にしないように。
そこにさらにベニヤを貼り付ける。

このベニヤの厚みがひき割りするものの厚みになる。こんかいは12mm。
なんかありそうな道具ができた。

使い方は見ての通り。

材料をこうやってひき割っていくわけだけど材料側の固定が必要。
今回は両面テープを使ったけど十分役割を果たしてくれた。

というわけで切り込んでいく。

物自体は非常に動かしやすく、使いやすい。

ただし縦びきの刃を使っていなかったせいで腕がすぐに限界に、この辺りでギブアップ。

カットしたものはこんな感じ。


だいたい真っ直ぐに切ることができたが、ノギスで計測すると厚みに関しては最小値に対して最大0.4mmちょいの誤差があった。


カット後半で最も厚くなったのでおそらくジグの下に木屑が入ったりで刃が上に逃げていったためかと思われる。
でも十分改善していけそうだし、0.2mm以内くらいの誤差は狙えるんじゃないかと思う。
作業台の平面性とか材料の固定力も関わっていると思う。
少なくとも手鋸を持って切ることでは実現できない精度のカットができたと思う。
この方法はまだまだ発展性があると思う。
電動工具を使う自分にはあまり考える必要もないんだけど、活かせそうな人はもっと色々発明してみてほしい。
動画解説
この記事は動画先行で、かつ動画の方がわかりやすいという、かわいそうな記事だ。
だから記事を全部見た後に動画をみてほしい。結構ヒットした動画。