サムネに使ってる組み方は西洋の伝統的な組み方だけど、ダブテールガイドを使うとできない。なぜなら必ず等間隔になるから。
つまり、ダブテールガイドを使わないことで包みアリ継ぎの形やピッチは自由になる。
そもそもダブテールガイドの自作は結構難しいので、今回はほとんどの加工はトリマでやって、仕上げだけ手ノミを使う方法を考えてみたので紹介する。
少なくとも片側の加工はトリマだけで超精度で完結するので楽なはず。
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Contents
包みアリ継のピッチと意匠
ピッチでかなりイメージが変わる。
まずは等間隔の場合。
今回説明する不等間隔の場合。
なんていうか等間隔の場合、クドイ感じがするのは自分だけじゃないと思う、あとなんか和風感がある。
不等間隔のものはぱっと見がなんかオシャレだと思う。西洋の伝統的組み方に近いらしい、詳しくは知らんけど。
強度は見ての通り前者の方が高いけど、引き出しなんかに使う場合その強度はオーバースペックすぎるので、一番大切なのはぱっと見の印象だと思ってる。
組み方図解
今回の引き出し全体の組み立て順序はこんな感じ。
ちなみに後ろ側は「片胴付き追い入れ接ぎ」という方法なので詳しくは以下の記事で。
【基礎編】トリマー1本でできる片胴付き追い入れ接ぎ【引き出しDIY】
箱物の固定で最もポピュラーで簡単な方法がこの「片胴付き追い入れ接ぎ」(覚えにくい)だと思う。引き出しの箱なんかはビス留めでも十分使えるんだけ ...
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包みアリのところの寸法はこんな感じ。
赤字で入れてるところはビットのサイズによって決まっている。
ただし、12.7mmのところは今回の作業のやりかた上、実施の時に少しだけ大きくなることが予想される。
オス側を作ってから、メス側をそれに合わせるように加工するので問題ない。
ビットはこれ。
オス側加工のジグ
まずこのようなアリ溝加工ジグを作った。
ちょっと複雑に見えるけどマジで小一時間でできる。
上の板が左右にスライドして任意の位置で固定できる。それがそのままトリマの加工位置となる。
これを使うことで、驚くほどパーフェクトな仕口が作れた。
合計6枚あるけど完全に一致。トリマーはすごい。
仕組みは下を見て貰えばある程度わかるかも。
まず左右の位置を決め、このように材料をトグルクランプでセットする。
そしてトリマで加工する。
この時のビットの深さは12mmだ。
ちなみに加工は僅かにセンターより左を削ってるので、ひっくり返してもう一回カットすることで完璧にセンターにアリ溝が加工できる。
わかりにくいので図を。
うーんわかりやすい。
両側から加工してセンターを出すというのはDIYerの常套手段なので覚えておこう。
端の加工は。
このように適当な寸法でおしゃれな寸法で削って、同じようにひっくり返して反対も加工すれば完璧な左右対称が出る。
正直いって、とんでもなく簡単だ。
ジグの細かい説明と跳ね飛びの対策
これについては記事では解説しきれない。
動画で喋りながらめっちゃ解説してるので、2:40あたりから見てほしい。ついでにチャンネル登録もしてほしい。
オスの裏側を削る
このままでも問題ないんだけど。
今回はこのように裏側(内側)を少し削ることにした。
なぜかというと、オスの形をメス側に写し取る時に下のように合わせることになる。
この時にこの段差があるとピッタリ当たって位置が出るのでめっちゃ合わせやすい。
また、接着面積の増加による強度であったり、ホゾでいうところの胴突きのように内側の仕口をカバーしてくれるのでランクが一つ上がる感じかな。
ただ、なんだかんだトータル的に手間は少し増える。
加工そのものはトリマーを使ったけど結構力ずくでやった。
このように直線の出たベニヤをカットラインに合わせて貼る。
反対側にトリマの転び止めを設置。
あとはベアリング付きストレートで削る。
もちろんこの時の深さ設定は一発決めたら変えずに全て加工する。
深さは勝手に統一されるけど、板の位置は0.5mmずれたら大惨事な上にばらつきが出るので、正直言ってこのやり方は全くスマートではない。
実際ノギス測定で最大0.2mm程度ずれていて目視できる隙間の原因になったので、改善の余地がある。
メス側にカットラインを写し取る
大体直角が出たものにクランプで固定して、メス側にオス側の形を写し取る。
このとき使ったシャーペンは0.3mm。
鉛筆でもいいと思うけど自分は使わないなー削るのめんどくさいし。
この時、加工材にオスメスペアでナンバリングしてあるけど、オス側はかなり均質なので不要かも。
雌側のカットラインを一応毛引でも入れてあるけどこれはあくまでも目安。
実際のカットラインはトリマの加工に委ねる。というのも。
この写真のように、仕口の端っこではなくて、真ん中に残った距離で箱の内寸が決まってくるので、引き出しが複数ある場合はこの寸法を完全に一致させたい。
なので、
指定の幅のベニヤを用意して全部加工すればいいだけ。
ただし、トリマで削っていいのは斜線の部分だけ。
なので、このように残す部分を余裕を持ってカバーしたい。
このような細かい型を作るには、もう一枚ベニヤを用意してそれに細かいパーツを貼り付ける。
で、あとはいつものベアリングビットでくり抜けば、
一枚の型になる。
この型を材料にあわせてみると、余裕を持ってカット部分をカバーできている。
メス側のトリマー加工
あとは材料に両面テープなどでしっかり固定し、てトリマーで削るだけ。
この時の深さ設定は、オス側の長さにあわせて0.1〜0.2mmレベルでしっかり合うようにテストしている。
ここはめっちゃ重要。
ちなみに上の写真のような削り方だと、トリマがかなりの確率で転んで失敗するので、実際には下のようにしている。
このように同じ材料とベニヤで転び防止の台を設置すれば安定する。
そしてこのように加工できた。
この3つ、両端で6つの仕口は理論上完全に一致している。
実際デジタルノギスでチェックしても0.1mm単位で一致していた。
あとは斜めの部分。
仕上げの手ノミ加工
あとは気合いで削った。
ポイントは。
- 見えるところのカットラインだけ死守
- 鎬鑿(埋木鑿)を用意する
みたいな感じだけど、鎬鑿(しのぎのみ)っていうのは先っぽが三角になっているもので、このようなアリ形状の隅を攻めるのに重宝する。
自分は持っていなかったので、激安ノミをグラインダーで削った。
これで隅まで刃が入るようになる。激安ノミだからなせる荒技。
そしてこのように完成した。
もちろんシャーペンの隅線は僅かに残しておいて組み合わせながら調整。
入るなと思ったらオス側を面取り。
雑すぎて草。
見えないので問題なし。
この時間違えて、外に見える部分を面取りしないように注意しよう。全てが終わってしまう。
はめる
とりあえずはめてみて喜びを感じよう。
気持ちい。
少し隙間があるけどこれくらいなら全て誤魔化すことができる範囲。
ボンド接着
ボンドは黒くなるタイトボンドではなく、白ボンドを使った。強度も必要ないので。
あまりはみ出して欲しくないので比較的少なめ。
ボンド塗布にはSTAXのブラシがおすすめ。
押し込む。
押せるようにベニヤチップを貼ってある。
これによってクランプでしっかり押し込める。
このような作業でユニパラレル系のクランプは本当便利。
クランプは別記事を参考に↓
初心者でも長く使える オススメのスタンダードなクランプを厳選【買って良かった】
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これにて接着完了。あとは出っぱったところなどを処理していく。
仕上げ
0.5mmくらいは出っぱっているので、ここではやはり鉋が必要。
フラットになったらランダムサンダーをかける。
あとこの辺の目違い(段差)も解消していく。
かんな作業の後は必ず塗装下地調整のサンディングを行う。
詳しくは以下の記事↓
【#02塗り方編】オイルフィニッシュとは?【塗装と原理】
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最終の誤魔化しとして、ランダムサンダーのダストバックを取り出して魔法の粉を振りかけ、隙間に埋め込む。
隙間が消滅すればいよいよ。
オイル塗装
オイルをぶっかける。
オイルはいつもリボスのアルドボスを使っている。
完成
ここには吊り桟の溝などが掘られていない。普通は先に掘るものだけど、色々あって今回はこうなった。
最終的にはこのようになる。(側の塗装とか取ってがまだだけど。)
実は手加工を取り入れたダブテールジョイントは初めてやった。
というかダブテール自体2回目。
結構楽しかったので是非挑戦してみよう。