突き板といってもシート状のものや、薄い合板に貼り付けられたものなど色々種類があって、貼り方も色々ある。
どちらのタイプであっても、手順をしっかり踏めば初心者でも問題なく貼れるので徹底的に解説していきたい。
Contents
突板の種類 シートか合板か
突板とはとは無垢の木を0.2〜0.3mm程度に専用機械で薄くスライスしたものなので、これを作ったものに貼り付ければ見た目は完全に無垢材になる。
しかも無垢材に比べてかなり安く作れるので、面積の広い天板などでは特に力を発揮するし、実際に販売されている結構高級な家具などでも脚は無垢材、天板は突板みたいな使われ方をする。
このペラペラな突板はそのままでは簡単に破れてしまうので、流通の際には基材と呼ばれるいろんな種類の補強材が貼り付けられている場合が多い。(そのまま販売してくれるところもある)
突板に特に規格はなく、突板屋さん毎にいろんなものを扱ってると思うけど、軽く分類して説明する。
突板シート
【和紙貼り】
基材として和紙(不織布)を貼り付けたものが一番標準的で、一般に突板というとこれを指す印象がある。
厚みは基材貼りの中では最も薄く、0.3mmくらいからあるので曲面への貼り付けもしやすい。薄い分、色の薄い樹種だと貼り付け側の色が透けてしまうこともあるらしい。
接着はコニシCH7という熱で溶けるボンドを貼り付け側と突板側に塗ってアイロンで接着する。
【樹脂含浸紙貼り】
ツキ板GIFUさんで販売されてるイージータイプというもので、和紙貼りよりすこし厚く、強靭な紙を使っているので貼り付ける時にシワになりにくく、貼り付け材料の色が透けることもない。厚みは0.5mm程度から。
初心者でも扱いやすいし、価格も少し安かったのでいいこと尽くめ。
今回の貼り付け解説でもこれを使用する。上の写真もこれ。
曲面にも問題なく対応可能で、接着剤は上記のコニシCH7でもいいし、アイカRQ-V1でも可能(個人的にコニシG10でもいける気はする)。
【粘着テープ貼り】
その名の通り裏がシールになってるのでそのままペタッと貼れる。ガラスでもプラスチックでもペタッと貼れる。
めっちゃ簡単だと思いきや、大きいものだといきなり難易度が跳ね上がる。
そして粘着シートは木の伸縮に追従してくれないため、シワになったりすることもあるので、大型の本格木工をやるには少し微妙かも。
突板合板
【いろいろ】
基材に合板を貼り付けたものからMDFやランバーコアを貼り付けたものまで、厚みは1mm程度からからいくらでもある。
共通するのは既に板に貼ってあるのでそのまま材料として使えるというところ、両面に貼ったものをホームセンターで見かけたものもある。
分厚いものも買えるけれど、写真のように2.5mmくらいのもの(一般的なサイズ)を買っておいて、必要な時に切り出して必要なところにペタッと貼るのがおすすめ。
裏面は木質材がほとんどなので、普通の木工用ボンドでもなんでも貼れるんだけど、僕は速攻貼って速攻切れるG10(Z)で貼るのが好き。特に天板などの広い面には。
なんだかんだで初心者に一番おすすめできるのはこの突き板合板かな。
買えるところ
以下の通り。
突き板合板の場合
種類が抜群に多いのはGIFU(合板用ページ。シートとホームページが分けられているので注意)
ただし購入する時には注文してから送料が見積もられ、合計金額が判明してから入金(カードOK)を行うなど少し手間、さらに3x6などの標準サイズで購入する場合は専用配送業者となり、個人宅の場合は営業所止めじゃないとダメだったりで、合板の購入には少し難ありかもしれない。
ヤマトも対応しているけど、その場合160サイズに余裕を持って収まるようにカットしてもらう必要がある。
なので、合板で手っ取り早く購入するには楽天のここがいいと思う。
送料も明確で速攻買えるし、配送の制限も基本的になく、価格も樹種によるけどGIFUとどっこいどっこい。
というわけで、突板合板は張り合わせが簡単ではあるけど、人によっては好きな樹種が自在に手に入るとは言えない。
どのみち梱包代金と送料で絶対3000円以上かかるので、1枚買いは少々勿体無い。
それを解決できるのが丸めて配送できる突板シート。
突き板シートの場合
ここではやはりGIFU(シート用ページ)。
GIFUのシートには上で紹介した通りの3種類あって、和紙で補強したノーマルタイプ(0.3mm)と、そして樹脂含浸紙で補強されたイージータイプ(0.5mm)、粘着シートが貼られたクイックタイプ(0.4mm)となっている。
イージータイプは0.5mmとそれなりの厚みがありがっしりしているため、シワになりにくい。
HPにも書いてあるけど初心者に一番おすすめできるタイプ。上のリンクもイージータイプだ。
ちなみに自分が今回イージータイプを買ったのはノーマルよりも安かったからだ。
なんでや。
ちなみに前に無垢材のネット販売店を紹介する記事を書いたけど、そこで紹介した府中家具さんでも突板が買える。
サイズがちょい小さめで、イージータイプは扱ってないけどお手軽に買えるかも。
とりあえずシートタイプの貼り方をマスターすることで、さまざまな制限から解放され、自由自在な突き板ライフを送ることができるので、ぜひ貼り方を習得してみよう。
突板シートの貼り方
今回はもっともスタンダードなアイロン専用ボンドCH7を使うやり方を紹介する。
紹介したシート系の突板はどれもこの方法で貼り付けできるはず。
用意するもの
これが結構楽しいんだよな、まずこんなものを用意した。
写真左から
- アイロン
- 圧着用ローラー(なければスキージ)
- 突板
- 貼り付ける板
- 専用ボンドCH7
- スポンジローラー
アイロン、はマジでなんでもいいけど面が汚れていない事は絶対。
圧着ローラー、は下のリンクのクロス屋さんが使うようなものがあればベスト、なければスキージという道具でも可能、自分は上の写真のように木の先っぽにウエスを巻きつけたスキージもどきを用意した。
突板、はGIFUのイージータイプ、ブラックチェリー。
貼り付ける板、は木材系ならなんでもいけると思う。
専用ボンド、はコニシCH7の完全一択だけど容量が20kg単位でしか扱っていない。
小分けは突板屋さんが独自に販売していて、GIFUさんはここ、府中家具さんはここ。
スポンジローラー、は下のリンクのような水性ボンド専用。普通の毛足の長い塗装用ローラーだと塗りにくいので注意。
あとよく切れるカッターナイフかな。
材料をカット
今回使うのはブラックチェリー板目の突板。
貼られる側の板は本番のサイズでも問題ない、突板側は少し大きめにカッターナイフなどでカット、自分の場合は1センチ四方大きくするくらい。
実際に材料を載せて合わせると間違えにくい。
カット完了。
表面を整えてセッティング
まず貼られる側の板は表面を#240程度でサンディングしてすべすべに。
ダスターハケなんかで粉塵も払って、細かいゴミクズなんかは絶対入らないように注意しよう。
突板側にサンディングは不要。動かないように画鋲やピンなどで固定。
下側も1点止めた。
ぶっちゃけマスキングテープで止めた方が塗りやすかった。
塗る
ボンドを垂らしてローラーで均一に伸ばすの繰り返し、木材の道管にしっかり染み込ませる感じ。
突板の方はあまりボンドを吸わないので少なめで良い。
乾かす
あとは透明になるまで乾かす。
夏場は10分程度、冬場は30分程度、それ以上時間が空いても問題ないけど、何時間も放置するのは付くっちゃあ付くけどあまり良くないとのこと。
透明になって手につかなくなったら張り合わせ可能。
ただし、荒い材料の場合などに確実な接着を望む場合は、貼られる側8~9割、突き板側5~6割程度の半乾き状態で接着する方法や、完全に乾いた後に2回塗りする方法などがある。
初心者向けには2回塗りの方法で解説していることが多いので、今回も2回塗り→半乾きフィニッシュで実践していく。
2回塗り
2回目は半乾きで仕上げる方法をとる。
貼られる側の板の乾き具合は8~9割が目標なのでまずはこちらを先に塗る。
一息ついて5〜6割目標の突板側も塗る。
塗り終わったら忘れないうちにスポンジローラーを洗って干す。
そしたらちょうどいい感じに、少し白いけどほぼ手に付かないといった半乾きの感じになってるかも。
貼り合わせ
細かいゴミなどがついてたら取り除いて、慎重に貼り付け。
とはいってもゴム糊みたいにベタッとつかないので位置合わせは簡単。
貼り合わせたらローラーかスキージで空気が入らないようにするイメージでシゴく。
アイロンで熱圧着するのでそこまで神経質にならなくても綺麗に貼れる。
アイロン
アイロンがけの時に面に砂粒なんかが乗ってたら悲惨なことになるので綺麗に。
ボンドが溶けるのは80度から、なので設定温度は100度〜200度とされているけど、油断すると焦げることがあるので100度くらいがいいと思う。
感覚としては、最初は軽く全体を滑らせるイメージで、材が温まって馴染んできたら少しスピードを落としてジワーッと圧着していくみたいな感じ。
焦げが怖い場合は下のように何か布的なものを挟んでもいい。
個人的な印象としては、100℃程度なら焦げることはほとんどないので、布を挟むと逆に熱が伝わりにくくて時間がかかってしまう印象。
ダイレクトにしっかり当てた方がしっかり平面も出る気がする。
端っこは捲れやすいのでしっかり当てるけど、アイロンが傾くような当て方をすると逆に盛り上がったりするので注意。
サンディング
余った部分をカットした後でもいいけど、何回かやってみたところカットの時の圧力でに僅かに端が盛り上がる感じがあったので、個人的にはこの段階がベストタイミングだと思ってランダムサンダー#320を当てる。
アイロンがけの後の面は微妙な凹凸があって、自重以下の力でサンダーを滑らせると、当たる部分と当たらない部分があるのでわかりやすい、数往復すれば全面が白く濁るので完了。
手で触っても下地と同等の平面が出た感じになる。
この時削る厚みは多分0.01mm以下だと思うけど、ランダムサンダーに慣れてない人はエグってしまう可能性もあるからオービタルの方がいいかも。
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カット
あとはよく切れるカッターではみ出した部分を切る。
このカットは油断すると内側に入り込んでしまう可能性もあるのでなんだかんだで神経を使う。
僅かに残して下のような棒巻きペーパーやカンナで削るのもアリだと思う。
この木口をどうするかは使い方次第だけど、カットラインがピシッと揃った。
塗装をすれば美しいやんけ。
突き板合板の貼り方
突き板合板に関しては途中で書いた通り、木材と木材の接着なので非常に簡単。
小さい面なら木工用ボンドでもいいけど、広い面にはGボンドと呼ばれるシリーズのG10Zを使うのが自分のお気に入り。
ちなみにG10というチューブ式のものもあるけど全く同じものなので安心してほしい。
貼り方に関しては専用の記事があるのでそちらをみてほしい。
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突板の木口の処理
突板の木口は断面が目立つ。この処理はシートにも合板にも通ずるポイント。
シートの場合は木口にも同じように貼ってしまう方法があるけど、安っぽいし剥がれやすいのでちょっと嫌い。
というわけで今回の場合の処理方法を紹介する。
貼った場所はデスクの吊り引き出しの外箱。
引き出しの前板以外の面は突板で、木口や突き合わせになる部分は全て無垢材。前板と背板だけ既に塗装してあるので色が違うけど全てブラックチェリー。
この背中側がまさに今回の記事で例として貼ったもの。他の部分も突板だ。
木口の処理はこんなふうに無垢材を貼った。
正直、突き合わせに無垢材を入れるのは結構難しかった割りに、あまり意味がなかった気がしている。
こういう箱に突板を貼る場合は、前後だけ無垢材を貼るのがいいと思う。
突板の他の記事
下の記事でも突き板合板に触れてあり、木口処理のいろんなパターンも紹介してるので見て↓
【後編】DIY家具でも使える広葉樹とツキ板の話
結局3編構成になってしまったが今度こそまとめる。ツキ板(突板)の話もします、本当です。 無垢材については楓&メープルと胡桃& ...
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もっと大きなものを貼る動画
記事の後、大きめの天板にもバッチリ貼れたので、その様子を解説しながら動画にしてある。