この記事ではキッチンを作るために最低限押さえておくべき知識と、最もシンプルで簡単なキッチン作りを引き合いに出して解説していく。
僕は建築設計を専門としていて、DIY好きが高じていろんなキッチンを素人に教えながら一緒に作るというのをざっと10回以上はやってるので、信頼性は高いはずだ。たぶん。
インテリアDIYの中で一番やりがいがあって、楽しくて、幸せで、幸せなのはやっぱりキッチンだと思うのでみんなで幸せな世界(キッチン)を作ろう。
最終的にはガス工事屋さんと給排水の設備屋さんの力を借りる必要はあって、その辺についてもなるべくやさしく解説していきたい。
Contents
世界一やさしいキッチンのかたち
まずはシンプルにキッチンというものがどうなってるか説明していく。
ジグソーでもなんでも良いので板に穴を開ける手段と技術さえあればキッチンの基本構造は作ることができる。
例えば下のような板だけでキッチンとしての要件を満たしている。

この板が作れるだろうか?
作れるならあなたはキッチンを作ることができるはず。おめでとう。
穴を開けているが、このカットラインはガタガタでOK。
両サイドに壁があるところならこの「穴の空いた板」を固定するだけでキッチンになるんだけど、せっかくなので脚をつけてみよう。

少しキッチンらしくなったかな、一般的な壁の前につくキッチンならこれで自立するはずだ。
では設備をはめてみよう。

これはキッチン。まごうことなきキッチン。
ただしコンロにガスを接続する工事は必ず専門業者に依頼する必要がある。
設置自体はシンクもコンロも上からカポっとはめてネジを締めるだけ。
と言いたいところだけど、コンロは設置自体も有資格工事の一部となるので要注意。
給排水については有資格工事の線引きがよくわからないんだけど、ほんとはダメっぽい。
なんの憂いもなく取り付けを行いたいなら、設備はプロに任せるとよい。
それはひとまず置いといて、前から色々見えてカッコ悪いので板をつけてみよう。

板をつけたらこんな感じ。
完全にキッチンだ。簡単じゃない?しかもかっこよくない?
ではこの穴をどんなサイズで空けたらいいのかが分かれば、もう作れるよね?
この基本をベースに扉とか引き出しとかつけていけばええねん。
もちろんつけずに下に収納家具を詰め込んだって良い。
穴あけの寸法とセオリー【コンロ別】
コンロの規格サイズごとに決まりとセオリーを書いていく。
難しければ本当に書いてる寸法そのままでやってもらっても多分作れる。
仮に設定するもの
キッチン天板の大きさはIKEAの「SÄLJAN セールヤン」というものがちょうどよかったので、仮にその寸法で書いている。(1860x650x35)
天板は水に強くしたいので初心者はこのシリーズお勧め。
天板の厚みは30〜40mm程度であればコンロもシンクも綺麗に収まる。

シンクも同じくIKEAの「NORRSJÖN ノッルショーン」

水栓は「GLYPEN グリペン」という商品を仮で設定している。

ビルトインコンロ W600/750タイプの場合

いわゆる普通のビルトインコンロといえばこのサイズになる。
都市ガス用とプロパン(LP)用があるので、自分の家のガスがどちらか確認して間違えないように買おう。
開口穴の大きさは僕が知る限り、国産であれば全てのメーカーで統一されている。
念の為取り付け説明書で確認してほしいが、書いてある寸法通りでも問題ないはずだ。
点線は機器を設置した時の大きさを表している。
水栓の設置位置はシンクの点線から上50mmのところがベター。
ビルトインコンロ W450タイプの場合

一人暮らしの人なんかは作業スペースの確保のためこのサイズもありかもしれない。
ただしあまり売れないせいか、でかいやつより高い。
繰り返しになるが、都市ガス用とプロパン(LP)用があるので、自分の家のガスがどちらか確認して間違えないように買おう。
はめ込んだ時の寸法
設備をはめ込むと下のような感じになる。

ビルトインコンロは前後に結構調整が効く。シンクはあまり効かない。
赤字のところはここに壁があると想定した場合、法的に離さなければいけない距離だ。(建築基準法で言うところの「不燃」の壁であれば離さなくてもいいんだけど、油飛び散るしとりあえず離しておくのがセオリー。750タイプだと75mm離せば良い。
とはいえ上に書いた通りに穴を開ければ勝手にこうなるので深く考えなくていいかもね。
シンクの選び方
シンクは大きく分けて、オーバーシンクかアンダーシンクかに分けられる。
DIYに向いているのは間違いなくオーバーシンク。
どんなやつかと言うと下のIKEAの「NORRSJÖN ノッルショーン」の図面を見てほしい。

横から見た図で、上の方に左右に出っ張った部分があると思う。
シンクを上から被せた時、この出っ張りが引っかかって納まる。これがオーバーシンク。
取り付けが非常に簡単で、穴のサイズが多少ずれていてもなんとかなる。
IKEAの場合は穴のサイズは外径から1cmづつ引っ込めた大きさを開ければよいことが多い。
一応先に買って中の説明書を読んでおいた方が良い。
排水トラップについて
シンクの下につく排水のための配管みたいなものを排水トラップと呼ぶ。こんなの↓
メーカーによって合う合わないがあるのでシンクとセットで買おう。自分で調べるか買うお店に電話して確認すると良い。
薄型タイプと真っ直ぐに落ちてるタイプがあって、スペースを有効活用できるのは薄型。
ただしIKEAのシンクの排水トラップは国内の排水と規格が合わないので、業者さんにも敬遠されがち。
IKEAの専門施工の人に頼まない場合は「こちらで責任をもつ」と一筆書くくらいしてあげるといいと思う。
ちなみに今まで数十箇所つけたけど、水漏れのクレームは受けたことはない。
漏れまくったという人がいるけど本当かなあ。
個人的にはIKEAのトラップはフレキシブルに調整が効いて高機能だと思ってる。業者さんはこのやたら動く機構が脆そうで怖いと思うようだ。
安いしかっこいいので僕は好き。
水栓の選び方
まずキッチン用を選ぼう。そして混合水栓というものを選ぼう。(お湯の配管が来ているならば)
洗面用やお風呂用をチョイスする人がたまにいるけど、つくんだけど長さとかが微妙な場合が多い。
注意点としてAMAZONなどの謎のメーカーの激安品は避けた方がいい。何度か水漏れを経験した。
給水側から水が漏れると圧が高い上に常に漏れ続けるので非常に厄介だ。排水が漏れるより厄介。
経験上信頼性が高くて、お勧めできるのは一般的な国産メーカーとIKEAのもの。
壁付けタイプと、天板つけタイプがあるけど、それは後述する。
標準的な天板付けタイプは下のようなもの。
やさしい設備(ガス・水・換気)の話
キッチンはどうしてもこの辺の配管とのせめぎ合いがある。
設備をつけたい位置にこの配管を事前に用意しなければならない。
まずは元あるキッチンを取り外した時にどうなっているのかから、なるべくやさしく説明しようと思っている。
キッチンの破壊の手順
元からあるキッチンを壊す場合、事前に給排水工事の「設備屋さん」ガス工事の「ガス屋さん」に接続機器を取り外してもらう必要がある。
ガスと給水は「一旦全部外してプラグ止めにしといてください」が合言葉。
排水がボンドでがっちり繋がってる場合は「長めに残して切って蓋しといてください」だ。(古い家なんかはだいたい差し込んでるだけなので引き抜ける)
業者さんの手配については、機器を買う店で手配してもらえることもあるので相談してみると良い。
外してもらえればあとは残った配管類を傷つけないように自分で取り外して壊せばいい。
場合によってはうまいこと本体から分離されてて、最初からDIYでも外せる場合はあるんだけど無理しないほうがいい。
以下は壊した後の話。
給水について
新しめの建物の場合、壁の低い位置や床からこんな給水管が2本づつ生えている場合が多い。
壁からの場合↓

床からの場合↓

これらは止水栓と言うもので、その名の通りこいつを閉めれば水が止まる。(古いと止まりきらないこともある恐怖)
これらはそのまま残しておけば、そのまま上部に水栓を取り付けることができる。
2本生えている場合は左がお湯で右が水というルールがある。
下のような感じで天板の上の水栓につながる。

もし移動させたい場合は一旦取り外して配管工事を行う必要があるが、キッチンで隠れる位置での配管となるため、工事としては比較的やりやすい場合が多い。
お湯と水の配管では、配管そのものや継ぎ手に使うボンドも違うし、業者さんに頼むのがベターとだけ言っておく。
漏れる時は派手に漏れる。
そして古い建物の場合はキッチンより高い位置にこんなものが残ることが多い。

これはまさにこの位置に水栓がついていた名残で、繋ぎ変えて移動させたとしても配管が全部剥き出しになるので残念な感じになる。
うまくいけば手前の方から分岐して移動させることもできるが、ほとんどが壁や床の中に埋まってるのでなかなか難しい。
大規模にリノベしてるわけでないのなら、下に移動させたあとに残った配管を隠せるようにデザインするか、あきらめて同じ位置につけるのがベター。
同じ位置につけるならこういう「壁付けタイプ」の水栓。
この場合は上の図面に書いてあった水栓の穴は必要なくなるけど、奥行きがあるとシンクに届かないなんてこともあるので、前後関係に気をつけよう。
天板の奥行きは600mm程度にとどめておいた方がいいかもしれない。
僕なら意地でも移動させる。
やっぱ職人さんが一番詳しいので、アイデアでなんとかしてくれたりもする。
排水について
ちょっとガスホースで隠れてるけどグレーの配管が突き出した形で残ってると思う。

たまに壁から生えて上を向いてる場合もある。
移動させる場合はこんな感じで配管する。

バンドで水が流れるための勾配をキープしてあるプロの仕事(オーナー)。
DIYでやってる人かなり多いけど一応資格いるっぽい。だめなのかなあ。
この辺はなるべく低い位置で動かせば、キッチンの足元で隠してしまえばいいのでさほど問題にならない。
隠さなくても奥の方なら目立たないという考えもアリ。
踏むと割れるから気をつけよう。
ガスについて
ガスは据え置きコンロタイプだったか、ビルトインタイプだったかで生えてる位置が違う。
ビルトインタイプだったら低い位置に生えてるので移動も問題ないんだけど、据え置きタイプだった場合はキッチンより高い位置についてたりすることもあるので厄介。
高い位置についていた場合は・・・やはり配管をうまいこと隠せるようなデザインにするしかない。
ガス配管は絶対DIYでいじるなよ。
命に関わる領域だ。
換気扇(レンジフード)について
もちろん換気扇が必要だけどこれはもう業者さんに任せよう。
問題になるのは高さなんだけど、簡単に言うとキッチン天板から800mm〜1000mm上に取り付けるのが基本(法律的に)。
下の図を参考にして欲しい。

この範囲かつ、頭が当たらなければオッケーよ。
ちなみに一般的な「電気屋さん(工事の方)」ならだいたいやってくれる。
【重要】理想的なガス・水の位置
まずキッチンを設置する前に、下のような位置に各種配管を移動させておくのが理想。

寸法は厳密ではないし、業者さんによってはもっとこっちの方が良いと言うと思うので、やりやすいようにやってもらうべき。
あれだったらこの図を見せたら意思は十分伝わると思う。
実際のところ移動させると下の図のようにごちゃごちゃするけどそれでよい。

いざキッチンを設置したらシンクやコンロを繋ぎこむ。
すると下のようになる。

これにて完成。
接続自体は専門的な工具やボンドもいらないので、ガス以外は正直自分でできる。
やっていいかどうかは別の話だけどね。
【重要】順序のまとめ
もとあるキッチンが残っている場合
- キッチンを破壊するためガスと給排水を外してもらう
- 各種配管を傷つけないようにキッチンを破壊・撤去
現状把握と設計
- 現状の配管の位置などを確認
- 理想のキッチンを考えて絵や図面を書く
- (図面が手に入らない場合、先にシンクなどを買っても良い)
製作準備
- 配管などをどこに移動させるか計画して図にする
- 業者さんを呼んで図を見せながら移動させる相談をする
- 配管移動工事
いざ製作!
- 作る
- 設置
- 業者さんに接続してもらう
業者さん手配できない問題
結構簡単に書いたけど、業者さんそんなに簡単に呼べねえよって人多いと思う。
一つの手段はそれぞれの販売店で工事まで依頼することだ。ネットで買うときも手配してくれるところは多い。
これは結構安いけど、もしかすると配管の移動まではやってくれないかもしれない。
もう一つの手段は知り合いをあたるかネットで調べて電話するだ。
「ガス工事」「給排水設備工事」レンジフードつけるなら「電気工事」この3勇者が必要になる。
こんなに探せねえよって人は「工務店」に電話しよう。
一般的に工務店というと家を丸ごと作ることができるところが多く、各業種の職人さんを取りまとめて工事を管理、実施していく。
基本的に全部やってくれる(高くなるけど)
あとは個人で施工管理やってるぜ、みたいな友達がいたら安いと思うなあ。
設計やデザインやってる人なら単独の職人さんとは繋がってない場合も多いけど、工務店は知ってるはず。
もっと手の込んだキッチンを作る
長くなったけど、キッチン作りに必要な知識を全力で網羅したつもりだ。
これらを踏まえてもっと凝ったキッチンを作りたかったら下の記事も参考にしてみてほしい。
-
【図面と解説】キッチンをゼロからDIY【作った編】
お部屋のインテリアの主役はキッチン!キッチンです!だからキッチンを作ろうぜ。ちょっと難しそうと思うかもしれないけどよく考えてみてよ、キッチン ...
続きを見る