使いやすいワックス筆頭だったブライワックスの上位互換とも言える「オールドウッドワックス」(ターナー色彩)
今こいつが結構手元あるので、DIYでよく使う、杉、シナ、ラジアタパイン、ファルカタ、SPF(ツーバイフォー材に使われる)の5種類で色見本を作ってみる。どれもホームセンターで手に入る材料だ。
塗装に失敗というものが(ほぼ)存在しない上に、オイルステインより保護能力が高い着色ワックスは初心者にもオススメだ。
同じく扱いやすいオイルフィニッシュについても書いてあるので、塗料に悩んでる人は参考にして欲しい。

Contents
オールドウッドワックスの塗り方
オールドウッドワックスの基本的な塗り方は下の記事にまとめてあるので、よかったら参考にして欲しい。
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オールドウッドワックスの基本的な塗り方と濃淡の調整【OLD WOOD WAX】
「OLD WOOD WAX」つまり古材ワックス。これに限らずオイルステインなどの染色系の塗料は木目を際立たせ、傷を際立たせ、もれなく古材っぽ ...
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一般的な木工用着色ワックス全てに通じる塗り方だ。
オールドウッドワックスとブライワックスの比較
比較対象に挙げたブライワックスだが、DIYerにはこっちの方が有名だろう。
どっちもよく使ったことのある人間の主観的な感想と、客観的なデータをもって軽く説明する。
「ブライワックスオリジナル」にはトルエンが含まれているが、今回はトルエン・フリー製品を比較対象にする。トルエン入りの塗料はまだまだ多いが、イマドキの塗料と比較すると時代遅れ感がある。
(トルエンとはシンナーに含まれるヤバい成分、いわゆるシンナー中毒というのはトルエン中毒ということ)
ブライワックスは伝統のワックスを謳うだけあって設計が古いと感じる。

粘度と使いやすさ
基本的な粘度はあまり変わらない。どちらも抜群に塗りやすい。
しかし温度変化に対する耐性が圧倒的に違う。
たしかにどのワックスにも共通する特徴として、暑いとゆるくなり、寒いと固くなるというものがある。しかしブライワックスは日本の夏に弱すぎる。
パッケージにも「気温が20度以上になると液体化します」と書いてある。この温度はあまりにも低すぎやしないか?ちょっと日の当たるところに置いてると見事にドロドロだ。
対してオールドウッドワックスは「40度以上の場所は避けて保管してください」とのこと。
乾燥後の色移りと耐水性
これも圧倒的にオールドウッドワックスが優れている。
ブライワックスを塗った椅子に白いズボンをはいて座ると、速攻でケツが茶色くなる。これって摩擦熱で主成分のロウが溶けることが原因と思われるが、やはりブライワックスはすぐ溶ける。
対してオールドウッドワックスは、塗装後数時間の状態で白いウェスでこすってみたが、全然色がつかない。
しかし全速力で擦ると突然色がつく。これには結構明確なボーダーラインが存在するので、やはり融点の問題だろう。
耐水性についてもブライはメーカーサイトで「弱い」と明言している。数日置いて試験してみるのでまた載せる。
塗ってみた色の比較

これは双方のクリア缶だ。なんかブライワックスの方が黄色くて美味しそうだ。
カラーを比較したら絶対違うのはわかっているので、クリアだけ塗り比べしてみた。材料は杉。

真ん中で塗り分けてるんだけど、ほとんど違いは見られない。ただし肉眼で見た感想だと、ブライの方が少しマットで色の変化が少ない。
オールドウッドワックスは少し濡れ色になり、鈍いツヤが感じられる。
ただしこれはブライ側はトルエンフリーによる実験であって、トルエンフリー製品はツヤと色が控えめであるとメーカーサイトに記載がある。
匂い
ブライワックスは強烈な匂いがする。トルエン含有のオリジナルはもっとヤバい。
オールドウッドワックスは匂いをほぼ感じない。
しかし後述するが、匂いがないのは、不快ではないというだけで、絶対安全というわけではない。
安全性
塗料の安全性について本気で考えるなら、安全性データシート(SDS=Safety Data Sheet)およびその内容の世界統一基準であるGHS(Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)について知る必要がある。
何が危険で何が安全かは、ひとくくりには評価できないものなので、この内容は非常に複雑で要約しにくい。一概に比較しても誤解を生みやすい。
例えば、ブライワックスもオールドウッドワックスも石油由来成分を溶剤に用いている。
さらにドイツの3大自然健康塗料メーカーの中でも、オスモ、リボス、アウロのうち、石油由来成分を完全に拒絶しているのはアウロだけだ。
というわけでアウロも引き合いに出して表で比較してみよう。下はGHSで定められた統一項目。
ただしこれは取扱者のための情報であって、塗った後の危険性を示すものではない。
オールドウッドワックス | ブライワックス | アウロ 2in1オイルワックスクラシック | |
---|---|---|---|
注意喚起語 | 警告 | 危険 | 危険 |
危険有害性情報 | ・引火性液体及び蒸気 ・眠気又はめまいのおそれ ・長期的影響により水生生物に毒性 | · 引火性の高い液体及び蒸気 · 遺伝性疾患のおそれ · 発がんのおそれ · 長期にわたる、又は反復ばく露による臓器の障害 | ・引火性液体および蒸気 ・飲み込むと有害 ・皮膚刺激 ・強い目刺激 ・アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ ・飲み込んで気道に侵入すると生命に危険のおそれ ・長期的影響により水生生物に毒性 |
注意喚起語は危険有害性の重大性の程度を表し「危険」の方がヤバい。ただこれは可燃性などの危険度と生物への有害性がごっちゃになってるので、やはり一概には判断できない。
危険有害性情報の項目を見ると、ブライワックスは見るからに物騒なものが並んでいるが、アウロであっても色々並んでしまう。天然成分だって発火するし、アレルギーも起こすし、時に人を殺す。
長くなりそうなので要約するけど、塗装中は火気厳禁の上、換気を十分行って、塗料の揮発成分を吸い込むなってことだ。
そのあと子供が舐めたり、かじったりして安全かってのは別の話だけど、
有機溶剤は塗ってる最中にもっとも揮発する。一番危険に晒されるのは塗ってる本人だと思われる。
僕は完全に自信があってこの項目を書いてるわけではない。
安全性を考えるなら塗料を選ぶ時に「安全性データシート」と検索して自分自身で判断して欲しい。
色見本まとめて比較
前置きが長くなりすぎたが、本題は色見本の作成なので早速載せていきたい。

この写真は5種類の木を並べて自然光の下で撮影したものなので全体の比較用。一応全て240番のペーパーで下地を整えて塗ってある。
左が各木材の着色見本で、右が無塗装の状態だ。
今回は「ショップタオル」という強靭なキッチンペーパーみたいなやつで塗ってある。ウエスと同等の使い方ができて、ロールになってるので利便性が高い。使ってる人も多いのではないか。
オールドウッドワックス自体は全部で11種類。今回手元にあったのは7種類なので全種類とはいかないが、まあ参考になれば幸いって事で。
ホワイトの色見本

塗ってみると全然変化が無いと感じるかもしれないが、広い面積に塗ってみると、木の温かみを残したままキレイさが出るって感じ。
白ペンキの真っ白とは全然違うので注意が必要。
クリアの色見本

濡れ色に変化しワントーン落ちるが、一般的なオイルほどでは無い。材料の元々持っている色味を深く引き出してくれる色。
ベージュグレーの色見本

色を少しくすませるといった感じ、個人的にはちょっと不自然さを感じる色味だが、好み次第か。
ラスティックパインの色見本

文字通りカントリーさにアンティーク感が漂う、黄色系の良い感じの色。なんにでも合いそう。
アンティークグレーの色見本

一気に雰囲気の出る色。木材の色味を打ち消してくれて、屋外に置いて風化したような雰囲気を醸し出してくれる。
チークの色見本

発色が良く鮮やかな色。チーク感は確かに出るし、北欧ヴィンテージ家具っぽいイメージにはぴったりかも。
ウォルナットの色見本

アンティークグレーにわずかに色味を足したような感じで、ダークトーンなアンティークイメージに良さそう。
シナ材に塗った色見本
ホームセンターで手に入る材料では最も緻密で美しい木肌を持つシナノキ。シナという語は中国に由来しているわけではなく、日本特産種で、英名をJapanese Limeという。
主にシナベニヤ、シナランバーコアという合板として出回っている。仕上げに最高だが、柔らかく傷つきやすい。

もともと白いため自在に染まりやすい。わずかに黄みがかっているのがクリアだと強調される印象。逆に白だと打ち消してくれて本当に綺麗。
全体の色味も明るく出て、チークやパインなどの鮮やかさが特に目立つ。
ファルカタ材に塗った色見本
ファルカタはタンスで有名な桐(キリ)とにた木材。種類としては全然違うが、性質が似ている。多孔質で空気を多く含むため、反ったりしにくいが非常に柔らかく傷つきやすい。
吸放湿性も高く洋服の引き出しなどに使うことが多い。

シナより白っぷりが良いが、多孔質というだけあってがっつり浸透する印象。その分全体の色も深く出て、鮮やかさは感じない。
SPF(ツーバイ材等)に塗った色見本
SPF材は、北米産のスプルース、パイン、ファーの総称でツーバイやワンバイの規格に採用される。この材がどれかは断定できない。

杉(スギ)材に塗った色見本
杉材は、もっともポピュラーな国産針葉樹。加工しやすく柔らかい。使い方次第で和を感じさせてくれる。今回は白太部分のみ。

ラジアタパイン材に塗った色見本
どんなものでも作りやすいパインの集成材。

全体的に色の浸透具合があまり良くない印象。パインなどの松系はマツヤニが有名なように、木材の油分が多いと塗料のノリはあまり良くない。
まとめ
今回比較できた色は全てでは無いんだけど参考になれば幸いだ。
海外ブランドに推されがちな木工染色塗料だけどターナー色彩は頑張っていると思う。是非試してみて欲しい。