引き続き大好きな広葉樹たちの話をしていこうと思う。
前編ではホワイトオークについて話したいことが多すぎてほぼ冒頭の延長みたいになっちゃったけど、今回は他の広葉樹と突き板の話まで完遂する。
つもりだったけどまた長くなったので、ブラックチェリーとタモの話まで。
前編はこちら。
【前編・楢&オーク】DIY家具でも使える広葉樹と突き板の話
僕が作っていて楽しいのはやっぱり家具。引越ししてもずっと使えるし、人にあげることもできるし自慢もできる。だから家具屋に行ったら構造やディテー ...
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Contents
山桜(ヤマザクラ) ブラックチェリー
加工しやすくDIYにも超おすすめ
ここ最近、個人的にオークを超えてロマンティックが止まらないのがブラックチェリー。
山桜と同じ桜系ではあるけど結構違うんだよね。
種類と特徴
よく省略して言われる呼称が「サクラ」と「チェリー」。
日本語英語で同じ意味の単語だけどこの二つは近縁の別種で、正式名称をヤマザクラとブラックチェリー(アメリカンチェリーとも)という。
この2種は共に非常に緻密で滑らかな木肌を持ち、オイルでひと塗りで醸し出される妖艶な艶感はまさに高級家具の材料としてふさわしい。
さらに他の木と比較しても、年月を経るごとに特に際立った変化を見せてくれ、それでいて加工性も抜群に高く、耐水性にも優れるんだからもう最強。
ただしオークと比較してやや傷つきやすく、やや値段が高いことが多い。
- ヤマザクラ - 管理されていない雑木林から切り出されるためか、木目はわずかに荒め。
くすんだ黄色っぽいが、経年で赤みがかってくる。比重0.6 - ブラックチェリー - 最初からピンクっぽい色をしているものが多く、桜との見分けはつきやすい。
時にさざなみ紋とも呼ばれる立体的な模様が見られる。
ガムポケットと呼ばれる黒い樹脂だまりが見られる。比重0.56
上にあげたように色味もそこそこ違うし、チェリーには明確なシンボルがいくつかあるので知っていれば見分けはつく。
さざなみ紋(リップルマーク)はこんな感じ。
あまりいい写真ではないが横目にさざなみが走ってるようなパターンが見える。この模様はオークの虎斑がベタっとした感じであるのに対して、光の角度で三次元的に見えるので結構キレイ。
もう一つガムポケットはこれ。
基本はちょいちょいに黒い筋が入る感じだけど下の写真のように凹みが発生することもある。
大体どこかに入ってるけど筋はほとんど気にならないし、ドギツイ凹みには出会ったことはない。
このブラックチェリーはアメリカ東部全域で計画的に造林されており、食用、材木用と経済的にも重要な存在。
しかし日本の山桜は管理された山林が存在せず、全て自然の雑木林から伐採されているらしい。つまり非常にレア。そこに価値を感じるのか、政府はお粗末だなと思うかはあなた次第。
とはいえネットのカット販売でも意外と安定供給されてたりするので欲しけりゃ手に入る。しかもチェリーより安め。
緻密な木肌が織りなす曲線美
特にブラックチェリーで作った滑らかな曲線は、滑らかな木肌と相まって、滑らかかつ滑らか。
下は北欧ミッドセンチュリーな意匠にハマった時に作ったセンターテーブルだが、曲線のディーテールとさざなみ紋の立体感がベストマッチだった。
当時のリアルタイムの北欧ミッドセンチュリーでは、主にミャンマーorネシアチークが使われていたが、チェリーは経年でチークに近しい色に変化していくと思って使ってみた。
このような曲線加工はトリマーを用いれば難しくない。下の記事も参考にしてほしい。
【2021.12更新】倣い(ならい)加工というコピペ技術【トリマーで何ができる?その2】
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下は時計だけどやっぱり丸みを帯びた造形に木肌がマッチする。
この滑らかさは間違いなくオイルフィニッシュで生きるので、下の記事もご参考に。
【#02塗り方編】オイルフィニッシュとは?【塗装と原理】
ワックスの塗りかたと同様に、オイルフィニッシュに絶対的な方法というのは存在しない。 自分の求める仕上げレベルや、材料なんかによっても変わって ...
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時の流れを価値として刻む経年変化
サクラ系は経年変化が著しく、特にブラックチェリーは大きく変化するため、スピード自体も急激に感じられる。
年数はちょっと違うけど2種の変化を同一写真に収めてみるとこの通り。
一言で言うとヤマザクラはオレンジっぽく、チェリーは赤っぽく変化していく。
濃さはブラックチェリーの方が上。深く沈んだヴィンテージ感を醸し出してくる。
写真ではサクラの方がピンクっぽく見えるが、個体なので悪しからず。
白太は敵かアクセントか
特にブラックチェリーは赤身と白太の色合いの違いが大きく、その差は年数と共にどんどん大きくなっていく。
白太は意図的に避けられる傾向にあるため、多くの人がチェリーと聞いてイメージする家具に白太の色は含まれていないようだ。
しかし大きい天板なんかを作ると白太を全て除外するのは難しいし、全部切り捨てるのは優しくない。
小さなものなら赤みだけで全然作れるけど、あえて白太を混ぜてみるのもアリでは?
この写真はクリーマで時計を販売した時、赤オンリーで行くか白を混ぜるかお客さんに聞いてみた。
選ばれたのは右の方で、仕上げてみるとなんとも生命感あふれる「木の時計」になった。
好み次第だけど盤面を魅力的に見せるために、このコントラストは結構魅力になる気がしている。
梻(タモ) ブラックアッシュ ホワイトアッシュ
集成材としてもポピュラーなタモ類は、野球のバットになるほど粘り強く、重く硬く、見た目も含めて楢(オーク)と似た特徴を結構持っている。
なので最初はオークと間違えがち(特に正目)なんだけど、比較するとなんだか木目の構成要素が少なくてシンプル。「The Wood」って感じ。
個人的にはオークより繊維が分離しやすく、ほんのちょっぴり割れが起きやすい印象がある。
代表的な広葉樹で、木にあんま興味のないデザイナーはとりあえず図面に「タモ突き板」って書きがち。
種類と特性
大きく分けて3種類
どれも産地は楢とオークとかぶる。タモは北海道からロシアにかけて、アッシュは北米。
- タモ - 色味は楢、オーク類と似たような感じの肌色。性質も似ている。比重0.66
- ホワイトアッシュ - タモと比べて見分けがつく程度に白めの薄黄色。
比較して目は荒く強度は高め。赤身と白太の差が明瞭で例えるなら杉のような感じ。比重0.69 - ブラックアッシュ - 色味がタモと見分けがつかないが、木目や強度などはホワイトアッシュと同様。比重0.69
ホワイトアッシュはよく聞いたことがあると思うけど、ブラックアッシュはマイナーだと思う。
しかし安価でホワイトアッシュ同様の強度がありつつ、タモそっくりなブラックアッシュはなかなか優れた木材で、材木屋さんも見分けられないことが多いみたい。
タモの見積もりを取ったら「タモ(ブラックアッシュ)」みたいな表記で上がってきたりして、同じものとして扱うことも多い。
写真は上がブラックアッシュで下二つがタモ。
同じだね。絶対わからん。
対してホワイトアッシュはと言うと、「ああ白いね」って感じで、杉の白太を高級にした感じなんだよな。端材が手元にないんだけどチェストの側板に使った写真がある。
上のチェストの側板がホワイトアッシュ。脚とその下に置いてあるチェストはタモとブラックアッシュなので、結構色の違いが明瞭だと思う。
写真で見ると足がずいぶん暗く見える。
良い意味で特徴がないと言える木
上の方で建築家が図面に書きがちって書いたんだけど、このタモという木はまさに木という雰囲気があって良い意味で特徴がない。
なので「ここにバランス的に木目を入れたい」とか「メラミン天板の縁材に木を使いたい」みたいに、木であること以外問われないシーンにすごい便利。
余計な主張はしない、しかし木の「本物感」はしっかり伝える。なんと律儀な奴なんだろうか。
とりあえず試作する時とか。
側はパインで作ったけど、正面だけ高級感出すために貼ってみたり。
ランバーコアの木口隠しに。
下の写真の幅方向に走ってる模様は、縮杢(ちぢみもく)というタモの数少ない特徴の一つ。
立体的で綺麗なので座面とかの曲面に映えるかな。
簡単なオークとの見極め方
まずは下の写真、どっちがどっちかわかるだろうか。
答えは写真の下。
答えは・・・
上がタモで下がオーク。
雰囲気で言うと、タモは1種類の濃淡だけで木目が構成されているように見えて非常にシンプル。
オークはなんだかいろんな線が混ざって木目を構成しててなんだか複雑。他にも虎斑の有無とかでも判断できるけど、僕のイメージはそんな感じ。
最初は面だけじゃわからないと思うので簡単に違いがわかる方法がある。
木口を見れば一目瞭然、全然違う。
上のシンプルなのがタモ、下の複雑なのがオーク。(タモの左の黒いのは焦げてるだけ)
タモは綺麗な年輪模様だけど、オークは放射状にも複雑なラインが入っていて非常に特徴的。飲食店なんかでそれっぽい木だなと思った時も木口を見ればわかる。
他の樹種一覧
他の木と突き板の話は別記事で書いている。
内容は以下の通り。
【前編】
- 針葉樹と広葉樹について
- 楢(ナラ)・ホワイトオーク・レッドオーク
【中編・サクラ&チェリー・タモ&アッシュ】DIY家具でも使える広葉樹とツキ板の話
引き続き大好きな広葉樹たちの話をしていこうと思う。 前編ではホワイトオークについて話したいことが多すぎてほぼ冒頭の延長みたいになっちゃったけ ...
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【後編】
- 楓(カエデ)・メープル
- 胡桃(クルミ)・ウォルナット
- 突板(ツキ板)の話
【後編】DIY家具でも使える広葉樹とツキ板の話
結局3編構成になってしまったが今度こそまとめる。ツキ板(突板)の話もします、本当です。 無垢材については楓&メープルと胡桃& ...
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