木工などのDIYをやる時に欠かせないクランプ。
その中でもボンド接着時のクランプとして非常に便利なのがパラレルクランプやユニクランプと呼ばれるものだけど、結構種類と明確な違いがあるにもかかわらず、それについて解説する情報が見当たらなかったのでまとめてみたい。
このタイプのクランプは簡単にいうと「ハタガネ」「Fクランプ」「パイプクランプ」の役割を大体一人でこなすことができる。
具体的にどう便利なのかは以下の記事でまとめているのでご参考に。
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ここでは国内での流通が確保されているものとして、ムラテックKDS、BESSEY(ベッセイ)、トラスコ中山の3社、5製品について言及する。
ネットショップの画像で見る限りこれらの違いはわかりにくいけど、実際手に取ってみると非常に明確だ。
こちら動画でもまとめている。
Contents
具体的に何が違うのか?
超絶明確。
パワーと価格
一番違うのはパワーで、それはそのまま価格に比例する。(表示価格は600サイズの目安)
- BESSEY KRE型(K-BODY REVO) - 815kgf 6,500円程度
- トラスコ PJH型 - 700kgf 5,700円程度
- ムラテックKDS メタルパラレルクランプ - 400kgf 4,300円程度
- トラスコ PJ型 ユニクランプ - 200kgf 2,800円程度
- BESSEY UK型 ユニクランプ - 153kgf 3,000円程度
このパワーの差はどこからきているのか?
答えは単純でバーの強度、つまり断面寸法の違い。
815kgfのベッセイKREと200kgfのトラスコを見比べてみよう。

見た目でまずゴツさが全然違う、特にバーの太さを比較して欲しい。
そして具体的な寸法はこのようになっている。

見ての通り全然違う。
このバーの形状と断面積がパワーやコストなど全ての違いの元と言って良い。
最上位はパイプクランプの強度を併せ持ったパラレルクランプ、つまり無敵。価格も無敵。
ところでベッセイとトラスコについては同じ寸法にもかかわらず違いが発生しているのはなぜか?
それについては後程の項目で考察を行なっていく。
長さ
バーの長さが伸びるほど荷重に耐えきれず反るリスクが高まるので、バーの強度の違いはそのままクランプできる長さの限界にも関わってくる。
- BESSEY KRE型(K-BODY REVO) - 300-2500mm
- トラスコ PJH型 - 300-2500mm
- ムラテックKDS メタルパラレルクランプ - 300-1000mm
- トラスコ PJ型 ユニクランプ - 160-600mm
- BESSEY UK型 ユニクランプ - 160-600mm

上位2モデルは2500mmと圧巻の長さで、ベッセイに関しては15,000円を超えてくるクレイジーっぷり、一生買うことはないと思うけど、その長さに耐えられる頑強さを讃えたい。
ワークサポートパーツ(安定レール)
トラスコではプラットフォーム、KDSでは安定レールと全く機能が連想できない名前になってるけどこれ結構重要。

このタイプのクランプを使ったことがある人ならわかると思うけど、バーの上に直接材料を置いてクランプすると、バーのギザギザが材料に少なからず入ることがある。
これを防ぐためには薄い板なんかを敷いたりするんだけど、このパーツは材料を優しく受け止めてくれるためそんな手間がなくなる。
KDSのメタルパラレルクランプ以上のグレードの製品に付属となっており、どれも2つずつ同梱されている。
下位の2モデルには存在しないため、角材に切れ込みを入れるでもして作っておくと便利かも。
【最上位モデル】ベッセイKRE・トラスコPJH型

この破壊的クランプ2モデルは寸法的にはほとんど同じと言って差し支えなく、細かいところでベッセイが上回る。
寸法的に同じというのは、寝かしても立てても材料を乗せる高さが一致するので、混ぜこぜにして運用することができる。
要するにベッセイ3本もってるけど、トラスコを1本買い足すというようなことをしても問題がない。
ほぼ兄弟、もちろんトラスコが弟。
機構的にも、廉価版の2モデルはFクランプに平行を維持するためのカバーを付けただけであったのに対して、こちらは金属のプレートと可動のためのローラーが仕込まれていて込み入った作りになっている。

この辺までしっかりコピーしてきたトラスコはえらい。
じゃあ明確にベッセイが優れる点はというと。
1点目はハンドルのお尻に六角穴がある点。

ベッセイのKREはここにラチェットなんかをぶっさすことで破壊的パワーで締め込むことができるが、トラスコはできない。
個人的には、この点が最大締め込み強さ815kgfと700kgfの違いになっているのではないかと考えている。
ぶっちゃけここまでパワーを発揮する必要はないけど、しばしばハンドルを回しすぎて爪が剥がれそうになる自分はそのうちお世話になるかもしれない。
2点目は拡張パーツの差。


ピボットジョーパッドというものだけど、このような斜めのクランピングも簡単にできる。-15°〜+15°までの回転。
こちらはトラスコには装着できず、そもそもアタッチメントを取り付けられる構造になっていないので今後も出ないと思う。
他にもKPブロックというものがあるけどこれは作れそう。(これはトラスコにも使える)

クランプ同士の連結延長パーツなんかもある。
3つ目はベッセイの方が呼びサイズよりも少しバーが長いということ。

例えば1000mmのモデルだと、トラスコは限界値で1003mmくらいだけどベッセイは1043mm程度いける。(両者共にエンドを外すとあともう少し挟めるが)
これはどの長さであっても同じ傾向になっているので購入時に確認すればいいと思う。
4つめはベッセイというブランドネーム。
それ以外トラスコのPJHは何一つ劣っていないと思う。素晴らしい完成度。価格も少し安い。
ただしこれらは非常に高い買い物だ。
強靭なバーはそのまま重量となるため1000mmで3.3〜3.4kgとなかなか重い。
正直なところ長さ1000mmまではKDSが一番コスパがいいと思う。
【上位モデル】ムラテックKDS メタルパラレルクランプ

頑強で勝手の良いクランプを作りまくってるKDSはパラレルクランプにおいても非常にバランスが良い。
実際に使ったことはないけど、1000mmまでのサイズにおいては一番優秀だと思う。
最上位の2モデルが重量3kgオーバーであるのに対してこちらは同じ長さで1.9kg。
パラレルクランプの良さは汎用性の高さももちろんだけど、パイプクランプなどと比較して軽量で扱いやすい点も重要だと思う。
締付け強さは最大で400kgfなのでパイプクランプ級とは言えないけど、大半のDIYerがそれ以上のパワーを必要とすることはないと思う。
そして材料を支えてくれる「安定レール」もしっかりとセットになっている。
ベッセイのピボットジョーのようなアタッチメントはないけど、最上位モデルの取り回し性能を向上させて、必要十分なパワーを備えつつコストを抑えた、バランス感覚に優れるモデルと言える。
だからこいつは中位ではなく上位モデルとしてみた。
自分が1000mmサイズもこいつではなく最上位を買った理由は、見た目がカッコよかったからだ。
ベッセイのKREをインテリアとして数十本並べたいと思ってるので今後もネチネチ買い足していこうと思うけど、コスパ的におすすめできるのは多分KDS。
600mmモデルにおいてもこいつは優秀だと思うけど、自分は廉価モデルを使ってるので今後こいつを買う機会は多分ない。これは悲しみ。
【廉価モデル】ベッセイUK・トラスコPJ型 ユニクランプ

自分が一番持ってるのはトラスコの600mmで、パラレルクランプめっちゃ便利やんけと思い知らされた逸品。
長いFクランプ、ハタガネ、パイプクランプとたくさん持ってるけど、どれも足りない時だけ呼び出す控え要員に回った。
このタイプは上で述べたようにバーがさほど強くないので600mmまでしか存在しない。(ベッセイで900mmあったような気がするんだけど、確認したらない不思議)
ただし同程度のバーサイズのFクランプでも900mmがあったりするので、曲がりを気にしなければ本当はもっと長いのも出せるのかもしれない。
自分の作業では最も頻用する600mmを6本持っているけど、重量はカタログ値で0.9kg。KDSは1.7kgなので取り回しはやっぱ軽い方がいい。安定レールがある点でKDSは優秀だけど。
そしてこのラインにおいてもトラスコはベッセイと全く同じサイズで攻めてきている。ベッセイも扱う販売代理店として許されるのか?
ただのパクリと思いきや、締め付け力は200kgfとベッセイの153kgfを結構上回っている。
バーのサイズは全く同じなのになぜかと考えてみると、もしかしたらハンドルグリップの関係かもしれないと思ったりする。
トラスコはラバーグリップでベッセイは木製グリップだ。
どっちを買おうかと考えた時、トラスコの方が回しやすいと(人のブログで)読んだこともあるので、締め付けの試験結果に影響したのかもしれない。
実際同じようなサイズで木製グリップのFクランプは、やっぱりラバーより力を加えにくい。
カタログ価格からしてもトラスコの方が安いため、こうなるとBESSEYのファンガチ勢でもない限りトラスコを選択するのは宿命だと思う。
KDSより大分劣るパワーだけど、実際不足するか?と言われると板接ぎでもなんでも十分やれているので、ぶっちゃけ自分に必要なクランプパワーはこの程度なんだと思っている。
選択の基準と比較表

自分が思う理想のメンバーはこんな感じ。
- 600mmまで - トラスコPJ型
- 1000mm - KDS パラレルクランプ
- 1250mm以上 - ベッセイKRE型 or トラスコPJH型
正直かなり高い買い物だし、今のところ長い幅は元からあるパイプクランプを使っている。
すごく儲かったらベッセイの1500mm買いたいね。それ以上望むことはなかなかないと思う。
五人のお友達を表にしてみるとこうなる。
| Bessey KRE | トラスコ PJH | KDS メタルP | トラスコ PJ | Bessey UK | |
|---|---|---|---|---|---|
| パワー(Kgf) | 815 | 700 | 400 | 200 | 156 |
| バー寸法() | 9x29 | 9x29 | 7x22 | 5x20 | 5x20 |
| ふところ | 95 | 95 | 100 | 80 | 80 |
| 長さラインナップ | 300,600,1000, 1250,1500,2000, 2500 | 300,600,1000, 1250,1500,2000, 2500 | 300,600,1000 | 160,300,600 | 160,300,600 |
| 重量(Kg) | 2.7 | 2.57 | 1.7 | 0.9 | 0.93 |
| ワークサポート | あり | あり | あり | なし | なし |
| AmaRak参考価格 | 6500円 | 5700円 | 4300円 | 2800円 | 3000円 |
このタイプのクランプを使ったことがないって人はまずは下のトラスコPJ型を試してみてほしい。そこまで高くないし。
しばらく使えば、きっとパラレルクランプをコレクションしたくなると思う。