しっかりしたものを作る時にはやっぱりホゾ組でやりたい。差し込んでビシッと決まった時ってすごく気持ちいい。
今回は最低限知っておくと良いホゾの基本的な考え方について話してみる。
ビスもボンドもなかった時代は、ホゾを差してクサビ留めするしか木材を繋ぐ方法はなかったはず。木材を扱う文明には必ずホゾがあった。
確認されている最古のくさびどめホゾは新石器時代にあたる7000年前のものだとか。
難しそうに見えてもホゾ組は木工の入り口オブ入り口。
石器で作れるなら、鉄器を使える我々に作れないはずはない。
動画でもまとめている。
Contents
ホゾの大事なポイント2点
ホゾなどの組み手は凹凸の形状を綺麗に作ることに目が行きがちだけど、仕上がりを左右するポイントをしっかり押さえることが大切。
強度のために
とにかくキツければいい。わけではない。
雌側の木目を見てみよう。
【B】の方向は繊維がつながっていないので、こちらをギチギチにしてカチ込むと簡単に割れてしまう。
ちょっとキツイ程度でもボンドで膨張するため、外側がふんわり膨らんだりもするので、キツ過ぎるよりはスカスカになる方がまだ救いがある。
反対に【A】の方向は非常に強い。
なのでこちら側がギチギチになるようにするのが基本で、この度合いがホゾの強度に関わってくる。
メス側を1mmくらい狭く作ってちょっとずつ削るのがいいと思う。杉のような柔らかい木はそのくらい大きくてもそのまま入るので、木の硬さによって色々試してみるといい。
この調整だけはやっぱり手工具が必要。
美観のために
もっとも大切なのは「胴付き」だと思う。
継ぎ目に隙間ができる。こんなに悲しいことはない。その悲しみの原因は胴付きにある。
胴付きとはこの部分を指し、継ぎ合わせる材料の境目にあたる。
ここに完璧な直線が出て、かつ垂直平行であることが大切。
他の場所はぶっちゃけ汚くても見た目には関係ない、一番注意を払うべきはこのカットライン。
ホゾのサイズ感の目安
適当にやってもいいと思うけど、自分は短すぎるホゾで作ったスツールが座りながら倒壊した経験がある。
適切なサイズ感というのはなるべく把握しておいた方が良い。
ここで記すのはおおくのホゾに共通するもの。
まずはホゾの厚み。
いろんな種類があっても、基本の平ホゾは下のような感じで考えると良い。
オス側の材料の厚みが30mmならホゾの厚みは10mmくらい。20mmなら7mmとかキリのいい数字でいいと思う。
次にホゾの奥行き。
このくらいを目安に決めておく。実際の加工の時はメス側の方をわずかに深く掘る。
当たり前だけどホゾは深いほど頑丈になるので稼げる時はもっと深くしたりもする。
一般的なホゾの形
よくあるホゾの形として、今回は下の2種類のホゾを作ってみる。
このような名前に関して自分は全然把握してなくて記事なんかにする時には毎回調べている。
でもサンデークラフトマンには同僚がいないので、いちいち名前を覚えていなくてもどのような場所にどのようなホゾが適しているか、形状とか理論的なところだけ把握していけばDIYスキルは上がると思う。
小根(コネ)付き二方胴付き
小根ってのは上のちょっと出っぱったやつのことを指す。
このタイプは材料の端っこに差し込むホゾに使われる。
端に挿すホゾはどうしても幅が狭くなりがちでネジレ方向の力に弱い。
小根は浅いけれどそれを防ぐために設けられる。
接着面が増えて強度も上がるけど、僕は半分ファッションのつもりで入れている。
二方胴付きとなってるのは胴が両サイドの二方にしかないため。小根がなければ三方胴付きになる。
四方胴付き
一番スタンダードだと思ってるホゾ。
この位置は二方でもいいけど、四方だとホゾ穴を完全にカバーできるので綺麗に納まりがち。
一手間かかるけど強度も少し増す(らしい)ので、二方よりこっちの方が高級な仕上がりといえる。
具体的な寸法
今回はこのような寸法で製作する。
材料は廃材から切り出した25x45のブラックチェリー。
小根や胴付きの寸法に関しては結構適当、というか材料の種類や製作物全体の大きさで変わってくるので、一概には言えないところだと思う。
実作業(オス)
雄はテーブルソーでやるのが一番理に適っているとおもう。
今回は以前紹介したSK11の激安テーブルソーを使っていく。
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テーブルソーを使う場合、今回のようなホゾなら材料に対する墨付けは省略可能、というのも寸法は全て機械側のセッティングで決まるため。
楽すぎる。
ちなみにスライドマルノコでも代用は可能。
セッティング
先端から胴付きまでの距離は30mm。
なのでテーブルソーのフェンスを使ってこのように当て木をセットする。
そして刃の深さは8.5mmだけど、さほど厳密には合わせてはいない。
というのも実寸法は仕上がったオス側に合わせてメス側を合わせていけばいいだけなので。
加工
材料をマイターゲージにセット、当て木に押し当てれば30mmの位置で胴付きがカットできる。(クロスカットスレッドなどの横切りジグを使ってもいいけど、自分は天板の同じところを直に擦れるマイターゲージの方が深さが均一になると考えている。)
このワンカットで正確な胴付きが作れる。マイターレールに遊びがある時は片方に寄せて切るのがポイント。
その後は少しズラしながら切り続け、裏表やれば二方胴付きが完成。
さらに深さを5mmに変えて短手を加工してしまえば四方胴付きの完成。
当て木の位置を24mmに変更、深さを15mmに変えれば小根付き二方胴付きも完成。
楽勝すぎる。今回は実験なので1本だけだけど、複数あっても全く同じ加工ができる。これがテーブルソーの強み。
ホゾの面はギザギザになるけど、ノミでスパッと仕上げるよりもボンドの食いつきがいいと思っている。
実作業(メス)
メスの方は「角のみ」があれば楽だけど今回はトリマーでやる。
ただこの作業は不安定になりやすく、トリマーに慣れていない人は鵜呑みにしてやらないほうがいい。と注意しておく。
オスの方の寸法をノギスで測り寸法を控えておく。
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墨付けと前加工
オスの寸法に合わせて墨付けをした。
ドリルで下穴を開けたいのでセンターラインも引いた。
そして仕上がり8mmに対して6mmのドリルで下穴加工。
セッティング
トリマにストレートガイドを装着して加工を行っていくが、斜めに入れる必要もあり間違いなくズレるので下の図のようにガイドの反対側を削るようにセットする。
全く伝わらないかもしれないけど、これで6mmビットで両サイドから削れば失敗しにくく、ちょうどセンターに8mmの溝が掘れる。
でも一回では合わないと思うので、同じ厚みの材料で少し試し削りしたい。
短手のホゾがキツくもなくスカスカでもなく、スッと入るようならガイドの設定はOK、最後まで変更することはない。
加工
今回は30mmを2回に分けて掘っていく、下穴が不十分ならもっと分けた方がいい。
最終的には31mmくらいの気持ちで掘った。
ちなみにこの深さを手持ちトリマで掘るのが最大の鬼門。
幅はこんな感じで確認。
長手は行きすぎないようにもちろん少し余裕も持たせる。
あとは手のみでやるしかないけど大多数の加工は終わってるはず。
細かいところは動画で見てほしい。
接合 完成
これにて完成。
しかし今回はあくまで基本的なホゾを作る実験なので、面取りなどを一切考慮しない組み方をした。
面取りを考慮する場合は以下。
面取りが合わない問題と面腰ホゾについて
実は今回のように同じ厚みの材料を組み合わせる時、このような組み方をすると面取りの時に問題が出てくる。
どのような問題か、実際に面取りをしてみよう。
なんかカッコ悪い、上手く納まってない感じがする。ボーズ面でも同じことになる。
だからこのようなやり方は家具などの仕口にはふさわしくない。
これはホゾ組と言わずビス留めでもなんでも木材を接合するときには出てくる「納まり」の問題。
これをクリアする方法はざっくり3種類。どれも設計段階の話だけど簡単な順に並べてみる。
- 材料の厚みに面寸法以上の差をつける
- シームレスにつなぐ
- 面腰ホゾにする
材料の厚みに差をつける
これが一番簡単。
このようにオス側とメス側で材料の厚みを最初っから変えてしまえば、面が交わっておかしくなることはない。
段差をつけることをチリをとると言ったり、面の分だけチリをとる面チリと言ったりする。
シームレスにつなぐ
一つ難易度が上がってこんな感じ。
難しいように見えるけど、どうやって作るか理解すれば結構簡単にできる形。
腕じゃなくて知識で作れる、みたいな感じ。
市販の家具なんかでも見かけると思う。
まとめているのでよかったら見てほしい。
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面腰ホゾにする
頑張ってわかりやすい図解作ったから見ていってほしい。
面取りを何ミリするのか事前に決めておく必要がある。
結構難しいように見えるけど、これはトリマーでもできるのでチャレンジしてもいいかもしれない。
ガチで難しかった面越しの一例↓
これは変な角度な上に、曲線と直線が交わるような形なので設計時点で悩みまくったデスク脚。
チャレンジの一環としてホゾなどの仕口は全部手工具でやってみた。動画にしてるからよかったら見てほしい。