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【#01座学編】オイルフィニッシュとは?【特性・種類】

2021年6月14日

木工DIYをやってたら「オイルフィニッシュ」とか「オイル仕上げ」というワードにぶち当たると思う。

そしてネットなんかで色々調べるにつれて、それが木工作品の正統な仕上げ方なのではないか?と感じられるだろう。

実際オイルフィニッシュは、最も木材の美しさを際立たせてくれて、メンテナンス性も高い非常に有用な仕上げ方かつDIYに最も相性の良い塗り方なのは間違い無いので、僕の知る限りをぶち込んでいく。

オイルフィニッシュとは - 特性

オイルフィニッシュとはその名の通り、木にオイルを塗って仕上げる、もっともポピュラーな塗装方法だ。

オーダーメイドの高級家具の仕上げには決まってこれが採用される。

そして失敗がすくなく、DIYに最も適した方法とも言える。

僕も良い木をつかって力作を作るときは絶対にオイルフィニッシュだ、誰がなんと言おうとも。

*ここでは木に色をつける染色用のオイルステインとは切り離して、クリア(透明)のオイルについて説明する。

浸透して固まって保護をする

オイルフィニッシュのオイルは木材に浸透し、内部で固まって木材を保護するのが役目。

なので木材の質感をそのままに、木の呼吸も妨げないため、湿度調整機能も生かされる。

ただし「呼吸を妨げない」というのは語弊があって、やはりある程度はシャットダウンする。

これによって、木の反りや割れなどの負の側面をある程度カバーしてくれる。

これらは木材の含水率の変化によって生じるため、それを抑制することが予防につながる。

その辺の細かいことは下記の記事も参考にして欲しい。

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逆にいうと加工を終えてから、組み立て、塗装まで終わらせずに長時間放置したりすると、かなり反っててはまらなかったりする。(特に梅雨時)

耐水性も、商品によってピンキリだけど無塗装の状態から比べるとかなり高まる。

ただし後述する樹脂系の塗料にはまったく及ばない。

コップなどを長いこと置いておくと、輪染みができたりする。(できないものもある)

なんでもいいわけじゃ無い

Olive Oil, Oil, Products, Food, Kitchen, The Gravy Boat

上の項目で固まる。と書いたが、もちろん固まらないやつはダメ。

オイルには乾燥して固まる「乾性油」と、固まらない「不乾性油」がある。

アマニ油、クルミ油、荏油、桐油なんかは固まる乾性油。

オリーブ油、ラッカセイ油、ツバキ油なんかは不乾性油。

油は成分中のC=C二重結合の多さを示す指標であるヨウ素価によって・・・(以下略)

結論 - 専用のオイルを使えば問題なし。

(ガチプロの木工家の友人が家のダイニングテーブルにオリーブオイル塗ってたけど別に大丈夫なんだって。ほんとか?)

ワックスと通じる浸透系塗料

前回ワックスの記事でも書いたんだけど、ワックスもオイルも浸透系塗料だ。

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両方とも木材に染み込んで固まって、材料の保護を行う。

違いはワックスの方が表面に残る量が多く、ちょっぴり塗膜を形成するため、オイルより水に強い。

しかしこの両者を明確に線引きすることはできない。

ワックスとして販売している塗料にもオイルが含まれてたりするし、オイルにも保護能力を高めるためにワックスが含有されていたりする。

ワックスオイルなんてのもあったりする。

というわけでこの両者は結構親和性が高い。オイルフィニッシュのテーブル上から耐水のためにワックスを塗るのも全然あり。ただし逆は微妙。

メンテナンスや修繕が自由自在

IKEAなんかで買った家具は樹脂系の塗装が施されているので、一度傷がつくとどうしようもない。

しかしオイルフィニッシュであれば、小さな傷はサンドペーパーで削れば消えるし、使えるならカンナでもかければすぐに新品になる。

ワックスだと表面に塗膜があるので、こう言ったメンテが少しやりにくい。

ダイニングテーブルなんかで使ってて、全体が毛羽立ってきたら、全体に軽くサンドペーパーをかけてからもう一度塗ってやればいい。(かけずに塗ったっていい。)

オイルフィニッシュは保護能力は決して高く無いが、こう言ったメンテナンスが何度でも繰り返せる上に非常に簡単。

塗り重ねれば年月とともに味わいも増していく、長い付き合いの家具には最適な塗料と言える。

オイルステインとの違い

オイルステインは着色能力を優先しているため保護能力が弱いものが多いが、着色の顔料を含んでいるだけで基本的には同じものだ。

ただし着色のオイルステインを仕上げとして使うのはあまりお勧めしない。

顔料を含んでいてそれが表面にも露出しているため、色移りの問題は永久に続く。これはワックスと同じ。

たまにオイルステインを名乗りながら、油性(オイル)ではなく水性の商品もあったりするので気をつけよう。

なんにしても、これらは仕上げに樹脂系の塗料を塗ってフタをしてしまうのが一番良い。

クリアのワックスを塗る方法もあるが、乾燥が完全でなかったり、表面に研磨した木粉が残っていると、ワックスと混ざって大惨事になるので気をつけよう。(なった)

塗ってから一週間は空けた方がいいかも。

実はホームセンターにあまり売ってない

認知度が低いためか、ホームセンターにはほとんど売ってない。

売ってても「アマニ油」とか「チークオイル」とか超天然物のオイルであったりする場合が多い。

これはこれでいいと思うけど、人類史は長い。世の中には先人達の工夫が詰まった優れたオイルフィニッシュ用の塗料がたくさんある。

あとで詳しく解説する。

ニスなどの樹脂系との違い

DIY初心者が決まって手を出す塗料がニスなどの樹脂系塗料だと思う。

このタイプの塗料は、木の表面をプラスチックでコーティングするというイメージでよいと思う。

なので水は完全にシャットダウンする。ウレタンニスと書いた塗料を見たことあると思うけど、ウレタン防水という防水工事も存在するくらい水に強い。

例えば、ホームセンターで買ってきてハケで塗る→なんかボコボコになる。思ったのと違う。みたいな経験はないだろうか?

これら樹脂系塗料はプロも使うが、そもそもハケで塗らない(少なくとも作業場では)。家具塗装ならスプレーによる吹き付けで複数回に分けて塗るのが標準だ。

これをやるにはコンプレッサーなどの機械も必要になってくるので、全然DIY向きでは無い。

樹脂系の塗装は奥が深く、腕が求められる。まさに職人の領域。

なので木工のプロであっても、樹脂系の塗料は家具塗装の専門業社に外注するのが基本だ。(自分でやる人もいる)

弱点があるとすれば、木の触感は失われるし、一度傷がつけば自分で修繕するのは不可能だ。

一般的な量販家具は大抵が樹脂系の「ウレタン塗装」や「ラッカー塗装」が施されている。

メンテナンス性は悪いが保護能力は、おまえが最強!

広葉樹にこそふさわしい

別にベニヤにも塗るし、杉やパインにも保護目的で塗るんだけど本領発揮はやはり広葉樹。

チェリーやバーズアイメープル、ウォルナットなど、きめ細かな木肌を持つ広葉樹はオイルによって木目の美しさがとことん極まる。

荒々しいオークやアッシュ(タモ)系も、その猛々しさの中に気高い騎士のような気品を添えてくれる。(ポエミック)

研いで磨いて塗り重ねて、鈍く輝くツヤ。そんな表現が相応しい。

オイルフィニッシュとは - 種類

では一体何を使えばいいのか。

仕上げ専用に作られたオイルであればなんでもいいんだけど、近年の木工用オイルの開発は安全性と保護能力の戦い。

自分が実際使った経験のあるものでおすすめをリストアップしておく。

ちなみに床などの内装ではなく、家具塗装として評価して書いている。

ドイツ製品が多いが、あの国は環境安全面の規制項目が異常に多いので強者が多い。

リボス(独) - アルドボスetc

あなたが一番大切にしたい力作には問答無用でリボスのアルドボスをお勧めする。

初回塗装も経年後の塗り重ねも全部これでOK。

塗り重ねで鈍く輝く最高の木肌に仕上がってくれる。

ワックス成分が含有されており、重ねまくれば耐水性も結構期待できる。輪ジミとかできにくい。

リボスというメーカーはあまり知らない人も多いかもしれないが、ドイツ4天王の一角の自然健康塗料系メーカーで、

「健康に害のある成分は、天然物でも使用しない」という、なんかかっこいいコンセプトを掲げており、天然素材にありがちなアレルギー問題を克服したと自称している。

伸びが良く結構広い面積に塗れるので容量以上の価値がある。例えばサラサラのワトコなんかと比べると2倍近く塗れる。

木工家などの家具領域ではオスモより人気だと思う。

無垢フローリングメーカーにもたまに採用されている。

ちなみにメンテナンスや保護強化には専用の上塗り材ビボスとか、水回りに最適な撥水強めのオイルクノスなんかもあるのでこだわる人は使ってみてもいいかもね。ただし高いけどね。

オスモ(独) - エキストラクリアーetc

やはりオスモ。リボスと同じく自然健康を謳うものの色々入ってるオスモ。全成分開示をしていないオスモ。

しかし健康に対する意識が高いのは間違いない。

昔メーカーの人にお試しパックを大量にもらっったんだけど今ももらえるんだろうか?

家の床の塗装なんか考えてる人は営業所に聞いてみては?

ドイツの自然健康塗料系メーカーとして、日本ではトップの実績があるだろう。

たくさん種類があって悩むんだけどオイルフィニッシュはこいつが一番ナチュラルでキレイ。

粘度が高く、アルドボスより多めに塗れると思う。耐水性は若干アルドボスの方が上回る気がするが、気になるならノーマルクリアーを使うと良い。少しテカリが強いがこれはこれでいい。

床とかには専用のフロアークリアーを使うことってメーカーサイトに書いてた。

ワトコ(英) - ワトコオイル

ホームセンターにも結構売ってるワトコ。安いしDIYに一番使われてるんじゃなかろうか。僕もめっちゃ使ってた。

上の2商品と比較すると、保護能力はガッツリ落ちる。普通のアマニ油とかと変わらないんじゃ無いかな?

シャバシャバなので、カタログ値での塗り面積も両者の半分くらいなので実はコスパが悪いんじゃ無いかと思ってる。

「子供のための家具」に向いてるとは言えない。だからと言ってカジって病気になったりはしないと思うけどね。

「ワトコ臭」もなかなか強烈。クセになりそう。

最近は環境人間配慮型の製品があって、クリア一色で保護能力も高めたものがある。塗り面積も2.5倍に倍増したワトコリアレックス。ファンは試してみてもいいかも。

使ったことないけど気になるオイルESHA(日)

ターナー色彩から発売されるこのESHAというブランドは、オスモやリボスを意識したと思われる、純国産自然健康塗料ライン。

このワックスオイルという商品は、塗り面積も広く、まさにその2ブランドと似たような塗り感覚なんだと思う。使ったことないけど。

特に気になってるのはこのクラフトオイルという商品で、オイルフィニッシュの弱点である耐水性をすごく高めたんだと。

ガッツリ浸透して硬化することで水をブロックする。それって普通じゃない?と思ったらメーカーサイトには表面に塗膜を作らない「ワニス」と書いてある。

ワニスというのはそのまんまニスという解釈で良い。要するに浸透型の油性樹脂系塗料ということだろうか?

塗り面積を見てみる限り、かなりシャバシャバの液体のようだ。

塗膜を作らず木材の風合いを損なわない、オイルのように使える塗料だとしたらちょっと試してみようと思う。

ガラス樹脂塗料と似た感じなのかもしれない。

ターナー色彩マジで頑張ってる。

他にもとにかく自然素材しか使わないアウロ(独)とかプラネットカラー(独)とか、ワトコと似た感じで使えるBATON(日)とかもある。

この辺は気になる人がいたら調べてもらえると良い。

動画解説

何事も記事よりも動画の方がわかりやすいよな。

いやそれは時と場合による。そう思う。

オイルフィニッシュの塗り方 実践編

後日別記事で上げようと思う。

2日以内にあげます。本当です。上げたぞ。

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その辺を「平米単価」を算出して下の記事にまとめてあるのでご参考までに。

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